米Tesla、EV電気自動車メーカと表現されることが多いが、時として、テスラとは何の会社かと悩むときがある。ここ最近、テスラのニュースが増えている。個々の案件ごとに興味は沸く。何故テスラはそう動くのか。その理由は?、どんな影響があるのだろうか。それが知りたくなってしまうことばかりである。
新電力と協働して蓄電池発電所を設置
テスラが、新電力のグローバルエンジニアリングとエネ・ビジョンと協働し、大型蓄電システム Megapack(メガパック)を使った日本初の蓄電池発電所「北海道・千歳バッテリーパワーパーク」を建設すると発表した。
テスラはこれまで世界各地に蓄電池発電所を設置してきたが、今回、日本における蓄電池発電所へ初めてMegapackを導入することになる。日本で始まる容量市場や需給調整市場の開始に合わせ蓄電池発電所への展開を加速させていくという。
設置される蓄電池発電所は、グローバルエンジニアリングがアグリゲーター事業者として運用する。テスラによれば、太陽光発電などによる再生可能エネルギー電力、節電等により生み出されたネガワット電力(余剰電力)、自家発電設備による電力、そしてMegapackにおける貯蔵電力を同一グループ下でバランシングし、電力系統の安定化を図り、電力卸市場、需給調整市場、容量市場に参加、更なる系統安定化への貢献と収益化が見込るそうだ。2022年から稼働予定。設置工事は、エネ・ビジョン社がEPC契約のもと、進めていくという。
一方、新電力倒産とのニュースをたびたび聞くようになってきた。新電力業界における新たなモデルケースになっていくのだろうか。
テスラ AIデー
米国時間8月19日にTesla AI Day(テスラ・AI・デー)が開催され、興味をそそる発表が相次いだようだ。
今回のイベントはテスラが単なるEVメーカーではないことを示し、同社に人材を呼び寄せることが目的。 (出所:ブルームバーグ)
また、TechCrunchによれば、イーロン・マスクCEOはテスラのことを「推論レベルとトレーニングレベルの両方でハードウェアにおける深いAI活動を行っている企業である」と説明したという。この活動は、自動運転車への応用の先に待つ、Teslaが開発を進めていると報じられている人型ロボットなどに利用することができるそうだ。
それにしても、マスク氏はうまい表現をする。
「電気自動車による自動運転システムを開発するテスラ」とGigazineは、テスラのことを評する。そして、このイベントで発表があったカスタム半導体「D1」と、開発中のスーパーコンピューター「Dojo」について説明する。
スーパーコンピューター「Dojo」
Gigazineによると、このイベントで初めてスーパーコンピューター「Dojo」について明らかにし、「Dojo」は大規模なコンピュートプレーンを持ち、低遅延かつ超高帯域幅を備えた分散型コンピューターアーキテクチャだという。
テスラは100万台以上の車両から大量の映像データを取得しており、この映像データから自動運転AIのトレーニングを行っています。テスラのイーロン・マスクCEOは以前から「レーダーやセンサーよりも映像認識の方が自動運転に適している」と主張しており、自動運転AIの映像認識トレーニングに最適化したスーパーコンピューターを自社で開発する予定だと述べていました。 (出所:Gigazine)
この「Dojo」はまだ未完成で完全実用化の段階に至っていないが、マスク氏は2022年には稼働するだろうと述べたという。
そして、このスーパーコンピュータ「Dojo」を構成するのが、ASIC「D1」。
カスタムASIC(特定用途向け集積回路)「D1」
D1は、機械学習における帯域幅のボトルネックを取り除くために自社設計されており、プロセスノードはTSMCの7nmが採用されているとのこと。D1のダイ面積は645mm2で、トランジスタ数は500億以上。 (出所:Gigazine)
一体、テスラは何の会社なのだろうか。スパコン「Dojo」が完成すれば、これも販売することを考えるのだろうか。
もしそうなれば、かつてのIBMに近い垂直統合型の企業になり、その派生商品も販売することになるということなのだろうか。「推論レベルとトレーニングレベルの両方でハードウェアにおける深いAI活動を行っている企業である」とマスク氏が言ったというのだから.....
そうであれるのなら、当日に発表があった人型ロボット「テスラ・ボット」に手を出すことも頷ける。
☆
ブルームバーグによれば、ループ・ベンチャーズのアナリスト、ジーン・マンスター氏は、マスク氏には「大きなビジョンがある」とした上で、「投資家にとっては、テスラ・ボットが夢を見させてくれる何か新しい存在だ。半導体はより実体を伴うものだが、大半の投資家には退屈だ」と語ったという。
テスラのすごそうなポテンシャルに、まだ気づいていないのかもしれない。
これからは、AIと人を橋渡しするインターフェースがハードウェアになるのだろうか。そして、基幹技術を応用した展開ハードウェア商品が次々と登場することになったりするのだろうか。もしそうなれば、バリューチェーンのあり方も変えることになるのかもしれない(今のアップルに近づくことなのかもしれませんが)。