バングラデシュの首都ダッカ近郊で2013年4月、縫製工場などが入居するビル「ラナプラザ」が崩落、少なくとも1,132人の死者、2,500人以上の負傷者を出す大惨事が起きた。この事故をきっかけにサプライチェーンの透明化が求められるようになったともいわれる。
JETROが、バングラデシュにおける縫製工場での安全基準の現状を伝える。
アジアのサプライチェーンにおける人権尊重の取り組みと課題(6)縫製工場での安全基準の今: 日系企業の取り組みと課題(バングラデシュ) | 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報 - ジェトロ
ラナプラザ崩落事故の5カ月前にも、ダッカ郊外の縫製工場で火災が発生、112人の従業員が犠牲になった事故があったそうだ。これらの事故は当時、世界的にみても例のない労働災害と言われていたという。
ラナプラザ崩落事故には、世界が注目。縫製工場の建築構造や火災・電気などの安全性に対し、国内外の関心が急速に高まった。
その結果、バングラデシュ政府、国際労働機関(ILO)や国際的アパレルブランドなどの支援の下、取り組みが進められた。(出所:JETRO)
JETROによれば、ラナプラザ崩落事故から約1カ月後、「バングラデシュにおける火災および建物の安全性に関する協定(the Accord on Fire and Building Safety in Bangladesh)」(通称、アコード)が策定され、悲惨な事故を繰り返さないことなどを目的に、取り組みが進められたという。
縫製工場の建設や火災対策の安全基準が定められ、欧州のブランドや小売企業(バイヤー)と労働組合(生産者)との間で順次締結されていったという。欧州の主要アパレルブランドなどが署名した後は、同協定を順守しているか否かが生産工場選定の基準になったそうだ。
その後、協定は幾度か改定され、元の協定の安全基準は、「繊維・縫製産業における健康と安全のための国際協定(International Accord for Health and Safety in the Textile and Garment Industry)」に移管され、新協定として2021年9月1日に発効したという。
そして、従来の協定に加え、「人権デューディリジェンスへの取り組み」を重視する可能性などについても言及、発効日時点で、欧州を中心とするアパレルブランド80社が署名、日本からは、ファーストリテイリングが新協定に署名しているそうだ。
バングラデシュでの縫製業で進められてきた人権面での強化が、他分野に及ぶ兆しがでてきたとJETROは指摘する。
ファーストリテイリングが10月14日、2021年8月期決算説明会を開催、柳井社長が登壇したという。懸案の人権問題にも言及があったようだ。
ユニクロ柳井氏「政治的選択を迫る風潮は…」 人権問題に自ら言及 :朝日新聞デジタル
新疆綿の話題と特定はしなかったが、「グローバル企業として、フェアな取引をし、社会を豊かにしていくことが使命」とした上で、「多くの企業に対し、政治的な選択を迫るような風潮には強い疑問を感じている」と言及。
「むしろ業界の先頭に立って、それらの問題の監視、改善の努力を行ってきたのは我々だ」とも語った。
素材工場と縫製工場については、自社と第三者による監査で人権問題がないと確認ずみで、今後は原材料の産地の農家などにも自社調査を広げる。国内外で100人規模のチームを立ち上げて取り組みを始めたことも明らかにした。 (出所:朝日新聞)
バングラデシュでの事例からすれば、柳井社長がこういうのも理解できない訳ではない。新疆綿の問題も、「ラナプラザ崩落事故」のような対応があればいいのかもしれない。
米ブラックロックのラリー・フィンクCEOが、第3四半期の決算発表後に、ブラックロックが中国企業の株式を保有するならば「あらゆる法人のレベルで情報開示と透明性がもっと必要だ」と、CNBCCのインタビューで発言したという。
ブラックロックCEO、中国には企業の情報開示と透明性を強く要求 - Bloomberg
ブルームバーグによれば、企業には中国当局に屈してはいないことを示すよう圧力が強まっているという。その背景には、米中の政治的緊張があるという。
巨大化した中国の存在を考えれば、それ抜きではもう考えることはできない。どの企業も難しいかじ取りを求められるようになっているのだろう。
「参考文書」