「生産性の向上」に「DX」、それに加え「イノベーション」が求められるようになっています。
景気後退の局面に入り、円安も加速しています。この難局を乗り越えるための必須条件のようです。そればかりでなく、従業員の生活を支えるためにも賃上げは欠かせません。
今年に入って一気に円安が進み「安いニッポン」というレッテルを貼られるようになりました。これまでは日本企業の技術力や経営力が評価されていましたが、コロナ渦を契機に、そうした評価が揺らいでいるそうです。
円安は追い風との信仰に懐疑的な目が向けられ、本当にプラスなのか、収益力が低下するのではないかとの見方が投資家の中で広がっているといいます。
現実、日本株は市場で売り越され、海外マネーが流出しているそうです。
JFE柿木氏「海外投資家と面談、薄まった日本への期待感。日本は挑戦心取り戻せ」:日経ビジネス電子版
日経ビジネスの記事をまとめれば、こんな論調でしょうか。少子高齢化、少ない労働力人口など日本の構造問題が根底にあり、それが日本悲観論となって海外に広がっているといいます。
日本が再評価されるには、企業の新たなチャレンジが必要だ。そして収益が生み出せるようになれば、海外投資家も再注目せずにはいられないはずだ。(出所:日経ビジネス)
日本企業の魅力は何かを突き詰めて考え、行動に移すべき時期に差し掛かっていると、記事を執筆したJFEホールディングスの柿木社長は述べています。
さらに「DX デジタルトランスフォーメーションなど最先端のITを取り入れて、製造業の革新力を世界から注目されるようにもう一度高めていく必要がある」といいます。
NTTが「光半導体」に挑戦しているといいます。実用化できれば、スマートフォンを1年間充電しなくてもよくなるそうです。2030年代にも実現できるといいます。
NTTが狙う逆襲 半導体にも光技術、次世代ネットは「死の谷」越えるか: 日本経済新聞
NTTが開発する光電融合技術では、半導体の信号処理を電気ではなく光で行うことで、消費電力が劇的に減るといいます。
今でも通信回線に光ファイバーは使われているが、サーバーやスマホなどの信号処理も光になれば伝送効率が劇的に上がる。消費電力が100分の1に減り、伝送容量は125倍という。(出所:日本経済新聞)
NTTには苦い経験があるといいます。携帯電話向けのネット接続サービス「iモード」をいち早く実用化し、世界を目指したがその実現には至らなかった。狭量とでもいいのでしょうか、独自仕様にこだわるあまり、広がることがなかったといいます。
(光通信基盤)「IOWN」はNTTの研究開発の集大成で、最も世界に近い技術だ。デスバレーを克服できるかにNTT復権がかかる。(出所:日本経済新聞)
こうした新技術の実用化はNTTの復権のみならず、日本の復権ということなのかもしれません。
ただNTTの最先端の研究には陰りがあるといいます。日本経済新聞によれば、論文発表数が減少し、2002年の854本から21年には581本になったといいます。一方、米グーグルは発表数は1000件を超えたそうです。
グーグルは分散処理や知識工学などウェブサービスに関連した研究を軸に、画像処理や人工知能(AI)など時代の変化に機敏に対応している。NTTは光や半導体など通信関連が中心で、研究テーマの変化が乏しい。(出所:日本経済新聞)
1990年代半ばころから、日本の電機において研究所の縮小が相次ぎました。それまでは、潤沢な研究資金があって次々と新しい発見を成し遂げてきましたが、研究所の縮小とともに論文発表数も減るようになったといいます。これが日本の科学技術力の低下が始まりと指摘する声があります。
オープンイノベーションも重要なことなのでしょうが、そればかりでなく潤沢に蓄えた内部留保があるのなら、もう一度基礎研究に力を注いでもいいのかもしれません。所詮、イノベーションは社会実装されて実現するもので、そのネタを自社の基礎研究にもとめていいのではないでしょうか。