Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

必要なデジタル人材は230万人、理由は働き手すべてのデジタルスキル向上のため

 

 政府の「デジタル田園都市国家構想」の基本方針案が明らかになったとJIJI.COMが報じる。デジタル技術を活用して地域活性化を目指す岸田政権の看板政策という。

推進委員、2万人以上確保 「デジタル田園」基本方針案―政府:時事ドットコム

 方針案では、データサイエンティストやエンジニアらを中心とする地方のデジタル化を推進する人材を、2026年度末までに230万人育成することなどを掲げているという。

「デジタルは地方の社会課題を解決するための鍵であり、新しい価値を生み出す源泉」と位置付けた。政府は基本方針を経済財政運営の指針「骨太の方針」と併せて閣議決定する予定。その上で年内をめどに総合戦略を策定する。 (出所:JIJI.COM)

 

 

 一方、「デジタル田園都市国家構想」の人材育成に疑問の声が上がっていると日本経済新聞はいう。国を挙げて230万人のデジタル推進人材を輩出する目標は定義も根拠もはっきりせず、実効性を検証しにくいと指摘する。

デジタル「230万人」の虚実 田園都市構想に浮かぶ懸念: 日本経済新聞

「大胆な仮説に基づいた野心的な数値目標」、エンジニア、データサイエンティストといったデジタル人材230万人の育成について、政府はこう説明しているそうだ。

 日本の津々浦々で働く6800万人にデジタルスキルを波及させる目標を達成するためには、330万人のデジタル人材が必要とする。現在は100万人しかおらず、足りない230万人を2026年度までに育成するのが狙いという。

 ただ、「日本のデジタル政策は構想立案のベースとすべき基本データすら乏しいまま、空回りしてきた。デジタル田園都市にも「いつか来た道」の懸念が浮かぶ」と日経は厳しく評価する。

デジタル人材をめぐる省庁縦割りの政策を寄せ集めても、国民の意識変革は望みにくい。地に足のついた人材育成ビジョンがなければ、デジタル田園都市国家構想そのものが「大胆な仮説」のまま消えてしまいかねない。(出所:日本経済新聞

 大盤振る舞いのストレッチ目標では、目的とする企業変革につながらず、知の変革も暮らしの変革にもつながらないのではなろうか。目標は到達できるレベルに設定しなければ、活動自体が見せかけで終わるのが関の山だ。

「真のDXの実現には企業の変革力が不可欠」と説く、淺羽茂・早稲田大学教授の提言を日本経済新聞は伝える。

事業・戦略の変革力こそ重要 無形資産投資促進の条件: 日本経済新聞

DXの本質は技術の導入ではなく、それによりいかに既存業務を変革するか、新しい価値を生み出すかだ。

しかし何を変えるか創り出すかを考えずに、はやりのDXに飛びついている日本企業が少なくない。真のDXを実現して競争力を向上させるには、企業変革力こそが必要なのだ。(出所:日本経済新聞

組織メンバーの抵抗を緩和して変革を実行するには、従来の価値の継続、強みの確認が必要」と淺羽教授は指摘し、異なるメンバーが既存の強みを確認することで新しい視点が得られ、強みを再評価できるという。

 企業変革力こそ、日本企業が高めるべき組織能力という無形資産だろうという。

名和高司・一橋大客員教授は著書「パーパス経営」のなかで、永守重信日本電産会長の「井戸掘り経営」を、「現業を深耕することで初めて、その企業に有益な新しい機会や発想が湯水のように湧き出す」と取り上げている。そして「自社が持つ本質的な強みを『純化』したうえで、それを別の場(市場)や価値(商品)にずらしていくこと」が肝要だと説いている。(出所:日本経済新聞

 

 

 しかし、企業でのDXへの関心は高まる一方で、IT人材の不足が強まっているという。日本経済新聞によると、求職者数に対する求人数の割合である求人倍率は約10倍に急上昇しているそうだ。

IT人材難、低賃金が拍車 求人倍率10倍: 日本経済新聞

 ただ、IT職種の賃金が相対的に低いことが人材を集めにくくし、DX推進の障害になりかねないという。

旺盛な需要に人材供給が追いつかない理由の一つは、日本のIT職種の賃金が相対的に低く、働き手にとって魅力的でないからだ。dodaによれば、21年のIT職種の平均年収は438万円と19年比4%減った。ITスキルを持っていても十分に評価されないため人材が流入しにくく、賃金の押し上げ効果が弱い。(出所:日本経済新聞

「ジョブ型雇用の浸透を急ぎ賃金に市場メカニズムが働くようにしなければ、人材不足は解消されず、日本のDXの遅れが一段と深刻になりかねない」と日本経済新聞はいう。

 ほんとうにそうなのだろうか。

 前出淺羽教授は、既に手を打ち始めている日本企業もあるという。ジョブ型雇用による人材流動化、オープンイノベーション、両利きの経営などに着手しているが、そこでは、既存の仕組みの変革や新規の事業創出など「新しく変える」ことに力点が置かれ、大事なことが看過されているいう。

 

 

 目的を再確認し、課題を明らかにし、その改善を継続する。その泥臭い改善の積み重ねの先に変革があるのではなかろうか。そして、その標準化、システム化においてデジタルを取り入れれば、DXとならないだろうか。

 バックキャスト手法等どんなアプローチをとろうが、データ分析は必要だし、問題解決にはデジタル技術が必要になったりしないだろうか。どんな時も必要な人材は適宜育成するしかない場合もあるのだろう。それはIT人材も同様ではなかろうか。

 

「参考文書」

DXをIT部門や変革推進者に丸投げ、そんな経営者は退場すべきだ | 日経クロステック(xTECH)

事業計画の達成はなぜ大切なのか|福島良典 | LayerX

いまさら勉強する人工知能|深津 貴之 (fladdict)|note

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