Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

ものづくりの心を知る人 アップルCEOティムクック

 

 来日したアップルCEOティムクック氏のインタビュー記事が日本経済新聞で紹介された。英文記事では、クックCEOがセイコーアドバンス社を訪問したことを紹介する。

 クック氏の言葉にサプライヤーを大切にし、ものづくりしようとする姿勢があらわれている。

"The way that we do manufacturing is we look at all countries and look to see what skills are resident in each country, and we pick the best," Cook said, pointing to Seiko Advance. "They're the reason that we're able to put this color on the iPhone. We've worked with them for years and we've grown together. Both parties enjoy working together, we push each other to innovate more."(出所:NIKKEI ASIAN REVIEW)  

 

 このときの模様を東洋経済オンラインが伝える。

「ミッドナイトグリーンは、高い品質とクラフトマンシップによってのみ、実現できた色です。そして、だからこそ、彼らと一緒にものづくりに取り組むことは、これ以上ないほどワクワクするのです

われわれは、ものづくりに取り組む際、コラボレーションの原則を非常に重視します。そして優れた人々が一緒になるとき、お互いの会社の違いを忘れて、ただただ本当に優れた製品を作ることに集中して取り組んでいます。」(出所:東洋経済オンライン)

toyokeizai.net

 

 クック氏がこうして塗料サプライヤーを訪問することに親近感を覚える。

 かつて調達部門を統括してクック氏ならではの行動だろうか、同じ調達を仕事にして人間にはクック氏の真情がよくわかる。

色は大切です。われわれ自身の表現手段で、例えばあなたはこの色のシャツにブラウンのジャケットを合わせているように、人々には自分に合った色のiPhoneを選ぶチャンスを得るべきです。そのため、Face IDやAシリーズチップなどの他のあらゆるテクノロジーで革新を起こしたことと同様に、『色』についても、われわれはイノベーションを起こしていきたいのです」(出所:東洋経済オンライン)

 「たかが色、されど色」色づくりの難しさを理解しての訪問だったのだろうか。

 かつて、シンガポールでPCメーカ向け周辺機器の色づくりに腐心していた頃を思い出す。

アップル社内でサプライヤーのことを「パーツメーカー」と言うと怒られるそうだ。あくまでパートナー、コラボレーションの相手であり、その多くにアップル側から声をかけ、高い品質や新しい技術、実装のアイデアをお互いに出し合う。(出所:東洋経済オンライン)

 こうしたことも、調達のことを知るクック氏あってのことなのだろうか。最先端の技術を保有するサプライヤーを見つけ出し、コラボすることは調達の仕事の醍醐味でもある。 

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 アップルが環境問題に熱心に取り組んでいることも有名だ。2018年には自社で使用する電力をすべて再生可能エネルギーに切り替えている。そればかりでなく、アップルと取引関係にあるサプライヤーに同様なことを求める。

しかし「それでは十分ではない」とクック氏は続ける。アップル製品を製造する工場、パーツを提供するサプライヤー、そして製品を充電する際、ユーザーであるわれわれが使う電力にまでフットプリントを取り、これらも再生可能エネルギーに転換することを目指している。

そこでアップル自身がサプライヤーのエネルギー転換をサポートするファンドを作っておりセイコーアドバンスもこのファンドを利用し、再生可能エネルギーへの転換を図ることになった。(出所:東洋経済オンライン) 

  サプライヤー再生可能エネルギーへの転換を求めることは誰にでもできるが、サプライヤーがそれを実現できるようにファンドを用意することはそうは簡単にはできない。サプライチェーンを詳しく知る人があってのことだろう。

 

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 ジョブズのアップルはあまり好きになれなかったけど、クック氏が率いるアップルには好感が持てる。同じ職業畑を経験しているかもしれない。

 クック氏は、この他にも、AppStoreの「Best of 2015」に選出された「TimeTree」を訪問している。

 

 

TimeTreeのエンジニアの元に出向き、開発の様子や使っている技術について意見を交わすなど、積極的に交流を深めていた。

印象的だったのは、クック氏は自らアプリ開発者の代表やエンジニアに対し、フィードバックを細かく求めていた点だ。(出所:Business Insider)

www.businessinsider.jp

 

 サプライヤーの開発者への配慮も忘れないクック氏。技術の専門家でないにしても、技術に共感し、作り手を大切にしようとする姿勢が窺える。

 

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  クック氏にインタビューした日本経済新聞は、ヘルスケアへの関心の高さを伝える。

ヘルスケア分野にも力を注ぐ。CEOに就任後に投入した初の主力製品、腕時計型端末「アップルウオッチ」は健康管理の機能を備え、医学研究への応用も進む。心電図を把握できるなど「ヘルスケアの民主化を進めている」と説明した。「のちに振り返れば人類へのアップル最大の貢献はヘルスケアになるだろう」と語った。

www.nikkei.com

 

 実際に、アップルウォッチを利用し研究を進める現場にも足を運ぶクック氏。

 

 クック氏がCEOになったとき、アップルの将来を危惧する意見が多かったことを思い出す。ジョブズ氏亡きあと、アップルがここまで成長すると、あの時、誰が想像できたのだろうか。

 とかく、テクノロジーが注目され、その開発者に信奉が集まる。しかし、現実にはクック氏のようにテクノロジーをビジネスとして具現化し、実用化する能力が必要となる。

 テクノロジーで注目されるユニコーンの中には、成長しきれないところも多いように見える。クック氏の態度に学ぶことはできないだろうか。

 

  

 「参考文書」

asia.nikkei.com

forbesjapan.com