ロシアが始めた戦争が2か月目に入った。早く収束するのではないかと期待したが、そうはならなかった。戦争なんて起きるはずがない、仮に起きても長続きするはずがないと信じていた。平和に慣れ過ぎていたせいなのかもしれない。そうした信じていたものがもろくも壊れた。
過去2度の大戦の反省を活かして、今日の秩序が出来上がったと教えられてきた。東西冷戦が終了し、いくつかの相違はあっても、根源なところでは価値観を共有できているのではないかと、盲目的にそれを信じ、それが永遠に続くことも信じていた。
2001年に米国で同時多発テロが起き、その後今日に至るまで、「テロとの戦い」ということで戦争があったが、それには世界共通の大義があり、また戦争が地域限定であったことから、それとなく許容していた。しかし、それは間違っていたのだろう。絶対に戦争はあってはならないとしない限り、戦争は無くなることはないのだろう。
テロとの戦いに終わりがないように、ロシアによる戦争も長く続くことになるのだろうか。大国ロシアが起こした戦争の影響は計り知れない。鉄のカーテンによって閉ざされ、再び冷戦時代のような経済封鎖が長くびくことになるのだろうか。
遠くなる欧州
JAL日本航空が、成田-パリ線の貨物便3月27日~4月7日の間、米シアトル経由のルートで運航するという。通常ロシア上空を飛行しているが、ウクライナ情勢を受けロシア上空の飛行が無保険となるリスクなどが高まっている影響もあるという。
JAL、パリ貨物便シアトル経由に 燃料抑え輸送量確保: 日本経済新聞
シアトルで途中給油することで燃料の搭載量を抑え、貨物の輸送容量を確保するという。
4日から羽田―ロンドン線は米アラスカ上空を飛行する「北回り」の航路で旅客と貨物を運んでいたが、飛行時間が延びる分、必要な燃料が増え、輸送容量が大幅に落ちていた。(出所:日本経済新聞)
ただ、この影響で所要時間が大幅に増えるという。冷戦時代に逆戻りしているようだ。
「通商、自由貿易は人々の距離を縮めるものである」とした価値観が崩れていくのだろうか。
グローバル時代の終焉なのか
世界最大の資産運用会社ブラックロックのラリー・フィンクCEOが、ロシアのウクライナ侵攻が「グローバリゼーションに終止符を打った」と述べたという。
ブラックロックCEO、侵攻で「グローバル化に終止符」: 日本経済新聞
「(各国は)ロシアとの経済戦争に突入した」と強調。米欧による制裁や民間企業の事業撤退などで「ロシアは国際資本市場から遮断された」と述べた。(出所:日本経済新聞)
企業がロシア依存を見直すなかで恩恵を受けるのは「メキシコやブラジル、米国、東南アジアの製造拠点だろう」との見方を示したそうだ。
また、エネルギー分野における脱ロシアで、カーボンニュートラルへの転換は一時的な停滞が避けられないと指摘し、機関投資家としてESGの改善に向けた取り組みが難航する可能性を示唆したそうだ。
「バイデン大統領やジョンソン英首相、ドイツのショルツ首相、フランスのマクロン大統領らは、歴史が彼らをどう審判するか真剣に考えるべき」と、ブルームバーグは指摘し、「新世界秩序」を構築するのは多くの時間と労力を要する仕事という。
【コラム】西側諸国はグローバル化を救え-編集主幹ミクルスウェイト - Bloomberg
それは世界が分断され、怪物のような独裁者が権力を握るのを座視した第1次世界大戦後の政治家らになぞらえたいのか、それとも一段と安定し相互の結びつきを強めた世界を築いた第2次世界大戦後の指導者と肩を並べたいかの問いだ。(出所:ブルームバーグ)
世界の指導者らがこの機に臨んで何かもっと良いものを生み出さなければならないという。
世界が根本的に変わっていくことになるのだろうか。世界が再び共有できる価値観を見出せるのか、それとも、鉄カーテンで遮断された世界を作ってしまうのだろうか。グローバル企業たちがどう動いていくことになるのか、目を離すことができない。