Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

ディズニー映画「ムーラン」問題の深層 なぜ欧米はウイグルを問題視するのか

 

 ディズニーの実写版映画『ムーラン(Mulan)』がSNS上で話題になっているという。

 批判される理由は、この映画の一部シーンが、イスラム教徒に対する人権侵害が横行する中国 新疆ウイグル自治区で撮影されていたことが明らかになったことのようだ。

 AFPによれば、昨年も主演女優の劉亦菲(リウ・イーフェイ、Liu Yifei)が香港警察による民主派デモ取り締まりを支持する発言をしたことで政治的論争が起き、ボイコットの声が上がっていたという。

 

ディズニーのムーランとウイグル問題

先週、ディズニーの公式動画配信サービス「ディズニープラス(Disney+)」での公開直後にも新たな論争を巻き起こした。

視聴者らは、同作のエンドロールでディズニーが「深い感謝」の意を表明した協力機関に、新疆ウイグル自治区の8政府機関が含まれていることを発見。

その中には、複数の収容所の所在地として知られる同自治区東部トルファン市の公安当局や、中国共産党プロパガンダ機関の名もあった。 (出所:AFP BB NEWS)

 

www.afpbb.com

 

 米NPOアジア・ソサエティは、米紙ワシントン・ポストへの寄稿で「ディズニーは新疆のプロパガンダ部門4つと公安局1つに感謝した。新疆は現在、世界で最も悪質な人権侵害が起こっている場所の一つだ」と指摘したとAFPは伝えている。

 

(関連文書)

ディズニー映画「ムーラン」ボイコットの声、新疆で一部撮影 | ロイター

ディズニー新作映画「ムーラン」、新疆で撮影 エンドロールで発覚 - BBCニュース

 

 

 

制裁は人権問題の解決の糸口になるのか

 ビジネスの世界では、パタゴニア新疆ウイグル自治区からのコットンの調達を止めた。それに追従するかのように、米政府も、同自治区産の綿花とトマト製品について、強制労働で生産されている疑いがあるとして輸入禁止措置を準備しているとロイターが報じる。

 

ロイターが入手したCBP(米税関・国境警備局)の声明草案は、綿花・織物・トマトの供給網について、強制労働を疑わせる兆候があるとし、借金による束縛、移動の制限、隔離、脅迫、賃金の未払い、劣悪な労働・生活環境などが含まれると指摘している。

CBPは新疆生産建設兵団が生産する綿花、伊犁卓萬服飾制造と保定市緑叶碩子島商貿が製造する衣服の輸入を禁止する見込み。これらの企業は中国政府が運営する「再教育キャンプ」の労働力を使用しているという。 (出所:ロイター)

 

jp.reuters.com

 

 ロイターによると、中国外務省は「米国は人権について何も気にしていない。中国企業を抑圧し、新疆を不安定にし、新疆を巡る中国の政策を中傷するための口実に利用しているにすぎない」と批判したという。

 

dsupplying.hatenablog.com

 

 このコロナ渦をきっかけにして世界が大きく変化する。とりわけ中国に関わることが多い。ここ最近の中国を見ていると、どこに向かおうとしているのか、わからなくなる。これまで、したたかに振舞ってきた中国とは思えない。たんに指導部の感情の問題なのだろうか、それとも、国内に何か見過ごすことができない兆候でもあるのだろうか。

 今、中国から目を離すことができないようだ。

 

 

 

欧州 陶酔からの目覚め

 欧州も、この新疆ウイグル自治区での人権侵害や香港での国家安全維持法の施行を問題視し、溝が広がっているようだ。

 日本経済新聞は、「中国とドイツの間に、価値観の違いが広がり始め、従来の蜜月は終わりに向かおうとしている」という。

  

欧州全体でも中国との関係は曲がり角を迎えている。EUは2019年に中国を「競合相手」とする新たな対中戦略を協議した。

貿易や技術面の警戒を前面にし「陶酔から冷静な対中政策へ」(ドイツ世界地域研究所のパトリック・ケルナー氏)の転換が進む。 (出所:日本経済新聞

 

 日本経済新聞によると、ドイツ政府は、初のインド・太平洋外交の指針(ガイドライン)を閣議決定し、大国の覇権を受け入れず、開かれた市場を重視するという文言を盛り込んだという。

「民主主義と自由主義の価値観を分け合う国々とより深く協力していく」と 独マース外相が語ったそうだ。

 

www.nikkei.com

 

 グローバル化が進展して誰もが中国に吸い寄せられた。それだけ中国の魅力が大きかったということだろう。しかし、今、現実にあるのは、様々な矛盾だ。

 ドイツ政府が示した新たな指針では、中国の広域経済圏構想「一帯一路」について対象国の過剰債務の問題を指摘するなど、中国に手厳しい表現が目立つという。

 日本経済新聞によれば、ルールに基づく秩序は「強者の法ではなく、法の強さが決め手でなければならない」とクギを刺したという。

 

 中国警戒論

「トランプ米政権の対中政策を支持した日本のビジネスパーソンは5割弱に上り、日本企業の間で中国への慎重姿勢が広がっている」と日本経済新聞はいう。

 

 「中国に対し、巨大市場としての魅力よりも、技術や資金力への警戒が勝っているようだ」 

トランプ政権の対中政策全般については、48.1%が「支持する」と答え、「支持しない」(36.9%)を大きく上回った。米国が中国企業を名指しして取引制限する技術管理に対しても51.6%が支持し、なかでも中国と仕事で関わった人で支持が広がった。 (出所:日本経済新聞

 

www.nikkei.com

  

 

 

 ドイツ メルケル首相は毎年のように中国を訪問していた。アジア戦略を中国を軸に描き、重要なパートナであったのだろう。

だが、経済成長と共に開かれた市場になるとの期待は裏切られ、中国に進出した独企業は技術の強制移転などにあえぐ。

不公正を是正するための欧州連合EU)と中国の投資協定の協議も難航し、中国依存への懸念が高まった。 (出所:日本経済新聞

 

それでも仲良くやっていくしかない

 日本経済新聞によれば、東京大学の川島真教授は「日本企業は米中の分断に伴うリスク分析と対処策を準備する必要がある」と指摘しているという。

「過度の分断が世界経済、日本経済にとって好ましくないことを内外に発信し、コンセンサスを形成していくべきだ」と述べているそうだ。

 

 どんなことがあろうが、中国が隣国であることに変わりない。これまでの歴史を振り返れば、対立するよりは仲良くやっていく方がはるかに有益のはずだ。様々な懸念があろうが、それを乗り越えていくしかない。

 

 

「関連文書」

dsupplying.hatenadiary.com

 

 

f:id:dsupplying:20200910163103j:plain