Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

日本最大の太陽光発電事業者を目指す、国内最大の火力発電会社「JERA」

 

  国内最大にして、世界最大級の火力発電会社「JERA(ジェラ)」。福島原発事故の後、東京電力中部電力が出資し、両者の国内外の発電事業と燃料事業を承継し設立された。

 そのJERAが、太陽光発電に本格的に参入することになったという。太陽光発電施工大手のウエストホールディングスと業務提携し、今後5年をかけ、計100万キロワット以上の発電所をつくるという。朝日新聞によれば、大型の原発1基分に相当するそうだ。

f:id:dsupplying:20220204150321p:plain

(資料:JERA

国内では大規模発電所の適地が減っているため、小規模のものを中心に7千カ所ほど開発する。休廃止した火力発電所の跡地や荒廃農地も活用する。投資額は1千数百億円の見通しだ。(出所:朝日新聞

 

 

JERAとは

 JERAが設立された当初は、その経緯からか、「化石燃料調達と火力発電事業における世界一の企業」を目指すとしていたが、その後、世界では石炭火力発電への風当たりが強まった。さらに採算性の面でも、洋上風力発電の単位コストが石炭火力発電の単位コストを下回る可能性が出てきたこともあって、JERAは2019年、「クリーン・エネルギー経済へと導くLNG再生可能エネルギーにおけるグローバルリーダー」を新たなビジョンに掲げるようになった。

JERA誕生の経緯

 原発事故後、東京電力原発での発電を停止、これを火力発電で代替したため、その燃料費は、事故前の2倍に膨れ上がった。事故起こした東電の信用は棄損し、それがさらなる燃料調達を難しくする可能性があったという。また、火力発電所に頼ることになれば、安定供給に支障をきたすおそれがあったため、老朽化設備を刷新せねばならず、建て替え必要の捻出にも難があった。こうしたことを背景にして、JERAが誕生したといわれる。 

サスティナビリティの停滞

「ガス火力は経済と国民生活の重要な部分を担っているが、今後は脱炭素で太陽光を増やしていくことも求められる。夜間は発電しない太陽光とガスを組み合わせて二酸化炭素のより少ない電力を供給したい」と、JERAの矢島聡執行役員が記者会見で述べたという。

 ようやくとの印象が拭えないが、そうなってしまったこともその経緯からすれば仕方がなかったのかもしれない。政策の影響もあったのだろう。

 しかし、JERAを理由とするのは酷なのかもしれないが、日本最大の発電会社が足踏みしたことで、日本の再生可能エネルギー関連産業の弱体化にも影響し、また日本のサスティナビリティが停滞したのかもしれない。

f:id:dsupplying:20220204163901p:plain

(画像:JERA)

 たとえば、太陽光パネルは中国など海外勢が勢力を伸ばし、国内メーカのシェアが低下した。洋上風力発電では、日立製作所が19年に国内生産から撤退を発表し、日本には有力メーカーが存在しなくなった。

 こうした間隙を縫ってか、また中国メーカーが風力発電機を納入することになりそうだという。

 

 

終わりの始まり

 大きさ災禍があれば、それを契機にして新陳代謝が起こり、再び成長するものだ。しかし、逆に東日本大震災福島原発事故を経験してもここまでに、新陳代謝することさえできていない。そして、あれから10年、あの時求められた「サスティナビリティ」はいつしか火を消すようになってしまっていた。

「日本最大の火力発電事業者に加え、日本最大の太陽光発電事業者をめざす」と、JERAは記者会見で強調したという。今回の発表を聞いて、新たな息吹のようなものを感じた。

「失われた時代」の終わりの始まりにしなければならないのだろう。 それと同時に、それはサスティナビリティを加速していかなければならないということなのだろう。

 

「参考文書」

国内トップの火力発電会社JERA、太陽光参入 全国7千カ所で開発:朝日新聞デジタル

JERAとウエストHDの業務提携に関する基本合意について | プレスリリース(2022年) | JERA