気候変動対策が、英国グラスゴーで開催されている「COP26」で話し合われている。各国の思惑が入り乱れ、世界が一つとなって行動していくにはなおハードルが高いのだろうか。
インドのモディ首相が「COP26」の首脳級会合で、「2070年までに温室効果ガス排出の実質ゼロを目指す」を表明したそうだ。これまでカーボンニュートラルについて言及してこなかったことを考慮すれば、前進といっていいのだろう。
ただ、50年近く先のこととなれば、気が遠くなる。やむにやまれぬ事情でもあるのだろうか。
インド、急増する人口、伸長する電力需要
そのインドの西部ラジャスタン州の砂漠には、約1000万枚の太陽光パネルが設置された発電所があるという。インドの意思表示なのだろうか。
2070年までに排出ゼロ目指すインド、砂漠一面のソーラーパネル 写真20枚 国際ニュース:AFPBB News
AFPによれば、インドのグリーンエネルギーは、この10年間で約5倍に増えたそうだ。しかし、この先、急増する人口に対応するため、今後20年間で欧州と同規模の電力システムを追加で構築する必要があるという。
増える人口、増える電力需要に、再エネ整備は追従できるのだろうか。
石炭火力への圧力さらに強まる
先のローマでのG20サミットでは、地球温暖化の抑制に向け、海外の石炭火力発電への融資を停止することで合意したという。
石炭火力発電の投資削減、ほぼ全ての開発銀がコミット=調査 | ロイター
ロイターによれば、このG20声明は世界の開発金融機関の99%が石炭投資を削減し、再生可能エネルギーへの支援を拡大することにコミットしていることを意味するという。
これらの機関がコミットメントを守る場合、途上国は再生可能エネルギーを活用したり、石炭発電から脱却する方が石炭火力発電所を新設するよりも公的な融資を受けやすくなるだろう。(出所:ロイター)
切実なニーズなのか
その一方で、ロイターの別の記事は、インドにおける石炭火力発電所開発の実態を指摘する。
焦点:アジアで火力発電所約200カ所建設中、「脱石炭」の前途多難 | ロイター
それによれば、インド南東部タミルナードゥ州では、少なくとも30年にわたって州内に住む7000万人強に電気を届けるための大型石炭火力発電所「ウダンディ・プラント」の建設が進められている。
そればかりでなく、アジア地域で建設中の石炭火力発電所は200カ所に迫り、このウダンディ・プラントを含めてインドで28カ所、中国は95カ所、インドネシアは23カ所におよぶという。
世界の人口の60%、同工業生産の半分前後を占めるアジアにおいて、石炭使用は減るどころかむしろ増えつつある。急速に発展する各国が電力需要を満たそうとしているからだ。GEMのデータからは、世界全体で建設中の石炭火力発電所195カ所のうち、90%がアジアに集中していることが分かる。
タミルナードゥ州はインド全州で2番目の工業生産を誇り、再生可能エネルギー生産もトップクラスだが、石炭火力発電所の建設件数も最も多い。(出所:ロイター)
ロイターによると、「再生可能エネルギーの拡大は重要だ。しかし石炭は少なくともあと15年、インドの主要エネルギー源であり続け、われわれのエネルギー需要に対応するため生産増強が必要だ」とインド石炭省の元次官が訴えているという。
石炭火力に対する切実なニーズが浮き彫りになる。世界の開発銀行が融資を停止するといっても、その需要は減退しそうにない。この問題を効果的に解決する問題はないのだろうか。
日本にできることはないのか
かつて日本はインフラ輸出といって、アジアでの石炭火力発電所建設に関与してきた。それはアジアにその需要があることを理由にしていた。しかし、その石炭火力への関与が批判されるようになり、潮が引くように商社、銀行など手を引いていった。しかし、それは問題解決を先送りにしているだけなのかもしれない。
もう一度、日本の銀行や商社がアジアで発電所建設に助力を差し伸べてもいいのかもしれない。ただ今度は石炭火力ではなく、再生可能エネルギーという形で。それとも、そうできない理由があるのだろうか。
再エネには、あまりインセンティブがないのだろうか。ビジネスチャンスにすることはできないのだろうか。再生可能エネルギーの導入が気候変動対策のひとつのはずなのに積極的にならないことに、疑問を感じずにはいられない。