新型コロナウィルスで混乱する欧州で、ラグジュアリーブランドの代表でもあるLVMHが「手指消毒剤をノーブランドで生産、無料提供する」という。少しばかり驚いた。
真の高級ブランドには、最高のレベルで顧客のニーズを満たすことが求められる。LVMHは生産する製品を手指消毒剤に切り替えることで、まさにそれを実現しようとしている。(出所:Forbes)
高級ブランドに対する何か偏見みたいなものがあったのかもしれない。毛皮やレバーなどをふんだんに使い、動物福祉にも反し、贅沢なイメージが先行、誤解していたと気づかされた。
御多分に洩れず、LVの財布とか持っていたりするが、お恥ずかしい話、LVMHのことをあまりよく知らない。気になったので、少しばかり調べてみることにした。
モエ・ヘネシー・ルイヴィトン LVMH はいうまでもなく、世界的高級ブランドを展開する仏フランスの老舗だ。
昨年、LVMHは米ティファニーを買収すると発表した。
その発表後、ティファニーを去ったフランチェスコ・トラーパニ氏=ティファニー前取締役のコメントを紹介する記事をWWD Japanが報じた。
同氏はLVMH取締役の経験ももつ人物。LVMHを率いるベルナール・アルノーLVMH CEOのことを高く評価しているという。
「私はLVMHを比類のない素晴らしいパートナーだと考えているが、それはベルナールがいるからだ。同社は長期的な戦略を立て、ゆっくりと時間をかけてブランド価値を築いていくことに長けている」(出所:WWD Japan)
LVMHのサスティナビリティ戦略を、LVMH環境マネジャーのアレクサンドル・カペリ氏のインタビュー記事としてWWD Japanが伝えた。
LVMHは、グループ内でサスティナビリティの目標を掲げて取り組みを活発化させたのが2012年だという。傘下メゾンの環境パフォーマンス改善のために考案したプログラム、LIFEを導入した。
【LIFE=LVMH Initiatives For the Environment】
1. デザインの段階から環境パフォーマンスを考慮すること
2. 戦略的な原材料調達の確保
3. 材料と製品のトレーサビリティーと適合性
4. サプライヤーの環境的・社会的責任
5. 重要なサヴォアフェール(伝承技術)の保護
6. 業務活動が二酸化炭素に与える影響
7. 製造工程における環境面での卓越性
8. 製品寿命と修理可能な製品
9. 顧客からの環境に対する要望に的確に対応する能力
そして、2016年には、「製品」や「サプライチェーン」、「製造拠点目標」、そして「エネルギー消費」に関連する二酸化炭素排出量を13年に比べて 25%削減するという目標を基軸とする「LIFE2020」を策定している。
グループの主要な4つの原材料であるブドウ、レザー、コットン、ウールはすべて自然に関わるものであり、将来も使い続けるならば、まさに今保護していくことが非常に重要になっている。
また、社会のメンバーとして、サステイナビリティーはまさに“標準装備”であり、これに向けて効率的な努力することがビジネス成功の欠かせない条件だ。
また最良のテクノロジーを利用することも重要と考えている。良い技術への初期投資費用はかかるが、エネルギー効率を考えれば結果的に節約になる。最良の技術と最高品質の原料をLVMHが使用しなくて他に誰が使うことができるのか? (出所:WWD Japan)
やはり、何か勘違いをしていたようだ。LVMHは、トレーサビリティの開示のためにブロックチェーン技術も活用し始めている。
LVMHのサスティナビリティの目標は野心的なものではないかもしれないが、その陰で、サヴォアフェール(伝承技術)の保護し、そのために最新のテクノロジーを活用する姿に驚かされた。
ラグジュアリーとは何なのだろうかと問われたトラーパニ氏は、「財力があれば、高価な物を買うのは簡単だ。問題はハイエンドなサービスを受けられるかどうかだろう。ラグジュアリーブランドにとって、サービスは非常に重要なものだ。製品の質を管理することはさほど難しくないが、ブランドにふさわしいレベルのサービスを提供することは難しい。だからこそ、ラグジュアリーブランドは販売員のトレーニングに多大な投資をする」と語ったという(出所:WWD Japan)。
Forbes記者は、LVMHが手指消毒剤を無償提供するのは、消毒剤の不足に対応するためだけではなく、公共の利益のためだといった。サスティナビリティも公共の利益の一部かもしれない。
LVMHにとって、サスティナビリティも顧客へのサービスの一部なのであろう。それは街中に溢れる紛い物ではなく、真贋、本物の顧客への奉仕ということなのであろう。
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