いつの間にやら再び植物工場に注目が集まるようになっているようだ。
岩手県の自動車向けプラスチック部品を組み立て製造する那須野製作所が、植物工場事業を強化しているという。奥州市水沢に完全閉鎖型の「植物工場」を整備し、野菜の本格生産に乗り出し、試行的に取り組んできたフリルレタス中心の野菜栽培が軌道に乗ったことから生産拡大を図るそうだ。
植物工場で生産した葉物野菜の需要が伸びていることに着目したという。
京都では、レタス生産工場を運営するスプレッドが好調のようだ。
取引先となる小売店や飲食店からは「仕入れ可能な量や、価格の見通しが立てやすい」と、工場産ならではの安定性を評価する声が届いていると京都新聞が伝える。
安定・環境低負荷、植物工場がフル稼働 野菜高騰で需要、市場拡大|経済|地域のニュース|京都新聞
国内に2カ所ある同社の工場では昨年12月からフル稼働での生産が続いており、需要のさらなる増加を見据え、工場増設も検討する。
稲田社長は「植物工場は農薬の使用を抑えられ、環境負荷も小さい。社会課題の解決とも連動しており、中長期的に評価される事業に育てたい」と意気込む。 (出所:京都新聞)
東京京橋、都会の真ん中にも植物工場がある。プランテックスの植物工場と研究所を兼ねた施設だという。
農機メーカのクボタが昨年11月に、このランテックスに出資したという。
「植物工場」というもうひとつの食料生産のカタチ |クボタプレス|株式会社クボタ
ここ最近、中食の市場規模が拡大しているという。それに加え、コロナ渦による変化で、この先も、中食向けなど、業務・加工用野菜の需要はますます高まっていく可能性があるとクボタはいう。
毎日決まった数の惣菜や弁当を消費者に提供するためには、それらの材料となる業務・加工用野菜が、安定した品質、量、価格で生産されることが必要です。それを可能としうる食料生産技術の1つとして注目されているのが人工光型植物工場です。(出所:クボタ)
10年以上も前の植物工場といえば、露地栽培野菜と競合し、黒字化が難しいと言われていた。市場の変化で、商機拡大につながったということであろうか。
また、クボタによれば、プランテックスは栽培棚ごとに「密閉型」構造とすることにより、装置内の栽培環境を精細にコントロールできるようにし、これによって、レタスなどの作物では従来の人工光型植物工場と比べて栽培面積当たりの生産性が3~5倍にアップという。
生産性改善も市場拡大に役立ったのだろうか。
気候変動の影響により、世界中で野菜や作物の価格高騰が続いている。国内における野菜価格の変動が頻繁に起きるようになったのではなかろうか。
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野菜価格の高騰も深刻である。
農林水産省の9月29日の10月の価格見通しでも、北海道の7月の記録的猛暑と小雨の影響で、ジャガイモと玉ねぎは10月を通して平年より2割以上高くなり、白菜やレタス、ナスも9月前半の長雨の影響で生育が遅れ、10月前半は高値で推移するとしている。(出所:ビジネスジャーナル)
こうした状況が続けば、さらに植物工場への期待は高まるのだろう。葉物野菜ばかりでなく、様々な作物が栽培できるようになれば、いいのかもしれない。
従来から言われてきた、無農薬やフードマイレージ(食料の 輸送距離)だけがその魅力ではなくなっているのだろう。
パナソニックは、気候に左右されにくい農業ソリューション太陽光型植物工場「ITグリーンハウス」を開発したという。
亜熱帯に属する沖縄地方は、湿度・温度ともに高く、スコールや台風も多い。野菜や果物の栽培においては厳しい気候の土地だという。特に高温多湿を苦手とするトマトやイチゴは栽培が難しく、島内の需要を満たすためには島外からの調達が必要になっていると、パナソニックは指摘する。
天候に左右されない農作物の安定収穫を実現できれば、日本のみならず海外の熱帯・亜熱帯地域でも栄養価の高い、美味しい野菜や果物を自給自足できるようになる。(出所:パナソニック)
こうした技術が確立すれば、著しく気候が変わったときにも、対応できるということなのだろうか。
「参考文書」