Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

行動変容を促すサステナブルな資本主義、社会変容を促すGXとDX

 

 経団連の十倉会長が12月、「2022年の経済展望とサステイナブルな資本主義の道筋」という講演を行った。

経団連:2022経済展望とサステイナブルな資本主義の道筋 (2021-12-23)

 経済情勢の分析から始まり、経団連が目指す「サステイナブルな資本主義」について説明し、政府が提唱する「新しい資本主義」との関わりについて触れ、政府への要望を示した。 また、経団連が考えるGXグリーントランスフォーメーションについても説明する。

DX、GXは成長戦略になるのか

 経済情勢では、経団連が公表した「事業リスク及び政策要望に関するアンケート調査結果」をもとに、中期リスクとして、「従来型ビジネスモデルの陳腐化」、「必要な人材の不足」、「国内のDX デジタルトランスフォーメーションやGX グリーントランスフォーメーション対応の遅れ」などが上っていると指摘、製造業においては「サプライチェーンを巡る課題」の回答が多くあったという。

 短期では、コロナ対応に注力し、わが国の社会経済活動を正常化させ、DX、GXを柱に、成長戦略を実行し、また、サプライチェーンの問題といった、経済安保への対応を推し進めることで、わが国経済を成長軌道に乗せていくことが求められます。(出所:経団連

 

 

なぜ「サステイナブルな資本主義」なのか

 経団連が掲げる「サステイナブルな資本主義」と、十倉会長自身なりに解釈する資本主義の違いを説明する。

 自由で活発な競争環境、効率的な資源配分、イノベーションの創出等、資本主義/市場経済が、国の社会経済活動の根幹とする一方で、今みる世界的な行き過ぎた資本主義、市場原理主義の潮流によりもたらされた2つの弊害を指摘する。

 一つは、格差の拡大、固定化、再生産、そして、もう一つは、生態系の崩壊や気候変動問題、新型コロナのような新興感染症という。こうした課題を踏まえれば、これまでの資本主義を見直すことが求められ、現実、SDGs、ESG投資など、サステナビリティを重視する考えが、世界中で認識されているという。

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 ことに、気候変動や生態系の崩壊の問題については、「人類の経済活動とともに、地球温暖化などの「外部不経済」が発生し、生態系の崩壊が起きて、世界がSustainabilityの危機に直面している」と指摘する。

 そして、70億人を超えた世界の人口がこのまま増加を続ければ、2100年頃には110億人となり、そこでピークを迎える。それは開発国も豊かになり、子供の出生率が下がるからという。こうした現実を踏まえれば、ただちにカーボンニュートラルに取り込むことは必定と強調する。

最近の流行語で「人新生」(Anthropocene)という言葉もあります。また、ある人は、「地球を生命体に例えれば、人類の異常な拡張こそがウイルスであり、Covid-19は免疫だ」と言います。(出所:経団連

 

 

カーボンニュートラルの要諦

 十倉会長は日本のカーボンニュートラル達成には考慮すべき3つのポイントがあるという。1点目には、日本の地理的制約をあげ、2点目として、技術革新の必要性を説く。

 カーボンニュートラルに向けて、現存しない技術の創出が不可欠と指摘、新しい技術を生み、実用化するには20年の年月が必要になるという。

 そして、3点目にトランジションをあげる。2050年カーボンニュートラルが一足飛びに達成されることはなく、そのトランジッション、国をあげてのロードマップの策定が求められるという。

 また、カーボンニュートラルの達成のためには、化石燃料のミニマイズは避けては通れず、いかに使わないようにするかが求められ、6つの方向性があると説く。

一つ目は、再生可能エネルギー原子力等のゼロエミッション電源を確保すること。二つ目は、このゼロエミッション電源を用いて、今まで熱源を利用してきたものをできる限り電化すること。三つ目は、それでも残ってしまう熱源に、カーボンフリーの水素、アンモニアを導入していくという。

ただし、地球上から炭素を無くすことはできません。人の体は、アミノ酸たんぱく質など炭素から構成されています。薬もアミノ酸すなわち炭素から作られています。有機物は須らく炭素から出来ており、地球上から炭素を無くすことは不可能です。

従って、四つ目として、材料で使われる炭素をリサイクルすることが肝要です。カーボンリサイクル、ケミカルリサイクルを推進させる必要があります。(出所:経団連

 

 

 五つ目には、エネルギー多消費型の産業においてプロセスイノベーションを実現すること、六つ目に、エネルギーインフラとして、再エネのグリッド網や、蓄電機能の確保など、次世代電力システムを確立していくことと指摘する。

 カーボンニュートラルの達成は国際社会の一員として、もう避けて通ることはできず、GX、グリーントランスフォーメーションを起こせるかにかかっていると、十倉会長はいいたいのだろう。企業を含め社会が、「サステナブルな資本主義」を標榜し、行動変容を起こせるか、それが問われていそうだ。

 一方、日本の気候変動問題に対する行動変容についての意識は、欧米等と比べて低いという。そうした環境、強いて言えば、そうした労働環境で、GXを進めることは容易でないのかもしれない。

 経団連のトップひとりが危機感をもったところで、トランスフォーメーション「社会変容」など起きない。日本社会を構成する企業が、これまでの慣習を打ち破れるかが問われているのだろう。

 このコロナ禍にあっても、未だに企業の内部留保をふくれ上がり、その守りの姿勢が顕著といわれる。世界がGXに果敢にチャレンジし、その差は広がるばかりだ。日本はこの先、何を糧に世界と伍していくつもりなのだろうか。