ここ最近、急激に地球の気候に変化が起きているという見方が正しいのでしょうか。
イギリスの気候は、すでに「気候変動の影響を受けている」との最新報告書が公表されたとBBCが報じています。
それによると、わずか0.1度や0.2度の気温上昇は、巨大な変化につながり得るそうです。特に異常気象の頻度や激しさにつながり得るということで、多くの人はこのことに気付いていないといいます。
気候変動は未来の話だと思っている人が多いが、気候変動がすでにイギリスの状況を変えていると、今回の報告書が証明した。
「温暖化が進む中、熱波や洪水といった異常気象は今後さらに増えていく」 (出所:BBC)
BBCによると、科学者らは、今後も地球温暖化が進み、各国政府が炭素排出量の削減に失敗すれば、異常気象は悪化すると警告しているそうです。
急激に悪化する地球の天候を思えば、多量に温室効果ガスを排出する産業の脱炭素化は急務です。しかし、それは大きな経済的な転換となり、痛みを伴うものになるのかもしれません。
国内では、鉄鋼メーカが脱炭素に必死になって取り組み始めているように見えます。
これまで二酸化炭素を排出することに何のためらいもなく、それを是として技術開発があったのですから、脱炭素とはまさに天地がひっくり返るほどの衝撃なのかもしれません。極端に言えば、バリューチェーンを一から作り直していかなければならない、そのくらいのインパクトがあるのでしょう。
二酸化炭素、カーボンリサイクル
現在の高炉による製鉄では二酸化炭素の発生は避けることはできそうにもありません。根本的にプロセスを変え、二酸化炭素が発生しないようにしていくか、それとも、二酸化炭素の排出をやむなしとして、全量回収して何か別なものに転用していく、そのどちらかを可及的速やかに実用化していくことを求められているのでしょう。
日本製鉄によると、製鉄所などから排出されるCO2を分離・回収し、メタネーション技術によって製造されたカーボンリサイクルメタンが、船舶のゼロエミッション燃料となりうることを確認したといいます。
生成した合成メタンを船舶が海上輸送に利用することで、臨海立地であり、原材料の輸入や鉄鋼製品の国内外の輸送のほとんどを船舶で運搬する製鉄業が、鉄鋼サプライチェーン全体でのCO2削減に貢献できる意義は大きいと考えています。 (出所:日本製鉄)
そうはいっても製造するための設備投資、コスト等の課題があるのでしょう。高炉から排出される二酸化炭素全量を転用できるのでしょうか。おそらく他の転用先、需要開拓の必要性もありそうです。
水素
高炉での還元(酸素除去)に水素が利用できるようになれば、二酸化炭素の排出は無くなるといわれます。
この水素還元製鉄への転換が期待されますが、これもハードルが高いといわれます。
日鉄は研究開発に5000億円規模、設備の実用化には4兆-5兆円規模がかかると試算。JFEスチールは30年度までに約1000億円の研究開発費が必要と読む。(中略)
最終目標である100%水素還元には、水素の吸熱反応で奪われる熱の補償など多くの課題を解決しなくてはならない。 (出所:ニュースイッチ)
「脱炭素には多額の費用を要するが、生産コストの低減や付加価値向上にはつながらない」と、ニュースイッチはいいますが、「付加価値」とは一体何なのでしょうか。
付加価値とは、企業がその事業活動自体から生み出す、付け加えた価値のことを言います。
脱炭素は付加価値になり得ないのでしょうか。脱炭素はコストではなく、コストアップ分を含めて付加価値という意識の変革が必要なのかもしれません。
循環経済
二酸化炭素を排出する高炉を介さず、電炉と呼ばれる設備でも鉄を作ることができるといいます。
しかし、原料が鉄スクラップになり、大量の電力が必要になります。十分な鉄スクラップを確保できるのでしょうか。二酸化炭素を排出しない電力の確保はできるのでしょうか。
ハードルは高そうですが、実現できれば、あるべき循環経済サーキュラーエコノミーの姿があるように思います。
適量生産、最適地生産
ニュースイッチによれば、鉄鋼メーカ各社は50年までの道のりと足元の需要対応を勘案し「複線的なアプローチが欠かせない」といっているそうです。
これまでは、収益、成長をベースにして事業計画が検討されてきました。しかし、そのままでよいのでしょうか。それと同列で、二酸化炭素の排出をベースに事業計画を検討する必要があるのかもしれません。その排出を最小化しようとすれば、必要以上に作らない、過剰な成長は追わないとの姿勢が必要なのもかもしれません。
多量に二酸化炭素を排出しなければならない鉄鋼メーカ、いっそのこと、二酸化炭素ビジネス、「カーボンリサイクル」に活路を見出し、それを成長路線に転換していくのもよいのではないでしょうか。
逆転の発想が求められていそうな気がします。それによって、また循環経済 サーキュラーエコノミーの実現にも近づきそうです。