NTTが次世代通信構想「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)アイオン 」の最初のサービス「IOWN1.0」を2023年3月に始めると発表しました。その第1弾として光通信技術を活用した「APN(オールフォトニクス・ネットワークサービス)」を提供するそうです。
遅延が200分の1に NTT、次世代通信サービス「IOWN1.0」を23年3月スタート - ITmedia NEWS
既存の光回線に比べて、遅延を200分の1に抑えているといいます。
記事によれば、利用シーンとして、遠隔医療やスマートファクトリー、eスポーツ、データセンター間接続などを想定しているといいます。データセンター間接続では、複数のデータセンターをほぼ遅延なく接続することで1つの拠点を使っているかのような運用もできるそうです。
「IOWN1.0」ではネットワーク機器に導入するそうですが、今後はさらなる大容量化と電力効率の向上を進め、ボード間、チップ間、チップ内の配線などに適用させていくことにしているといいます。
「IOWN構想」とは、低消費エネルギー性に優れた光技術を、Beyond 5G/6G時代のコンピューティング基盤から通信に至るまで活用し、現在の世界の情報通信基盤を根こそぎ変革しようとするものだといいます。
NTTは、iモードの世界展開で失敗した経験から、同じ轍を踏むまいと、「IOWN構想」においては、最初から世界を見据えて動いているといいます。
IOWNは最初から世界視野、死の谷越える3つの条件 | 日経クロステック(xTECH)
手始めに「IOWN Global Forum」を米国に設立し、米インテルや米マイクロソフトに、スウェーデンのエリクソン、米NVIDIA(エヌビディア)など、そうそうたるグローバル企業が参加しているそうです。
NTTグループは、この「IOWN構想」の世界展開に加え、スマホの次のXRデバイスの開発も目指すといいます。発表会で、島田社長は、そう明かしたといいます。
スマートフォン(スマホ)の次のXR(eXtended Reality)デバイスなどを見据えると、特定の高速チップをつくってくれるベンダーが国内にあったほうがありがたい。それが我々がRapidus(ラピダス)に出資した理由だ。(出所:日経クロステック)
その生産初期段階では生産量も少ないことが予想されます。その小さな生産規模でも、次世代半導体の国産化を目指す新会社「ラピダス」であれば、半導体製造を担ってくれるのではないかとの期待があるといいます。
かつて日本には多くの携帯電話機メーカーが存在していましたが、海外市場で敗北し、国内市場にしか売れない端末の製造することを余儀なくされました。結果、グローバルメーカーほど発注量がまとまらず、「半導体製造メーカーから製造のコミットメントを得られなくなった」と、島田社長が会見で指摘したそうです。
NTT島田社長が語る半導体新会社ラピダスに出資した理由、「スマホの次のデバイス」視野 | 日経クロステック(xTECH)
島田社長の思惑通りに進むのでしょうか。「IOWN」も「XRデバイス」も世界スタンダードになるのであれば、御の字で「ラピダス」にとっても吉となり、日本の半導体産業の再興につながっていくのでしょう。
ただ、過去の失敗の経験を活かせば、世界の技術トレンドを作り出すことはできるのでしょうか。
イノベーションなり、新たなトレンドが起きるときには、そこに新鮮さがあり、ポテンシャリティを誰もが理解し、消費者の心を鷲掴みすることで、それが始まりになるのでしょう。ビジネスを展開するにあたって連合を作ったといって、それで消費者が新鮮さを感じることもなければ、ポテンシャルのあるモノとは理解しないのでしょう。
自社の都合でイノベーションは起きません。消費者があって起きるものなのですから。目指す世界のそれぞれの地域に合わせた顧客視点が欠かせないようにも感じます。それが欠けていたのではないでしょうか。
「参考文書」
遠隔手術を支えるロボット操作・同一環境共有をIOWN APNで実証開始~100km以上離れた拠点間を同一手術室のようにする環境を実現~ | ニュースリリース | NTT
オールフォトニクス・ネットワーク、光電融合技術のめざす未来 | NTT技術ジャーナル