伊藤忠商事が1月13日に、2021~2023年中期計画骨子を発表し、一般炭の権益から完全撤退を含めた脱炭素化を推進する方針を明らかにしたという。ロイターによれば、 3つの権益を売却し完全撤退に踏み込んだという。
売却する方針としているのはコロンビアのドラモンド炭鉱(年間600万トン)、オーストラリアのモーリス・クリーク炭鉱(年間150万トン)とレブンスワース・ノース炭鉱(年間90万トン)の権益。
豪州の2つの山は原料炭も含む。4月から始まる3年間の中計期間中に売却する方針だ。 (出所:ロイター)
三方よし資本主義
ここ最近における伊藤忠商事の動きが活発化していることが気になっていたが、その発表に少しばかり驚く。中計の基本方針を確認してみた。
「利は川下にあり」といい、「マーケットイン」による事業変革を目指し、「三方よし資本主義」を掲げ、「SDGsへの貢献・取組を強化する」という。主要施策に「脱石炭」と「環境配慮型製品、循環型事業・サービスへの取組強化をあげる。
国の「カーボンニュートラル」という方針転換があったからとは言え、大胆な中計の基本方針ではなかろうか。
「三方よし」は、世の中に善き循環を生み出し、持続可能な社会に貢献する伊藤忠の目指す商いの心です。
三方よしは、「売り手よし」「買い手よし」に加えて、近江商人がその出先で地域の経済に貢献し、「世間よし」として経済活動が許されたことに起源があり、現代サステナビリティの源流ともいえるもの。
初代伊藤忠兵衛の座右の銘「商売は菩薩の業、商売道の尊さは、売り買い何れをも益し、世の不足をうずめ、御仏の心にかなうもの」が、その起源とされている。 (出所:伊藤忠商事)
初代伊藤忠兵衛の精神に立ち返ろうとでもいうのだろうか。
ビジネスの危機
「身近なところでいえば、食品の消費期限を伸ばせるようになったのもプラスチックのおかげです。フードロスなどさまざまな問題に貢献しています」と話す伊藤忠商事化学品部門化の小林拓矢氏の言葉をNewsPicksが紹介する。
ただ、こうした有用な素材でありながら、プラスチックがいろいろな問題を引き起こしているのも事実。大量に取り扱っている我々にとって、こうした問題はビジネスの危機でもあり、また同時に必ず対処しなければならない責務だと考えています」 (出所:NEWSPICKS)
その伊藤忠商事は2019年9月、テラサイクルと資本提携し、対馬では漂着する海洋プラスチックスの回収を進め、ポリエチレン原料としてリサイクルするという。年間4000トンを生産し、再生される原料は、シャンプーの容器や子ども用玩具の材料になるそうだ。
電機会社に勤め、商社各社と取引があった。それぞれの商社にはそれぞれの顔がある。伊藤忠商事、嫌いな商社ではなかった。鋼板やプラスチックスで取引があった。
組織の三菱、人の三井、結束の住友といわれるが、伊藤忠商事は活力、バイタリティなんて言葉が似あうのだろうか。そんな印象がある。
カーボンニュートラル
帝国データバンクの調査によると、温室効果ガスの排出抑制に取り組んでいる企業は82.6%にのぼるというが、政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」目標に対して、「達成は困難」とみる企業が43.4%にのぼり、「達成できない」と回答した企業が17.9%あったという。企業からは、具体的な取り組みのガイドラインや方法を求める意見が多くみられたと帝国データはいう。
伊藤忠商事の取り組みはひとつのベストプラクティスとして参考になったりはしないだろうか。
「関連文書」