ユニクロを有するファーストリテイリングの株式時価総額がアパレル世界最大手のインディテックスに近づいているという。インディテックスは「ZARA」を運営しているスペインの会社だ。
日本経済新聞によれば、両社の時価総額の差は約2兆6千億円。インディテックスの時価総額が23%安くなった一方で、ファーストリテイリングは足元で2%減にとどまっているという。
インディテックスは10日、21年までに世界で最大1200店を閉める計画を発表した。小型店を中心に整理し、最新技術を備えた大型店は逆に450店を出店する方針だ。
コロナ後の消費動向が追い風となったとしてもファストリの20年8月期の連結売上高予想は2兆900億円。20年1月期実績で約3兆4000億円のインディテックスとは1兆円以上の開きがある。
柳井会長はインディテックスや米ナイキなどの実名を挙げながら「時代を先導した小売業を超える、新しい業態をつくりたい」と話す。 (出所:日本経済新聞)
「デジタル化、アパレルの成長を左右」と 日本経済新聞は指摘する。
ファーストリテイリングは製造小売業(SPA)として成長、早くから在庫管理を徹底し、需要予測に従い必要な量だけを生産し販売してきたという。
2016年から「情報製造小売業」を掲げてきたという。
消費者の嗜好は多様化し、大量に作っても売れ残りが多く発生していた。こうした無駄を防ぐにはデジタル化の推進が不可欠だと日本経済新聞はいう。
デジタル革命を味方にできるかで、アパレル首位の座が入れ替わる可能性があるともいう。果たして、それだけなのだろうか。
コロナ渦 H&M 業績を落とす
スウェーデンのH&Mもまたコロナ渦の影響で業績を落としているようだ。
5月31日までの3か月間の純売上高は、前年比50%減の31億ドルだったという。だが、それとは逆に、オンライン販売は36%増加したとロイターが伝える。
パンデミックの前、H&Mは、長年にわたる在庫の増加を終わらせようとしていたという。それは多くの店舗がデジタル化と厳しい競争に苦しんだ結果だった。
パンデミックの期間中も、在庫は厳しく管理されていた。だが、中国とバングラデシュからの遅延した製品が到着したため、5月から再び在庫が増加するとの予想もあるようだとロイターが伝える。
また、「多くの市場では、顧客が地元で買い物をすることを好むようなるだろう。都市部の店舗は、観光客や公共交通機関を利用する人々により依存するようになるとの予測がある」という。
ユニクロのグローバル旗艦店「UNIQLO TOKYO」がオープン
6月19日、東京・銀座にグローバル旗艦店となる「UNIQLO TOKYO」がオープンした。
「UNIQLO TOKYO」の役割は情報の発信拠点となることだと日本経済新聞は伝える。
「新店舗はブランドコンセプトの「ライフウェア(究極の普段着)」の情報発信を重視する」。
店で買わなくても商品に触れた顧客が電子商取引サイトで購入することも想定しているようだ。
18日の内覧会でファストリの柳井正会長兼社長は「この店から2020年代の世界のアパレル小売業を変えたい」と語ったという。
その他国内アパレルは、このコロナをきっかけにして変化していくのだろうか。
CSOが進めるデジタル・トランスフォーメーションがアパレルを救う
ダイヤモンド・チェーンストアオンラインは、リテール産業への提言をまとめて記事にした。その中で、近年は、CSO(Chief Sustainability Officer:最高サステナビリティ責任者)」という役職を新設する企業が増えていると指摘し、事例を紹介する。
アウトドアメーカーのパタゴニアを「サステナブル経営」における先進企業として紹介する。
パタゴニアの「WORNWEAR」の取り組みを「顧客から回収した年間10万点もの衣類を70カ所ある拠点で修復し、専用のオンラインストアで販売、商品の回収に協力した顧客にはギフトカードを渡し、製品を再び購入するという流れも構築している」と紹介する。
記事にはないが、この他に、パタゴニアは「プロビジョンズ」という食品事業も展開、リジェネラティブ・オーガニック農業で作られた作物を材料にした食品販売も行っている。
ユニクロの「CSO」が語る「サステナビリティ」
ユニクロももちろんCSO最高サステナビリティ責任者をおく会社のひとつだ。その役職をファーストリテイリング執行役員の新田幸弘氏が務める。
取り組むべき「サステナビリティ活動」について、WWD Japanのインタビューで新田氏は答えている。
「ピープル」「プラネット」「コミュニティー」の3つに再編した。
(以前は6つの重点領域 1. 商品と販売を通じた新たな価値創造、2. サプライチェーンの人権・労働環境の尊重、3. 環境への配慮、4. コミュニティーとの共存・共栄、5. 従業員の幸せ、6. 正しい経営を設定していた)
「プラネット」では、気候変動に向けた取り組みや目標をしっかりと決めないといけない。サプライチェーンと原料の部分でどれだけCO2を削減するか。
これは自分たちだけで決めるのではなく、お客さまや社会の支持が必要だ。最終的な商品やサービスの完成度にもよるが、売れないと意味がない。
制約要因になることは事実だが、お客さまや社会の状況を見ながら、品質やプライスはお客さまの期待に沿いながら、よりよい商品やサービスを提供することによって会社として目標が達成でき、お客さまも参加できるというビジネスモデルにしていきたい (出所:WWD Japan)
アパレルにとってのDX デジタル・トランスフォーメーション
また、ダイヤモンド・チェーンストアオンラインは、DX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性も説く。
世界的な企業が次々にビジネスとCSR(企業の社会的責任)を融合させ、新しいビジネスモデルを創造しています。
ここまで紹介した企業のように会社を挙げて推進していくには、CSOを設置し経営に対する強い発言権を持たせること、そしてCSOにDX(デジタルトランスフォーメーション)を任せることが重要。 (出所:ダイヤモンド・チェーンストアオンライン)
まとめ
ユニクロの事例からすれば、 ダイヤモンド・チェーンストアオンラインの指摘は正しいのだろう。
ユニクロは、「SPA 製造小売業」「DX」「サスティナビリティ」というキーワードを時代変遷とともにコアに昇華させ、今日のポジションを勝ち取ったということであろう。
ダイヤモンド・チェーンストアオンラインが指摘した通り「変われた企業は生き残れる」ということなのかもしれない。しかし、「ローマは一日にして成らず」、長い時間を要することもまた事実だろう。
コロナでアパレル苦境ともいわれる、「変化」が求められているということは間違いなさそうだ。
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