【対立とデリスキング】脱中国依存を進めることはできるのか

「アジアの紛争による日中対立リスクは甚大。日本企業は備えを」と、英エコノミスト誌の元編集長ビル・エモット氏が警鐘を鳴らしています。

中国とのデカップリングは、国家的な観点からも、大企業の観点からも不可能であり、ダメージが大きいと指摘しています。

エモット氏「アジアの紛争による日中対立リスクは甚大。日本企業は備えを」：日経ビジネス電子版

日本政府が近隣諸国が紛争を起こすことを抑止するために強い自衛力が必要と考え、それを実行に移そうとしているをあげ、その発生リスクが高くなっているともいいます。出来事の勢いに任せて突然断絶が起こることは十分に考えられるとし、企業は、こうしたことによって活動や存続に与えるリスクがどの程度あるのかを把握することが重要といいます。

また、最悪のシナリオを想定し、緊急時対応計画を作成し、定期的に見直すべきともいいます。重要なことは「デリスキング」と指摘、その依存度を下げる方法を検討すべきといいます。

欧米企業も同様にその動きを強めているようです。HP米ヒューレット・パッカードと米デルは、サプライヤーに対し、東南アジアでの組み立て開始を具体的に指示したそうです。しかもデルは、24年までに中国製半導体の使用を段階的に終了していく方針も掲げているといいます。

揺らぐサプライチェーン米欧と台湾の切れない絆：日本経済新聞

また、記事によれば、アップルの調達担当者と打ち合わせした複数のサプライヤーは、他国において中国や台湾と変わらないコストで生産する方法の提案という無理難題を押し付けられているといいます。

脱中国の取り組みも安くはないが、台湾との関係を断ち切れば一段と高くつく。誰かにそのコストを負担する用意があるのだろうか。（出所：日本経済新聞）

「このような事態が起こらないことを祈ろう。だが、希望的観測は戦略ではない」と、ビル・エモット氏はいいます。

流入する中国富裕層

一方で、少子高齢化による働き手不足や経営者の高齢化、施設の老朽化などが重なり温泉旅館の廃業が相次ぎ、今後10年間で温泉旅館の外国人所有率は4割程度になるとの予測があるといいます。

中国富裕層が担い手に、斜陽の国内温泉旅館－外国人所有が４割へ - Bloomberg

この担い手として台頭しつつあるのが中国富裕層といいます。コロナ禍で経営が悪化し、積極的な銀行融資が見込めない中、相場の倍近い高値もいとわない中国資本が売却先として魅力を増していると記事は指摘します。

老朽化した施設は資産価値がないと敬遠する日本人より、設備投資を惜しまず旅館経営を引き継いでくれる中国資本を選びたいのが本音だ。（出所：ブルームバーグ）

タイやベトナムが中国からの投資を自国の経済発展につなげているのに対し、日本は反中国感情が阻害要因となって投資魅力を失わせているといいます。

記事は、中国資本の買収が地域の再生につながる例も見られ始めたとして、「熱海再生」の事例を示します。

☆

かつて熱海衰退のシンボルとも呼ばれた「つるや旅館」、2001年の閉館後に廃虚となっていたそうですが、昨年9月、香港資本の下で高級宿「熱海パールスターホテル」として再生したといいます。このホテルでは、運営を任された日本人スタッフが開業前から熱海市と対話を重ね、食事を提供しない「泊食分離」形式を取ったそうです。宿泊客に地域の飲食店で料理を楽しんでもらうためだったといいます。

こうしたアクションによって、観光客向けに地産地消のメニュー作りが進めば、野菜農家や漁業者の販路確保となり、高齢化の歯止めにつながる可能性もあると市の職員も歓迎しているといいます。

最大の課題である「働き手不足」の解消も進むとみている。「定休日」を設けて従業員を休ませる宿が増える中、世界水準のサービスでインバウンドを呼び込む外資は、平日の宿泊需要を増やして収益の平準化に寄与する。海外で「熱海」がブランド化すれば、繁忙期に頼らない経営は他の旅館にも波及する。（出所：ブルームバーグ）

記事は、政府が「インベスト・ジャパン」を掲げるのであれば、中国資本の取り込みを模索すべきだとの有識者の声を紹介しています。