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ルール化をさらに進める欧州、「クール宅急便」を国際標準化したヤマトが享受したメリット

 

 EU 欧州連合が森林破壊防止のためのデューディリジェンス義務化に関する規則案について審議を進めているといいます。目的は、商品作物用農地の拡大に伴う世界的な森林破壊や森林の劣化を防止することにあるそうです。

EU理事会、森林破壊防止のデューディリジェンス義務化に関する規則案に合意(EU) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ

 デューディリジェンス義務の対象となる商品作物は、パーム油、牛肉、木材、コーヒー、カカオ豆、大豆などで、また、対象産品を原料とする皮革、チョコレート、家具などの派生製品も対象となるといいます。

 

 

 これらの対象品をEU市場に供給する事業者は事前に、その産品が「森林破壊フリー」で、生産国の法令を順守していることを確認するためのデューディリジェンスを実施し、管轄する加盟国当局へ報告することを義務付けるといいます。

 このデューディリジェンスでは、「森林破壊フリー」、森林破壊によって開発された農地で生産されていないことを確認することを求めるそうです。

 こうした広範なサプライチェーンを対象とするルールを設けることで、他地域にも影響が及び、これによって他の国々にも脱炭素を推進することを求めることができるといいます。欧州ならでのルール化がまたひとつ進むようです。

 日本でもこうした国際標準化の動きに負けじと動き出している企業があるようです。

 ヤマト運輸が小口保冷配送サービスの国際規格「ISO 23412:2020」の制定を積極推進し、2020年5月に正式に発行となったといいます。足掛け5年の推進活動だったといいます。

5年かけた国際標準化 ヤマト運輸がクール宅急便を世界に届けた日 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

 始まりは小口保冷配送の「国際クール宅急便」、目的地が海外であっても最短翌日配達できるということでスタートしたといいますが、開始当時は海外に市場はなかったそうです。

 eコマースの伸びを考えれば必ず海外でもニーズが顕在化する、そう判断してのサービス開始だったといいますが、予想外に苦戦を強いられ、これがきっかけになったそうです。

 

 

 国際標準化は、ひとつのインターフェイス機能。サプライチェーンの垂直のつなぎ役にもなるし、それに伴う各ステークホルダーも横軸でつながっています。(出所:Forbes)

 国際標準化、「ISO」の制定で終わりではないといいます。次はこの国際規格をビジネスに活かさなければならないといいます。

 Forbesによれば、ヤマトは2021年、DPDグループとともに小口保冷配送のコンソーシアム「FRESH PASS」を発足させたそうでする。

 ヤマトが「ISO 23412」に基づいて荷物を日本から海外に発送しても、受け取る地域に同じ基準で受け取ってくれないと品質を担保することはできません。

「FRESH PASS」は、送り主と受け手の品質を「ISO 23412」で最低限共通化するプラットフォームだといいます。「ISO 23412」取得事業者に門戸を開き、委託と受託の関係を保ったまま品質を担保するオープンな枠組みであり、「ISO」を錦の御旗として活用した、実に戦略的でしたたかなやり方と記事は指摘します。

 

 

日本発のルールメイキングで世界に新市場が創出され、それが回り回って日本の既存市場をも活性化していく。(出所:Forbes)

 このようなベストプラクティスに倣う企業が日本から次々と誕生すればいいのでしょう。それに加えて、経済政策が不得意で、同盟ばかりにこだわる日本政府にも学習して欲しいやり様なのでしょう。

 

「参考文書」

EUがサプライチェーン新規制 世界に森林破壊防止迫る: 日本経済新聞