Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

好調テスラと苦境のパナソニック そこから見える新しい企業のカタチ

 

 年末年始を挟み、パナソニックの苦境を伝えるニュースばかりだ。売却する事業が相次ぎ、収益の柱を生み出す戦略が見えないとの指摘が多い。不要な事業を整理し、企業組織を新陳代謝させ、強味を活かし新たな成長戦略のもと事業活動する。それが構造改革であろう。

 メディア各社のニュースは事業売却の話ばかりで、組織内部の様子は見えない。「ダイアモンド」が家電部門内部の状況を伝える。構造改革が進まない理由が見える気がする。

 

津賀社長ら上層部は、歴史的に発言力の強い家電部門の「事業部の縦割り志向」や「人事の硬直性」が、家電の低迷の元凶になっていると不信感を持っているようなのだ。確かに、2020年3月期の家電部門の営業利益率(見通し)は2.8%と低い。

 競合メーカー撤退後の残存者利益にあぐらをかいた。とうの昔に、ライバルは国内メーカーから中国メーカーへ変わっていたのに、開発・生産拠点の統廃合に踏み込んだ構造改革への着手に遅れてしまったのだ。(出所:ダイアモンドオンライン)

 

diamond.jp

 

 ビジネスジャーナルは、車載事業を切り口に構造改革の状況を伝える。構造改革の一丁目一番地、車載電池事業が成長軌道に乗れず、この事業にもメスが入ったと指摘する。「テスラ向け以外の車載電池事業をトヨタに事実上譲渡」、「米EVメーカー、テスラ向けの車載電池事業が軌道に乗らないことが影響している」と報じた。また、テスラの家庭用蓄電池「パワーウォール」のことについても触れる。

 

テスラは20年春に壁に取り付ける家庭用蓄電池「パワーウォール」を日本で発売する。日本での価格は1キロワット時換算で7万円強となり、日本勢の平均とされる18万円前後を大きく下回る。テスラは立ち上がったばかりの日本の家庭向け蓄電池市場で先行するパナソニックやシャープを脅かす「黒船」と恐れられている。

 かくしてパナソニックとテスラの蜜月は終わった。パナソニックが19年5月に発表した19~21年度の新中期戦略では、これまでの成長事業に位置付けていた車載を「再挑戦事業」に格下げした。

 

biz-journal.jp

 

 結果は無常である。パナソニックの決断を逆手に取るように、電気自動車EVが活性化する。トヨタはEV路線を明確にし、テスラは生産を回復させ、2019年の年間目標を達成した。まるで、パナソニックの存在が足枷であったように映ってしまう。

 

 

 

 テスラのイーロン・マスクは「パナソニックのセル供給がモデル3の増産の制約となっている」とツイッターに投稿をしたという。投稿した19年4月には懐疑的な見方もあったかもしれないが、今になれば、やはりそうだったんだとの見方になる。

 ビジネスジャーナルが指摘した「家庭用蓄電池」の価格が何かパナソニックが抱える構造的な問題を表しているように思えてならない。どうして、こんな価格差が生じるだろうか。テスラ7万円 - パナソニック 18万円

 

パナソニック植物工場

(写真:パナソニック植物工場)

 

 パナソニックとの関係悪化がささやかれ始めてからのテスラの動きは機敏だった。バッテリーのマルチソース化を進め、自社生産するとのうわさも流れる。この間に、テスラは多くのことを学んだのかもしれない。さらに、テスラは中国工場を稼働させ、ドイツにも新工場を建設するという。

 パナソニックを見限ったテスラの行動から、パナソニックの弱点が浮き彫りになる。世界一の性能であっても、高い、遅いでは、協力体制が維持できない。

 

 

 そのテスラの強みをForbesは紹介する。

『一度販売した車に対して継続的かつ無料の機能・性能改善を提供した自動車メーカーはこれまでになかった』

 

厳密なテクノロジーの観点から言えば、テスラ車の所有者が最も驚くことは、操作感や性能、見た目ではない。こうした特徴は確かに懐疑的だった人々をも感心させ、最高のユーザーエクスペリエンスを実現する自動車としてのステータスを確立した。しかしそれよりも驚くべきことは、購入から時間のたった車がソフトウエアップグレードを通じて改良され続けるという、従来の自動車では決して得られなかった感覚だ。(出所:Forbes)

 

forbesjapan.com

 

 工業化社会から情報化社会へと変わり、商品やサービスがまったく新たなものになった。アップルやアマゾンがその事例だろう。

高品質、低価格」は日本製品の代名詞であった。パナソニックをはじめ日本企業が工業化社会の世界を席巻した。情報化社会になり、その言葉は米国企業のためにあるようだ。リードする米企業を追うように中国企業が台頭した。

 時代はさらに変遷しAI、IoT社会になった。その時代を先取りするのが、Forbesが紹介するテスラのサービスなのかもしれない。

 パナソニックは変われるのだろうか。また、低廉で、消費者が喜ぶ高品質な商品を提供できるようになれるか。

 パナソニックがまだ松下電器といわれていた頃。松下の社是に「大企業病の戒め」があったと聞く。

 

・自分は良くやっていると自惚れている

・上司は部下を叱らない

・タブーが多い

・決めない・決まらない

・上を向いて仕事をしている

・報告や説明は巧いが自らはやらない

・現状に甘んじて新しいことに挑戦しない

  

 パナソニックは再び輝きを取り戻せるのか。

 テスラは、「ゼロエミッション」という課題解決を掲げ、EV、太陽光発電を進めた。目先の利益ばかりを追求するのではなく、パナソニックも社会課題解決を切り口に、事業を再構築することは出来ないのだろうか。

 

 「参考文書」

www.nikkei.com

japanese.engadget.com

prtimes.jp