Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

日本はほんとうに貧しくなっていくだけなのか

 

「新しい資本主義」、岸田首相が提唱しているその概念に影響を与えたのが「公益資本主義」と言われる。

 これを提唱するのは、首相に経済政策を助言するアライアンス・フォーラム財団代表理事原丈人氏という。

分配の次は財政出動強化、首相に助言の原氏が分析-新しい資本主義 - Bloomberg

「日本は貧しくなっているのに、世界でも豊かな国だと錯覚している人が多かった」。

「成長と分配の好循環」、この重要性を指摘したのは2代目の首相当時のこと。原氏は当時のことを振り返り、そのときは「本当に脚光を浴びなかった」という。

「日本は貧しくなっている」、 そういわれることを度々耳にするようになった。客観データを示されても、そうあって欲しくないと思いたい。しかし、そういうことなのかもしれない。

 

 

イノベーション

 イノベーションを促進し、GAFAに匹敵するような企業を日本でも育てると、息巻いて時期もあったが、どう見ても到底実現できそうにない。それでもなお、イノベーションは必要と今も叫ばれ、成長軌道への回帰が求められている。

グーグル日本元社長「日本からGAFAは生まれない」 | 読書 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

 しかし、ここまでに成長してきた日本のIT企業をみれば、イノベーションに翳りが見え、GAFAに近づくことが夢のまた夢となっているのだろう。その黎明期にはイノベーションの萌芽が感じ、何かやってくれるかもしれないと期待したものだったが。

日本では、政治が介入して各携帯会社に値下げ合戦を強要しました。国内で携帯料金の値下げによるユーザー獲得合戦をやったところで、携帯大手4社で均等割りしてせいぜい3000万ユーザーです。

地球上の79億人を全員インターネットにつなげようとしているイーロン・マスクジェフ・ベゾスのスケール感とは比べようもありません。(出所:東洋経済オンライン)

翳りゆくエコシステム

 楽天もそんな企業のひとつだった。その楽天が変調し始めているのだろうか。

楽天グループでポイントに関するサービスの低下が相次いでいる」と日本経済新聞が指摘する。

楽天、ポイント付与厳しく 他社への変更も選択肢に: 日本経済新聞

 2021年6月以降、楽天カードで一部の電気・ガス・水道料金や税金の支払時のポイント還元が100円につき1ポイント(1%相当)から500円につき1ポイント(0.2%相当)に下がりました。(出所:日本経済新聞

 そればかりでなく、22年4月には楽天市場などでのポイント付与が税込み価格から税抜き価格に変更されるという。

 さらに楽天証券でも変更があるそうだ。これまでは月末時点の投資信託保有残高に応じてポイントを獲得できたというが、22年4月以降は月末時点の残高が初めて一定額に到達したときにポイントが付与され、毎月のポイント付与から還元率は大きく低下するという。

 

 

 別の記事では、その理由を投資信託の運用会社から得る手数料が薄利となり、消耗戦となってきたためだという。

楽天、投信「消耗戦」を転換: 日本経済新聞

 楽天証券はポイントを武器に若年層の積み立て投資をけん引し、クレジットカードで定期的に投信を買い付け、残高にもポイントを付与する仕組みが支持されたという。

楽天証券が見直しに動いたのは、ポイント付与などに伴う販促費用がふくらんでいるためだ。21年4~9月期の売上高営業利益率は14%と、18年4~9月期(35%)の半分以下にまで低下した。(出所:日本経済新聞

 背景には投信業界の事情があるそうだ。投資家から得る運用管理費用(信託報酬)は、投信の販売窓口である証券会社、資産を管理する信託銀行とで分配するという。ただ、人気のインデックス投信では、運用会社は中身で差別化ができず、価格競争が激化している。

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 投信の運用残高は21年に164兆円と過去最高を更新したが、報酬が目減りしており運用会社の実入りは横ばいが続いているそうだ。ある運用会社の幹部は「このままでは勝者なき消耗戦に陥る」と打ち明け、証券各社は投信などの販売手数料に依存した収益モデルからの転換を目指しているという。

 楽天エコシステム(経済圏)の限界ということであろうか。ポイント原資には限りがあるのだろう。得意のITで何かの生産性が向上し、原資の枠が拡大しない限り、厳しいように感じてしまう。

 

 

 前出 原氏は、岸田首相とは「物をつくり、サービスし、日本人が喜んで働き、豊かになれるような制度設計」について考えてきたという。

 人に向き不向きがあるように国もまた同様なのではないだろうか。デジタルによる生産性の改善は必要かもしれないが、首相の指摘も一理あるのかもしれない。IT、デジタルは絶対不可避なものであろうが、そればかりを追い求めていてもイノベーションは期待できそうにない。発想を変えることが求められていないだろうか。