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東芝も仮想発電所VPPに参入 なぜ海外のデジタル技術を活用するのか

 

 東芝も仮想発電所VPPに参入するという。先行するドイツ大手のネクストクラフトベルケと共同で新会社を11月に設立すると日本経済新聞が伝える。

 VPP(バーチャル・パワー・プラント)とは、小規模な発電所をIoTで制御し、一つの仮想発電所のように機能させることをいう。電力は、需要と供給が一致しないと停電を起こす可能性がある。VPPでは、電力の供給者と需要家の間に立って、全体の需給バランスをコントロールする「アグリゲーター」が重要な機能となる。

 

VPP構築にも海外の技術が必要になったのか

 いいのか、悪いのかというよりも、いささかショックであったりもする。日本を代表する大企業でさえ、今必要な技術が手元にないのかと思ってしまう。まして、技術の基盤がIoTだというのに。

 

 

  

新会社は発電量を予測したり、電力売買の助言をしたりする。

東芝は新会社と協力し、再エネ施設や蓄電池をIT通信網でつなぎ再エネを買い集める。日本全国にある風力や太陽光発電の設備を持つ事業者に参加をつのる。 (出所:日本経済新聞

 

www.nikkei.com

 

 競争力低下が言われて久しい。その現実をまざまざと見せられているような気もする。それとも、メディアの伝え方の問題なのか。

 国の政策変更があって急ぎ必要な技術を海外から導入するということなのだろうか。社内はもとより国内にも該当技術はなかったのだろうか。

 政府が2050年のカーボンニュートラルを宣言し脱炭素化に一気に舵を切る。

 予兆はあったはずだ。長く石炭政策を国際的に批判されてきた。欧州が脱炭素への動きを見せ、米国でも、連邦政府は別として州政府のいくつかは温暖化対策に熱心だった。国連主導でパリ協定が結ばれ、世界が気候変動対策を進めることで合意されているのだからなおさらのことであろう。

 

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 たとえそれまでの政府が近視眼的で目先のことだけで国際公約ができなかったとしても、先々を見通そうとすれば、石炭火力の次に来る世界を模索、技術を準備していくべきではなかったのだろうか。

 東芝ならなおさらだろう。原発事業の失敗が東芝の屋台骨を揺るがすことになった。脱原発は不可避になり、それに替わる事業を育てる必要があったはずだ。それが水素だったのかもしれない。その水素を活かそうとすれば、VPPのことも視野に入っていたと思うが、VPPに独自技術を使うこともない、外部技術で代用との判断でもあったのであろうか。

 

 

 

 結果的に、国も企業も今までは世界の潮流に抗ってきたように見えてしまう。そうなってしまえば、真に信頼を得ることは難しい。技術面を含め国際的なリーダーシップを発揮することができなくなった理由もそういうところにあるのではなかろうか。

 

 挽回する

 J-Power 電源開発が、2030年までに老朽化し効率の悪い石炭火力発電所を順次閉鎖すると発表したという。朝日新聞英語版によると、Jパワーの渡辺社長は、決定はされていないとしつつ、閉鎖する発電所は、1968年から1969年に建設された兵庫県高砂市高砂火力発電所、1981年に立ち上った長崎県西海市の松島火力発電所、1983年に建設された広島県の竹原火力発電所になる可能性が高いという。

 

www.asahi.com

 
 J-Powerは、4月に、2050年までにゼロ炭素排出量を達成するという目標を発表し、カーボンリサイクル、再生可能エネルギー原子力、水素発電の拡大していくという。

「やりがいはあるが、それを実現するために技術を磨き上げる」と社長の渡辺氏は語ったという。

技術開発として国際的に遅れていることはないだろうか。もっと早い時期から開発を本格化できなかったのだろうか。いち早く技術を確立し社会実装して、技術競争力を高めて欲しいものだ。

 変わった日本を世界に示す好例になっていくかもしれない。

 

 

 

名門アパレルの消滅から学ぶべきこと

 5月に経営破綻し、民事再生手続き後から再建を目指していたアパレルの名門レナウンがいよいよ消滅になるようだ。日本経済新聞によれば、東京地裁が10月30日付で同社の民事再生手続きの廃止を決定、4週間後をメドに破産手続きを始めるという。

 

www.nikkei.com

 

 コロナの影響による売上減、資金繰り悪化がトリガーになったようだが、それだけが理由ではあるまい。

 

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 日経XTRENDが、「アパレル業界のデジタルシフトが遅れた“2つの理由”」という記事を出し、日本のアパレル業界の動きの鈍重さを指摘する。

「世の中のデジタルシフトが急激に進んでいるのに....」

大手企業ほど“リアルありき”という固定概念が強く、経営陣のデジタルへの理解が薄いため、判断と実行が進まない。その後、世の中のデジタル化は加速したが、業界の変化のスピードはそう変わっていなかった。 (出所:日経XTREND)

 

 コロナで状況は一変する。緊急事態宣言でリアル店舗を閉めざるを得なくなった。みなが一斉にデジタルシフトの必要性に気づいたと日経XTRENDはいう。

 必要性を薄々感じていながら、「まだ急がなくても」と決断を後回しにしてきた企業の姿がそこにあったと指摘する。

 

xtrend.nikkei.com

 

 

 

デジタルシフトと成長戦略

 何もアパレル業界に限った話ではないように聞こえる。どの業界も、デジタル化にしろ、何にしろ今必要なことを後回しにしてきたのではないであろうか。逆にして考えれば、企業はなぜそうなってしまったのだろうかとの疑問もわいてくる。 

 

デジタルシフトはそれ自体に意味があるのではなく、何がデジタルの価値で、何がリアルの価値であるかを問い、そのうえで新しい価値を築いていくことに意義がある。

リアルでないと価値が生まれない領域はリアルが担っていくが、そうでない領域はデジタルが担っていく。そうなると、リアルだからできることは何か、自社だからできることは何かを洗い出し、明快に伝えることが重要になる。 (出所:日経XTREND)

 

 これまでの政府はデジタル化やDXデジタルトランスフォーメーションを声高に叫び、それを成長戦略としてきた。しかし、コロナ渦で、デジタル化がまったく社会実装されていない実態があぶり出された。そう思えば、日経XTRENDの指摘はそのとおりということなのだろう。

 今までの成長戦略とは一体何であったのであろうか。政府が事細かにテーマを決めて官製イノベーションを求めても無理ということなのかもしれない。ましてそれがデジタルという手段であればなおさらのことだったのだろう。現実社会が求めるものと政府が求めるものとの間でちぐはぐさがあったりしたのだろう。

 新しい政権になり、成長戦略がカーボンニュートラル政策になったようだ。イノベーションはリアルな世界でしか起きない。カーボンニュートラル政策でリアルな世界はどう変わっていくのだろうか。どんな中身の成長戦略になるのだろうか。同じ轍を踏んでほしくない。