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【サスティナビリティ】「脱石炭」で総合商社は変わるのか 伊藤忠の場合

 

 ここ最近の報道を見てて、良くも悪くも伊藤忠商事を見る機会が増えたと感じた。「糸が始まり」とそれなりのことは知っているけど、詳しく調べたことはない。少しばかり気になったので、調べてみようと思った。

 

 初代伊藤忠兵衛が、1858年 (安政5年)15歳のとき、行商を始めたときが伊藤忠商事のはじまりといわれている。

 忠兵衛は、近江商人の家に生まれ、熱心な浄土真宗の信者であり、「商売は菩薩の業、商売道の尊さは、売り買い何れをも益し、世の不足をうずめ、御仏の心にかなうもの」という「三方よし」を生涯実践した真の「商人」であったという。

 1893年明治26年)綿糸卸商伊藤糸店を大阪に開店、利益三分主義の成文化、洋式簿記の採用、月刊誌「実業」の発行(織物業界の指導誌ともなり、一部は市販される)など、当時として画期的な経営方式を次々と取り入れ、合理的な経営を実現していく。(参考:伊藤忠商事ホームページ 歴史・沿革

www.itochu.co.jp

 

 その伊藤忠商事が、昨年、「石炭」についての新しい方針を発表した。 

石炭関連ビジネスについて、「新規の石炭火力発電事業の開発および一般炭炭鉱事業の獲得は行わない」ことを、取組方針といたします。また、豪州IMEA社を通じて保有するRolleston一般炭炭鉱全持分権益を売却いたしました。(出所:伊藤忠商事 プレスリリース)

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 2019年度短期経営計画「Brand-new Deal 2020」 の中の「サスティナビリティの取り組み」の一環として方針を変更したのであろう。この経営計画では、「石炭ビジネス取組方針を着実に推進し、再生エネルギー事業により注力」とし、また、「サプライチェーンを含むグループ全体のCO2削減目標」を掲げる。

 

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 昨年12月、東京本社ビルの使用電力をすべて実質CO2フリーに切り替えた。また、国内およびアジアで、「太陽光分散電源事業」を推進するとし、経営計画に沿っての行動が確認できる。

 

 

 具体事例とし、国内では、小売店舗や工場等の屋根に無償で太陽光発電設備を設置、顧客に電力供給を行う地域に根差した独自のVPP(バーチャル・パワー・プラント)を構築していくという。

 短期経営計画で「サプライチェーンを含むグループ全体のCO2削減目標」を掲げるが、その目標値は低く、もう少し野心的な目標設定でもよいのはでないか。このVPP事業を活用したビジネスモデルの工夫がもう少しあっていいように感じる。 

 

 

  気候変動や大量生産・大量消費社会が国際社会の課題になった。

 中国が一大消費地になり、世界の工場と化し大量にモノが作られるようになった。この勢いに乗じて、どの商社も資源に走り、利益拡大させた。中国の成長率が鈍化し始めると、それにつられるように商社の業績も悪化していった。

 中国の存在が、今ある課題を生み出したとは言えないまでも、その一因ではあろう。商社もまた、それに加担してきたとみられても否定することはできないであろう。

 

 「脱石炭」に舵を切り、国際情勢の流れに沿った取り組みは、それなりに評価されてもいいのかもしれないが、その甘さを指摘するNGOもある。

 

www.nocoaljapan.org

 

 商社ごとで得意分野は異なるかもしれないが、食糧や繊維など消費者の生活に関係する分野を担ってきたのもまた商社である。まだ、日本が発展途上にあったときには、輸出入を振興することで、物不足、食糧不足という社会課題を解決してきた。

 時代が移り変わり社会課題も変化している。地球温暖化が危機的状況になり、欧州を中心にした循環型経済の流れ、大量消費の弊害など解決しなければならない課題も多い。グローバルな時代において、こうした課題解決には、商社が築き上げた国際ネットワークが活用されるべきであろう。

 

 

 伊藤忠は、コーヒーや天然ゴム調達のトレーサビリティに取り組みはじめた。トレーサビリティが向上することで見える課題もあろう。そうした課題の中に新たなビジネスチャンスがあるような気がする。

 

 

  「TCFD 気候関連財務情報開示タスクフォース」にも賛同、気候変動関連の取り組みを推進してきたという。エネルギー・資源ばかりでなく、繊維や食料もまた気候変動に密接に関係する。こうした分野で、どのような取り組むを行っていくかも、今後、求められるであろう。衣服の大量廃棄やフードロスが社会課題として認識されつつある。

 

 先の世界経済フォーラム ダボス会議では、「ステークホルダーがつくる、持続可能で結束した世界」がテーマになり、「ステークホルダー資本主義」が意識されるようになった。このステークホルダー資本主義は、「三方よし」に相通ずるとの意見もある。

  

 リスクマネーは、テクノロジーに投資し、ユニコーン企業を生み出すが、こうした新たなテクノロジーはなかなか事業として成立していない。不完全な社会実装のままでは、社会課題は解決されない。

 

 三井物産は、地球環境問題を解決しようと、環境基金を作り、NPO法人などを支援する。

 こうした活動をCSR活動にとどめず、その延長線上に事業があるとみることはできないであろうか。NGOやNOPを見出す課題を事業に転換、社会実装させていく、それが実現できれば、経済と環境が調和する持続可能な社会になるということではないであろうか。

 対馬での海洋プラスチックの産業化は好事例ではないであろうか。

 

dsupplying.hatenablog.com

 

 伊藤忠の創業精神は「三方よし」と聞く。海洋ごみの清掃に取り組み市民活動との連携もまた「三方よし」の精神に通じないだろうか。他の事業でも、そうした活動を展開して欲しいものだ。 

 

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「関連文書」

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「参考文書」

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