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【ESG投資とグリーンウォッシュ】資源価格高騰で利益を増加させる企業のサスティナビリティに問題はないのか

 

 資源価格が上昇しているといいます。そんな中、三井物産が、鉄鉱石や原油価格など資源価格の上昇を背景に今期(2022年3月期)、純利益トップの伊藤忠商事を抑えて首位奪還の可能性があるとブルームバーグが報じています。首位奪還となれば、22年ぶりのことだといいます。

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 ブルームバーグによれば、三井物産のエネルギー部門と金属資源部門を合わせた純利益は全体の6割超となっていることから、鉄鉱石など資源価格が業績に与える影響は大きく、利益が上振れする公算が高いといいます。

 一方で、中国が粗鋼生産を抑制する方向にかじを切り、鉄鉱石需要を減少させかねないとの見方もあるそうです。

 

 どの総合商社も一様に「サスティナビリティ」を強化し、積極的にアピールしているように見受けられます。

 三井物産が扱う資源はサスティナビリティにどこまで配慮されているのでしょうか。

 世界的にESG投資が増える中、運用担当者や銀行、事業会社はその流れに取り残されまいと必死だとブルームバーグは指摘します。

この分野では大量の資金が流れ込んでいるのと同時に、環境に配慮しているように見せ掛けたグリーンウオッシュの例も増えており、細部をくまなく調べて実態を見極める力が求められている。 (出所:ブルームバーグ

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 そんな中、スウェーデンSEBインベスト・マネジメントは、他のESGファンドを凌ぐ、30%のリターンを顧客にもたらしているそうです。これは、業界平均の2倍を超える運用成績といいます。

自社の持続可能性へのコミットメントについてSEBを説得するのに、パワーポイントを使ったプレゼンテーションで済ませることができると思っている企業は考え直すべきだ。 (出所:ブルームバーグ

 その企業がESGに関する約束を実現できるのかどうか、それを測る上で「最も重要な」テストは「経営幹部らと話すことだ。実際にどの程度、彼らがコミットしているのかを見極めることだと、SEBの運用者カロリン・フォシュベリ氏がそう述べているといいます。

 

  鉄鉱石などを多く手掛ける豪英資源大手のBHPグループは、2050年 温室効果ガス排出の実質ゼロを目指しているといいます。

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 国内鉄鋼メーカのJFEスチールとBHPは共同して、世界の製鉄業界が直面しているCO2排出量削減という課題に取り組むといいます。

 高炉法や直接還元鉄製造について、原料処理技術も含めて共同研究を行い、製鉄業界のサプライチェーン全体でのCO2排出量を大幅に削減する革新的な技術の確立を目指すそうです。

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 BHPはこの他にも、中国最大手の製鉄業者宝武鋼鉄にも最大US3500万ドルの資金を拠出し、同様に脱炭素の取り組みを進めています。そればかりでなく、一航海あたりCO2換算分の排出を30%削減する大型ばら積み貨物船契約の締結なども行い、バリューチェーン全体の排出削減を進めているといいます。

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 鉄鉱石調達に関わる総合商社は、こうしたBHPのアクションをどうながめているのでしょうか。同じようなアクションを起こしたりはしないのでしょうか。

 そうした総合商社をESG関連の投資家たちはどう評価するのでしょうか。

 猛暑、暑すぎる夏が常態化しています。一刻も早く脱炭素を進めるべきです。しかし、足下の旺盛な需要に応じるのも企業としての責務です。それで脱炭素に遅れが生じることはないのでしょうか。脱炭素、サスティナビリティは多少の矛盾を含めて進められていくのかもしれません。