中国の習主席が国連で「二酸化炭素の排出量を30年より前にピークアウトさせ、60年より前に実質ゼロにするよう努力する」と発表したとき、大方の人たちが疑いの目をもったのではなかろうか。何せ、いまだに石炭火力発電所をせっせと増設しているという。
しかし、中国である。口に出した以上、実現させてしまうのかもしれない。
日本経済新聞は、早速、その目標に向けての準備が始まっていると伝える。利用実績による「取引市場」を設けたり、将来的には「炭素税」も検討しているようだ。
しかしそれでも、いまだ石炭依存は高く、日本経済新聞によれば、ピークの13年から6%減ったが18年の石炭消費量は約40億トンに達するという。1次エネルギーに占める比率は今なお55%で、25年までに5割未満に下げるとの見方もあるそうだ。
中国の排出量が50年時点でもなお62億トンに達するとはじく。植林など二酸化炭素の吸収量を増やすとともに、排出量が多い石炭消費を抑制する抜本策が不可欠だ。 (出所:日本経済新聞)
日本経済新聞は、政府内には新たな施策が中小企業などの負担増になるとの懸念も強く、実現への道は険しいと指摘する。
ブラックリスト
新興市場ファンドの一部では、ESGスコアで投資先を選別しているという。
ブルームバーグによれば、カンドリアムSRI債券新興市場ファンドが、ロシアと中国、サウジアラビアを敬遠しているそうだ。3カ国とも、ESG(環境、社会、ガバナンス)のスコアが余りにも低いからだという。
ファンドのランキングで下位25%の国は、債券の世界での役割がどんなに大きくてもブラックリストに掲載される。(出所:ブルームバーグ)
カンドリアムのアプローチは、発展途上国の政府が外国の資本に頼ろうとする時に今後直面する課題の前兆かもしれないとブルームバーグはいう。
現時点で各国の借り入れコストは温暖化ガス排出削減や汚職対策へのコミットメントなどの要素を織り込んでいないことが多いが、将来は変わるかもしれない。 (出所:ブルームバーグ)
こうしたファンドの動きは中国に変化を促すことができるのだろうか。
包囲網
激化する米中対立で、あの手この手で制裁を加える米国。そうした影響が少しずつ顕在化してきているのだろうか。ファーウェイは、廉価版スマホ事業を売却との報道が流れる。小米が触手を伸ばしているという。
中国が力を入れようとする半導体産業でも包囲網を形成しようとの動きがあるようだ。
韓国メモリー大手のSKハイニックスが米インテルのメモリー事業を買収し、旧東芝メモリのキオクシアホールディングスにも出資するという。韓米日連合を形成、半導体メモリーの国産化を急ぐ中国勢の台頭に備えると、日本経済新聞はいう。
足元では、米国の制裁によって半導体製造装置を調達できないなど中国半導体メーカーの脅威論もやや後退している。それでもSKはしたたかに連合構想を前進させて、サムスンとともに半導体メモリー市場での体制固めを急ぐ考えだ。 (出所:日本経済新聞)
力は正義なり 変わった論理
中国の孤立化が進んでいないかと心配になる。孤立化したところで、何の得にもならないような気がするが、何か違った論理があるのだろうか。
米国ばかりでなく、オーストラリアとの関係もぎくしゃくし始める。
ブルームバーグによれば、中国の発電所や製鋼所は豪州産石炭の使用を直ちに停止するよう口頭で通達を受けたという。そればかりでなく港湾当局も豪州産石炭を陸揚げしないよう指示されているそうだ。
中国は既に一部の豪州産農産物の輸入停止などに踏み切っており、今回の措置で緊張が一段と激化する可能性がある。石炭輸入の停止措置がいつまで続くのか、既存の長期売買契約にどのように影響し得るかは明瞭でない。 (出所:ブルームバーグ)
迷走
中国は何も目指し、どこに行こうとしているのだろうか。対立する国を増やすことが目的ではなかろう。それとも相手を屈服させたいのだろうか。焦りはないのか。
無理を通せば、道理が引っ込む。
「力は正義なり」とでもいいたいのだろうか。
道理は国ごとで多少違いはあるのかもしれない。それでも、国際社会と仲良くやった方がはるかに得る利益は大きいはずだ。
地球規模の課題である「気候変動」に国際社会と協力して解決しようとの気はないのであろうか。
「非理の前には道理なし」、
そうなっては手遅れになってしまう気がする。
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