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【太陽電池とサプライチェーン】米国回帰する太陽光パネルとトヨタが開発する薄くて軽い太陽電池

 

 米国では、太陽光発電システム大手のファースト・ソーラーが、6億8000万ドル(約745億円)を投資し、太陽光発電の製造能力を年間3.3ギガワットに拡大すると発表したという。

www.nikkei.com

 日本経済新聞によれば、「国内製造とサプライチェーン(供給網)の整備をめざす大統領の戦略を具現化するものだ」と、米エネルギー省のグランホルム長官がコメントを寄せたそうだ。

 そのファースト・ソーラーは約500人を採用し、新しい工場を2023年前半に稼働させるという。

 

 

 米国サプライチェーンの国内回帰が進んでいるのだろうか。

「中国が世界の工場としてサプライチェーンの主要な部分を抑えているなか、米国企業は苦労しながらそのノウハウを蓄積し、活路を見いだそうとしている」と、wiredはいう。

wired.jp

 アームブラストという会社が、コロナ禍の米国で、不足していたマスク生産に乗り出した顛末を伝える。この会社は最盛期には、従業員数が120人になったという。

 しかし、いい時は長く続かないのかもしれない。グローバルなサプライチェーンの回復に伴い、これまでの成果が水泡に帰すのではないかと不安を感じているそうだ。

 マスク需要が減少したことで、アームブラストの工場は必要最小限の人員で操業しているそうだ。

彼はマスク生産の継続を目指しているが、今回の米国での製造業ブームの成果を維持していくには方向転換が必要だと結論づけた。このため、今度は室内やクルマの空気中から有害物質を取り除くエアフィルターの生産を検討している。 (出所:wired)

 コロナ禍が収束に向かい、マスク生産の規模縮小は避け得ないことなのだろう。そこで得たノウハウを活かして、次の事業に向かう。

 このまま米国生産は定着するのだろうか。ある程度、産業集積が進まないと必要な材料は輸入に頼らざるを得ない。それでは価格競争に勝ちえない。

 

 

 国内では、新しい太陽電池の開発が進んでいるという。産総研トヨタ 未来創生センターが「薄膜型の太陽電池」を共同開発し、世界最高レベルの発電効率18.6%を達成したという。

www.toyota.co.jp

 トヨタはクルマに搭載することを目指しているようだ。開発している太陽電池の特性からすれば、場所を選ばすに設置できる太陽光モジュールができるのかもしれない。

 この新しい太陽電池サプライチェーンはどのように形成されていくのだろうか。

 国内に不足する構成要素はあるのだろうか。輸入に頼らざるを得ないものがあるのだろうか。開発にめどが立てば、サプライチェーンの検討も始まるのだろう。

概要図

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(写真:産総研「高効率な軽量フレキシブルCIS系太陽電池ミニモジュールを開発」

 

 かつて世界をリードしていた太陽電池事業もすっかり中国にシェアを奪われた。需要喚起に失敗したというべきなのか、それとも、早すぎた開発ということだったのだろうか。新しい太陽電池では同じ轍を踏んでは欲しくない。

 欧米中、それぞれが自国内に強い製造業を構築しているのではなかろうか。それと競争することも必要であろうし、協力しなければならないこともあるのだろう。

米国生産であるがゆえの不都合を克服するためであれば、価格が少しは高くても購入する価値がある──。これからは「米国製」というブランドが、そのように消費者を納得させられるかもしれない。 (出所:wired)

 できることなら、こうした不都合は避けたい。どれだけコストアップ要素を排除できるか、それにかかっているのだろう。トヨタが開発する新しい太陽電池サプライチェーン構築に注目してみたい。