日銀の黒田総裁が口を開けば、円安が進むという状況が続いている。円安は輸出企業に有利に働くと再三聞かされるが、そうかといって、未だ物価目標の2%は未達で、まだこの先も厳しい状況が続くという。それゆえ、金融緩和は引き続き必要だという。いつまで経っても、同じ話が繰り返されるばかりで、まるで進展がないが、円安は着実に進み、輸入に頼る産業を疲弊させ、そのしわ寄せが国民生活を襲うが如しである。
ならば、もっと輸出に携わる企業が増えるような構造転換が進むのかと言えば、そうは言い切れそうにない。この機会に乗じる動きがあってもよさそうだが、チャレンジする企業はないのだろうか。
資源や食糧が高騰し、値上げラッシュが続く。そうした中でも企業が値上げを抑制しようとする努力は評価されてもいいのだろうが、それによって実施的な賃下げになったり、雇用を生み出せないのであれば、企業の本分を果たせていないのかもしれない。そうした古い事業構造は淘汰され、新たなものにとって代わっていかなければ、国の活力は低下する一方なのだろう。それが今日の日本ということなのだろう。
日銀ができることは金融政策であって、活力を失った日本には過剰な資金提供が必要とするのも理がないわけではないのだろう。ただその理が正しいか否かはわからないが。
スタートアップ創出元年
政府は2022年を「スタートアップ創出元年」と位置づけ、スタートアップ企業を創出するための5カ年計画をまとめるという。経団連も「スタートアップ庁」の創設を提言したとそうだ。
スタートアップ躍進ビジョン 10X10Xを目指して(経団連)
スタートアップへ投資を呼び込み、日本の「ユニコーン」を増やすことができるかが焦点と日本経済新聞もいう。ユニコーンが増えれば、日本が活性化するのかもしれない。
「ユニコーン」、企業価値が10億ドル(約1250億円)以上の未上場企業のことをいう。世界では1000社を突破したというが、日本には10社にも満たない。その一方で、米国には488社、中国でも170社に及ぶという。クラウド経由でソフトを提供するSaaSやフィンテックなどのIT分野が投資を集めているそうだ。
日本でも、フリーマーケットアプリの「メルカリ」や、名刺データ管理の「Sansan」がスタートアップとして成功した部類に入り、こうした企業は株式を上場していった。
既に成功を収めたスタートアップを模倣したところで、新たなユニコーンは誕生しないのだろう。成功事例を分析し、類似を模索するのはいいのかもしれないが、違う分野、カテゴリーに挑戦しなければならないのだろう。既に注目されている分野では過当競争に巻き込まれてしまうのかもしれない。
ただまったく新しいことに挑戦すると理解されないことが往々にしてある。時として、出資をお願いする人に理解されないこともあるのだろう。
これが課題のような気もする。日本のベンチャー投資家がどれだけの慧眼をもっているのだろうか。今日本で資金を集めるスタートアップは過去に成功事例のある同じような類のものばかりのようなが気がする。それではイノベーションなどないのだろう。単にスモールビジネスに出資しているだけではないのか。
ベンチャー企業とスタートアップ その定義と違いとは? デザイン会社 ビートラックス: ブログ
アメリカで”Startup”と呼ばれるかどうかは、会社の設立年数や規模はあまり関係ない。どんなことをやっているかや、どんなチームで構成されているかを中心に、存在目的や組織の構成、成長スピード、収益方法、目指すゴール等の内容において一部の特殊なタイプのものをスタートアップ (Startup) と呼ぶ。
それ以外の新しい、もしくは小さな会社は単純に中小企業 (スモールビジネス) と認識される。(引用:ビートラックス)
「日本のいわゆるベンチャー企業のそのほとんどは、スタートアップというよりもむしろスモールビジネスに近い」と、ビートラックスはいう。的を得ているような気がする。
スタートアップ支援みたいなビジネスもあるようだが、これほど胡散臭いものはないのかもしれない。政府のスタートアップ支援はどんなものになるのだろう。
そうであっても、日本が活力をとり戻すためには、雨後の筍ようなスタートアップの萌芽がなくてはならないのだろう。まだまだ未解決で手付かずの課題は山ほどあるのではなかろうか。
「参考文書」
ユニコーン、アメリカ488社・中国170社 日本は6社: 日本経済新聞
新興企業の支援 円滑に資金が流れる有効策を : 社説 : 読売新聞オンライン