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【脱炭素と海洋エネルギー】なぜ川崎汽船は潮流発電に参入するのだろうか

 

 海運会社までが海外の潮流発電事業に参入するようになっている。

 KLine 川崎汽船によると、中部電力とともに、アイルランド再生可能エネルギー開発企業である DP Energy と、カナダのノバスコシア州におけるイシュカ・タパ潮流発電事業について共同開発契約を締結したという。

 世界的な脱炭素の流れが、企業の背中を押しているのだろうか。 

カナダにおける潮流発電事業に係る共同開発契約の締結について - ニュース|中部電力

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(画像:中部電力

 潮流発電がおこなわれるカナダ ファンディ湾は干満差世界一と言われている地点の一つであり、その干満差は最大約16mに達するという。

 四方が海に囲まれた日本でも、こうした発電所が建設されてよさそうだが、進まない理由があるのだろうか。

 

 

 長崎県五島市 奈留島沖の海域「奈留瀬戸」で九州電力が、「潮流発電」の実証実験を行っているという。

原発2基分の潜在性 「潮流発電」を再生エネの一翼に、長崎・五島で実証実験 - SankeiBiz(サンケイビズ):自分を磨く経済情報サイト

 九州電力のグループ会社である九電みらいエナジーが、商用潮流発電事業を世界初で実現した英国の潮流発電事業者SIMEC ATLANTIS ENERGY(SAE社)の発電機を使用し、国内初の500kW規模の潮流発電になるという。500kWあれば、一般家庭約300世帯の消費電力を賄えるそうだ。

 SankeiBizによれば、日本近海には潮流の速い海域が多くあり、その潜在性は約2ギガワット、原子力発電所2基分に相当するとの試算もあるそうだ。

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 IHIが、鹿児島県沖の黒潮で水中浮遊式の海流発電システムの実証実験を2019年から1年以上にわたって実施している。

IHI、海流発電1年以上実験、21年実用化めざす: 日本経済新聞

 日本経済新聞によれば、太陽光発電などよりも発電効率の良い新たな再生エネルギー源として、離島向けなどに2021年度にも実用化するという。実用化のめどはたったのだろうか。

 30年度には100基程度を使う発電所として一般家庭3千世帯分にあたる年200メガワット程度の単位で事業化したい考え。今回の実証機は1基あたり10億円。発電コストは大規模の場合1キロワット時あたり約20円になるとみている。 (出所:日本経済新聞

 NEDO黒潮がもつエネルギーの潜在性を約200ギガワットと試算しているそうだ。常に流れが強い海流向けの水中浮遊式ではIHIが先行し、潮の満ち引きである潮流を使って海底に設置する着床式で先行する英国などと、今後競合になる可能性もあると日本経済新聞は指摘する。

 

 

 日本は周囲を全て海に囲まれ、海洋を利用することに関しては世界の国々よりも有利な条件がそろっている。IHI以外の国内メーカも海洋エネルギーをもっと利用すべきではなかろうか。川崎汽船が潮流発電に参入しようとするのは、そういう背景もあるのだろうか。

 今後活用されるべきエネルギーとして、水素に注目が集まる。みなで競争し、技術開発を進めることは必要なことなのだろう。ただそれだけに頼ることがあってはならないはずだ。エネルギーはもっと多様に、そして、できるのであれば、地産地消できるようすべきではなかろうか。国内メーカはそのための技術開発を地道に続けるべきなのだろう。国内で利用できるはずのエネルギーをムダにすることなく、有効活用すれば、エネルギーの安全保障も向上しないだろうか。