新型コロナで行動変容が起こった。アパレルはその影響をまともに受けたようだ。名門レナウンの破綻はその象徴なのかもしれない。民事再生手続きでスポンサー企業を探し復活を目指していたが、ブランドを売却したことで、レナウンという会社が消えることになるのかもしれない。
海外でも多くのアパレルが破綻した。
そうした現実からすれば、アパレル危機というのは間違ったことではないのであろう。この先、国内アパレルがレナウンのように破綻することはあるのだろうか。
産経新聞によれば、三陽商会の大江伸治社長は、総崩れに近いアパレル業界の現状に危機感をあらわにしているという。
「新型コロナウイルスの感染拡大の影響で大手アパレルメーカーが軒並み苦戦している」、と毎日新聞はいう。
大手のワールドが構造改革の一環として約200人の希望退職者を募集。
オンワードホールディングス(HD)も2021年2月末までに約700の店舗閉鎖を検討している。
外出自粛による販売急減で過剰在庫を抱え、業績が悪化しているためで業界は激震に襲われている。 (出所:毎日新聞)
コロナで変化のスピードが速くなった、ただそれだけのことなのかもしれない。
コロナの早期の収束と元のある世界への回帰を誰もが願っていたが、もう元通りになることはないのだろう。
業績が悪化すれば、足元の経済情勢を分析、必要に応じて構造改革を実施する。ただそれだけのことかもしれない。売れないのだから、ダウンサイジングして、出血を止めるしかない。
大坂の小泉グループが、レナウンから主力5ブランドの譲渡を受けるという。
日刊ゲンダイデジタルによれば、小泉の植本会長は引き継ぐレナウンの約900店舗のうち半分程度を維持し、2年後に売上高で2割増を目指すそうだ。
まともなビジネスを行っていれば、破綻することはなかったということなのだろうか。
ファーストリテイリングの柳井氏は日経ビジネスのインタビューで、「ブランドは存在意義がなければ生き残れない。強いブランド力がない限りだめだ」という。
「消費者は都合のいい方を選んでいる。だから存在意義が欠かせない」。
全産業がボーダーレスになってきている。
お金を使うのに服を買うのか、エアコンを買うのかとなる。だからより魅力的な環境で、いい店で、いいブランドで、いい商品を扱わないと売れなくなる。
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仕事が好きで、自分がやることに対して、社会が結果的によくなる。そういう商品を作って売っていく。そこに意義を見いだす人じゃないといけないよね。 (出所:日経ビジネス)
幸いにも、アパレルについてはベストプラクティスが多数あるように思う。また、多くの提言がなされている。素直に耳を傾け、受け入れることができるかどうかにかかっているのかもしれない。
VOGUE Business は、「ファッションと二酸化炭素排出 咀嚼する時間」という記事を出し、「過剰生産が激しく、販売されるのは60%の衣服だけだ」と、衣服の大量廃棄を示唆する。その上で、「より多くのリサイクル繊維でより少ない衣類を生産することが不可欠です」と提言する。
「重要なのは環境問題」と柳井さんもいう。
「環境問題に関しても、もっと発言し、実行しないといけない」と日経ビジネスのインタビューに答える。
環境問題に熱心に取り組むアウトドアのパタゴニアは、廃棄されたプラスチックの漁網から帽子のつばを作る。
チリのブレオというスタートアップが使い終わったポリエチレンの漁網をリサイクルして作った糸を使っているという。
サーキュラー・エコノミーはトレンドになり、もうあたり前になったのだろうか。
三陽商会もスペインのEcoalfとコラボして、国内で「UPCYCLING THE OCEANS」という活動がスタートさせる。漁網などの廃棄物から衣服を作ることにチャレンジするという。
「8月5日にワールドが発表した構造改革は、改めて大手アパレルが置かれた厳しさを印象づけた」とWWD Japanは指摘する。
ワールドは5年前にも13ブランドの廃止を含め約500店舗閉鎖という荒療治を行った。
その後、収益は回復して2019年3月期まで4期連続の営業増益を達成。
他社よりも早く不採算事業の整理を終わらせ、デジタルやリユース、サブスクリプションなど新規事業への投資を強めていたところだった。 (出所:WWD Japan)
ワールドの鈴木新社長の言葉を WWD Japanは紹介する。
ワールドは時代に合わせて常に挑戦し続ける会社でなくてはならない。
変化の激しい時代は、挑戦しないことが最大のリスクになる。老舗企業が生き抜くため本能なのです。
ただ構造改革を繰り返しているだけなら、疲弊するだけだ。
地球温暖化、気候変動が加速度的に進行したように見える世界。そうした中にあって、衣服の大量廃棄が問題視された。
そして、このコロナ渦、今、何にこだわるのかということだけのかもしれない。
自己本位ということじゃないですか。
「自分のことばっかり考えていたら、周囲の人を不幸にする。それと既得権の上にあぐらをかいていたり、政治に頼ったりするのはだめですよね」、と語るのは柳井氏。
日経ビジネスのインタビューで、「”正しいこと” や ”よりよい社会”についての発信が多くなっています。逆にどういうことが正しくないとお考えですか」と尋ねられたときの言葉だ。
ただ単に利益至上主義に陥ることなく、何かを社会に返していく必要があるというのことなのだろう。自身の存在意義とは、そういうことなのかもしれない。
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