ユニクロの業績が好調のようである。ブルームバーグによれば、9-11月期の営業利益が前年同期比23%増の1131億円だったという。効率的な倉庫運営による物流費の削減や広告宣伝費の削減を進めたことで販管費比率が改善したことなどから大幅な増益となったという。この他、中国大陸と台湾で防寒衣料の販売が好調で、国内と同様に値引き販売の抑制による粗利益率の改善などが奏功し、大幅な増益になったそうだ。
株価の高さを警戒する声もあるとブルームバーグは指摘する。ジェフリーズ証券は、「これ以上のサプライズはもう出てこないところまで来ている」として同社株の投資判断を「ホールド」から「アンダーパフォーム」に引き下げたという。
正しいこと 倫理観
「善行」は本心か題目か ユニクロ、3年で会社が変わったという日経ビジネスの記事は、ユニクロのこの3年の歩みを解説する。
それによると、昨年春に緊急事態宣言が発令された直後、柳井正社長は「自らの原点に立ち返り、より正しい経営を行う」と語ったという。それ以降も「正しいこと」に取り組むと強調するそうだ。
ユニクロは昨年、リサイクル素材によるダウンジャケットの販売を始めた。価格は7990円(税抜き)。著名デザイナー、クリストフ・ルメール氏がデザインを手掛ける「ユニクロ ユー」の製品で、同氏の手による通常のダウンと変わらない価格帯だと日経ビジネスはいう。
これが柳井氏がいう、「正しいこと」ことなのであろうか。
経済危機に陥ると、人の心に変化が生じる。みなが出費に対して敏感になり、環境保護や倫理的行動、健康志向への意識が高まるという。リーマンショックのときもそうだったようだ。振り返ってみれば、成長しているグローバル企業はみな、今もサスティナビリティに熱心だ。それが起点になっているのだろうか。
公平性と多様性
アップルが13日、また新たな発表をした。 1億ドル(約104億円)を投じて人種間の平等を実現するための取り組みを実施するという。
iPhoneManiaによれば、教育などを中心に、多くのプロジェクトが実施されるという。
「Racial Equity and Justice Initiative(REJI)」の創設は昨年6月に発表されていた。このREJIの取り組みを統括するのは、Appleの環境関連担当副社長のリサ・ジャクソン氏。これまでのアップルでの在任期間中にも、同社のサプライチェーンの環境持続可能性を向上させるなど、数々の目覚ましい成果を上げてきたとTechCrunchはいう。
TechCrunchによれば、アップルは1億ドルを出資して、教育、経済的平等、刑事司法の改革に取り組むこのイニシアチブを財政的に支えるという。まずは米国で始めて、世界的にも展開していくそうだ。
あまりにも長い間、人種差別やその他の差別の犠牲になってきたコミュニティに力を与えるために、私たちは学生から教師、開発者から起業家、住民組織から正義の提唱者まで、幅広い業界やバックグラウンドを持つパートナーとともに、REJIの最新のイニシアチブを立ち上げます。
私たちはこのビジョンの実現を支援し、我々の言葉と行動を、我々が常にアップルで大切にしてきた、公平性と多様性を受け入る価値観に一致させることを誇りに感じます。 (出所:TechCrunch)
ジョブズのころとは全く違うアップルが今ここにある。世界一の企業に駆け上った企業としての責務なのだろうか。
2030年のカーボンニュートラルの達成を宣言し、今また、新たに「公平性と多様性」を社会とともに育ってていくとする。今までのどの企業が取り組まなかったことに、企業のリーダーとして、より積極的に挑戦していくということであろうか。アップルもまた「正しいこと」をやろうとしているのかもしれない。
利益と社会的良心
利益と社会的良心を両立させていくことがスターバックスの創業時からの使命だったという。しかし、いつしかその使命も色褪せ、成長のための成長を目指すようになり、客足が遠退く時期があった。
スターバックスの創業者ハワード・シュルツ氏がCEOに復帰し、2008年、彼はスターバックスのシニアリーダーを集めたグローバルサミットの場で、ビートルズの分裂を例にしスターバックス自らの存在する意義を明らかにしたという。
1965年の夏、ビートルズがニューヨークのシェイ・スタジアムで55,000人の聴衆を前に演奏した。彼らが最も多くの聴衆を集めたライブコンサートだという。叫び声や混沌のなかで、ビートルズは自分たちが演奏する音が聞こえなかったという。彼らの芸術が人気にかき消されてしまったのだ。ポール・マッカートニーは後に、この大コンサートがビートルズの終わりの始まりだったとい言った。 (参考:スターバックス再生物語)
売上を大きく伸ばす。それは顧客から広く支持されたということであろう。熱狂、その人気がいつかしか自分たちの存在意義が揺るがし始めるということであろうか。
2008年この年にスターバックスは、「コーヒー豆の倫理的な調達や環境保全活動に率先して取り組み」ということを含む7つの項目からアジェンダを発表し、存在意義を明らかにした。
サスティナビリティ
2015年に国連で「誰一人取り残さない」という理念の下SDGsが採択された。今では、このSDGsが求める気候変動対策やダイバーシティ&インクルージョンに多くの企業が取り組むようになり、サスティナビリティがメガトレンドの様相になった。
いくつかの外食チェーンが緊急事態宣言下、国や都の営業時間短縮の要請に反旗を翻しているという。従業員の雇用を守ることが大義のようだ。
従業員や顧客をコロナ感染の危険に晒していないだろうか。
人の考えていることはその言動に出るという。コロナを甘く見ているのかしれない。大義名分をこさえて、自分たちの利益のことだけを考えているのかもしれないし、もしかしたら、単なる政治的反発なのかもしれない。
それが「正しいこと」なのだろうか。社会的良心に反しているような気がする。
緊急事態宣言が少しずつ価値観を変えていくのかもしれない。