鳴り物入りで始まったトヨタのサブスク Kintoが苦戦しているようだ。
「KINTOをモビリティサービスを包含するブランドにする」と説明していたのはKINTO社の小寺信也社長。都市における次世代の交通サービスMaaSへの展開が期待されている。
日本経済新聞がKintoの苦戦状況を伝え、その対策とし、サブスク対象の車種を増やすと報じた。
国内で展開する新車を定額で貸し出すサービス「KINTO」の利用実績も初めて公表した。2月にまず東京で始め、7月に全国展開を始めた。申し込みは11月までに951件にとどまった。小寺社長は「もう少し台数があってもよかった。想像以上に顧客の意識が保有から利用へと変わるのに時間がかかる」と述べた。損益は赤字が続く。(出所:日本経済新聞)
このクルマのサブスクは、なぜ苦戦となっているのだろうか?
日本経済新聞は豊田会長の言葉を紹介する。
豊田章男社長は「モビリティカンパニーへのフルモデルチェンジが使命」と述べ、サービス事業への意欲を示してきた。PwCコンサルティングは次世代モビリティ市場の規模は欧米と中国だけでも30年までに1兆2千億ドルに達し、年20%以上拡大すると予測する。(出所:日本経済新聞)
先の東京モーターショーでもトヨタはモビリティの未来を示すような展示を行っていた。
ヨーロッパの大都市ではすでにMaaSのサービスが始まっているとのニュースをよく目にする。日本ではまだ時期尚早なのだろうか。既得権益を守ろうとするのか岩盤規制が多く、ウーバーのようなライドシェアやキックボードが本格的に始まらない。こうした状況では、MaaSはもちろんのこと、モビリティへの関心が高まらないのは当然の成り行きかと思えてしまう。
Finderは、ヨーロッパのMaaSの状況を、体験レポートで伝え、利便性の高さを強調する。
すでにこうしたサービスに付随するサービス、例えば、前述のモーターショーで見たIBMとフォルクスワーゲンの試みである複数の移動手段を組み合わせて、選択できるプラットフォームなども生まれてきており、利用者としても新しい体験ができます。こうした技術革新やサービス革新がもたらす、新しい生活や体験が豊かなのが、今のベルリンやアムステルダムなのです。(出所:Finder)
グローバル企業のトヨタがこんな日本市場に危惧を抱くのが分かる。このような状況では世界と伍して戦えない。
KMPGはニューヨーク市が進める都市のリ・デザイン事例を紹介する。
ニューヨーク市では、マイカーでの市内乗り入れを規制するとともに、歩行者や自転車にやさしい街づくりを進めています。
このような動きは徐々に全米に広がりつつあり、全米各都市の交通担当官が集まるNACTO(米都市交通担当官協議会)では、マイカーのスペースを減らし、自転車や歩行者などのスペースを増やした新たな道路空間のあり方を提言したGlobal Street Design Guideを2016年に発行しています。(出所:KMPG)
「欧米では、都市単位でゼロ・エミッションを目指す動きが広がりつつあります。先進的な企業や住民にとって、環境にやさしい都市こそが魅力ある都市と受け止められる傾向にあるからです」とKMPGは指摘し、「日本でも都市のリ・デザインの検討に着手し、新たなスマートシティへの取組みを加速すべきではないでしょうか」と提言する。
岩盤規制により、なかなか先行する欧米型のMaaSを立ち上げにくい状態にある。都市をリ・デザインし、モビリティのあり方を考える方がアプローチしやすいような気もするし、トヨタが東京モーターショーで示した未来の都市のイメージに近づいていくのではないであろうか。日本のMaaSを「ナビ・タイム」で終わらすことがあってはならないはずだ。
「参考文書」