米GMゼネラル・モーターズが、北米3工場での生産休止を少なくとも4月半ばまで延長し、ブラジル グラバタイ工場の操業を4-5月に停止すると発表したとロイターが報じる。長引く世界的な半導体不足の影響によるという。
ロイターによれば、フォード・モーターもGM同様に半導体不足の影響を受け、第1四半期の自動車生産が最大20%減少するとの見通しを示していたという。
米自動車業界がこのような状況であれば、バイデン大統領がチップを片手に会見し、半導体製造業者に370億ドルの支援する方針を表明した意図もわかる。
ロイターによれば、自動車用半導体を手掛けるポーラー・セミコンダクターは、工場は生産能力を超える注文を受けているが、自動車メーカーからの需要にできる限り応えるため、他の注文については生産を落とし、需要への対応を加速し始めているという。
同社のスリヤ・アヤール副社長ば「需要はこの水準が少なくとも1年間は続くと見込んでいるが、もっと長引くかもしれない」と話したそうだ。
こうした米国の補助制度の恩恵を受けることになりそうなのが、半導体受託生産大手のTSMC(台湾積体電路)のアリゾナ州での工場建設計画や、サムスン電子が検討しているテキサス州での工場建設計画だとロイターは指摘する。
ただ、これらの工場は自動車向けではなく、スマートフォンやラップトップ型パソコンなどに使われる高性能半導体がターゲットになる。また両社の発表した計画によると、いずれの工場も稼働は2023年か24年だ。 (出所:ロイター)
何か矛盾を感じる。それに加え、自動車産業の半導体不足問題がなぜか中国への危機感につながっていくようだ。
少しばかり不思議さも感じるが、一方で、「中国、半導体でも覇権確立に照準-「第3世代」先行で主導権確保図る」とブルームバーグは指摘する。
それによれば、米インテルや台湾積体電路製造(TSMC)と肩を並べる半導体メーカーの育成を中国は目指すという。米国の対中政策に振り回されないよう取り組むためだという。
中国が重視しているのは、いわゆる「第3世代半導体」のようなどの国もまだ主導権を確立していない分野だとブルームバーグは指摘する。
AIや量子コンピューターのような新たな成長分野の研究を加速させることができれば、中国企業は競争力を確保し得る。
そこは第3世代半導体を必要とする領域だ。
炭化ケイ素や窒化ガリウムなどの素材から成り、高周波や高電力、高温環境でも動く第3世代半導体は、第5世代の無線周波数や軍用レーダー、電気自動車などで広範な用途がある。 (出所:ブルームバーグ)
「装置やソフトウエア、新素材などを扱う新たな大企業を育て、優位に立ちたい」といのが中国の狙いで、「究極的な目標は設計ソフトウエアの米ケイデンスや米シノプシス、半導体製造装置でのオランダのASMLホールディングといったその分野の基幹を成すような世界的企業に匹敵する自国企業を誕生させることだ」という。
SIA 米半導体工業会のCEOの言葉をEE Times Japanが紹介する。
それによれば、「長期的に見れば、個人向け技術や半導体によって動くデバイスの需要の高まりによって、半導体市場は今後数年の間成長し続ける」という。
個人向けデバイスやサーバに加えて、AI(人工知能)、5G(第5世代移動通信)、自動走行車、クリーンエネルギーといった半導体の長期的なアプリケーションも迅速に勢いを増しつつある。
2021年には、半導体売上高は8.4%増加することが見込まれている。 (出所:EE Times Japan)
「需要の高まりは、高度な半導体開発技術を持つ国にとっては良いニュースといえるだろう」とEE Times Japanは指摘する。
先々のハイテク分野の覇権争いがいよいよ熾烈さを増すということなのだろうか。
米国政府が大胆な行動を始め、中国も動き始める。日本はこのままでよいのだろうか。
「大手電機メーカー各社がSoCの重要性を再認識して開発力を強化すべし」と日経XTECHが指摘する。
垂直統合から水平分業へ、そしてまた垂直統合へと、半導体産業を取り巻く事業モデルは、20年あるいは30年という長い周期の中で移り変わっているようにも見える。
どちらが良いか悪いか、ということではなく、それぞれの時代で求められるニーズが変化しているために、半導体事業の在り方が影響を受けている、と考えるべきだろう。 (出所:日経XTECH)
米AppleがSoCを自社開発し、米GoogleやAmazonなも自社データセンターのためにAIプロセッサーを開発する事例を記事筆者は指摘、国内電機メーカも「自社製品やサービスの差異化を図る目的でSoCを開発すべし」という。
一理あるのかもしれない。それが半導体競争で生き残ることにつながっていきそうな気もする。基幹となる要素技術を確立、それがあってはじめてデジタルで勝負ができるというものだろう。