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経済に影響が出始めた中国の規制強化、それでもさらに規制する理由

 

 中国で進む規制強化に色々な見解が示されている。

 学習塾が規制の対象となり、現実に閉鎖する塾が増えている。また、それにとどまらずあらゆる学習機関が対象となり、人員整理で大量の失業者を生み出すことになるとの情報もあるようだ。利用者への授業料返金の義務が生じているが、その資金確保もままにならないとの報道もある。

 日テレニュースは親の教育費の負担を減らし、少子化を食い止める狙いがあると解説する。それは表向きな説明ということではなかろうか。

 

「こうした動きを総合すると、習近平主席の直前2人の前任者の下で存在した社会契約――共産党の政治独占を黙認するのと引き換えに個人の自由を拡大してきた――に変化が生じたことを表している」とウォールストリートジャーナルはいい、前の時代には行き過ぎだったと考える資本主義化を巻き戻す狙いがあるという。

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 ブルームバーグによれば、習主席が提唱する「共同富裕」の取り組みに、決算報告の中で言及する上場企業が増えているそうだ。

 民間セクターは格差是正に向けた指導部の動きに足並みをそろえようと努めているという。

 まだ、4000余りの届け出の2%弱を占めるにすぎないが、中国の保険最大手の中国平安保険(集団)やフードデリバリーの美団などが含まれるという。

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習主席による格差是正の取り組みは本土経済に衝撃を与え、相場の急落を招く一方、国内富裕層の相次ぐ寄付表明のきっかけにもなった

共産党総書記を兼ねる習氏が主宰した先月30日の会議は、改革が進められる中で「党の指導に従うよう各企業に促す」ことを当局者にはっきり求めた。(出所:ブルームバーグ

 

 規制対象となる前のテンセントは好調だったようだ。4~6月期は大幅な増収増益を達成し、純利益でも前年同期の13%増になったという。しかし、その先にはいばらの道が待っているのかもしれない。

 (オンライン広告の)大口顧客だった「K12(幼稚園児から高校生)」向けのオンライン教育サービスの広告出稿が(政府の教育改革政策の影響を受けて)低迷しており、今後はその影響が避けられない状況だ。 (出所:東洋経済オンライン)

toyokeizai.net

 東洋経済オンラインによれば、テンセントのCSOは「ポップアップ広告に対する規制なども影響し、7~9月期のオンライン広告事業の成長率は鈍化するという見通しを示し、アナリストたちは、中国政府の個人情報保護規制の厳格化やユーザーデータの使用制限が、テンセントの広告事業に与える影響にも注目しているという。

 テンセントの総裁は、「ユーザーデータの使用とプライバシーの保護には慎重に対応しており、(業績への)影響は比較的小さい」と述べたという。

 法令遵守の姿勢ということなのだろう。業績に影響があっても当局の規制には従わざるを得ない。その影響を最小化するのが仕事になったということだけなのだろう。

 

 当局の規制強化のきっかけのひとつでもあった金融会社アント・グループが当局の命令に従い事業再編を進めるという。

 ロイターによれば、中国の政府系企業が、アント・グループの主要企業に大規模な出資を行い、個人信用調査会社を共同で設立する予定という。

10億人を超える利用者を抱えるアントのデータの宝庫としての支配力を弱めるとともに、株式上場の計画を復活させるのが狙い。

中国の規制当局は昨年11月、アントの上場を阻止していた。関係者によると、今回の会社設立と所有形態は、規制当局によるアントへの抜本的な事業再編命令を受けた措置の一つとなる。 (出所:ロイター)

jp.reuters.com

「新会社設立の計画は、これまで規制が緩やかだった業界に対して、政府がコントロールを強めた成果を示すことになる」とロイターは解説する。アントのデータ事業運営を統括し、規制面で監視しやすくなるそうだ。

 多少経済が減速しようが、なりふり構わずに変革を進めているだけのことなのだろうか。どこかに当局の強かさが隠れていないだろうか。

「行き過ぎだった資本主義化」という言葉が気になる。

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 中国が求めていることが、何も中国だけに限ったことではないようにも感じる。たとえば格差社会、それは他の国でもみることができる。資本主義の行き過ぎが原因といえないでもない。

 世界の多くの人がその解消を望んでいるのかもしれない。まさか中国版SDGsということでもなかろう。

 こうした動きは何を意味するのだろうか。