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【実質ゼロ】二酸化炭素循環の実用化と可能性 ~デンソーでプラントの実証始まる

 

 2050年のカーボンニュートラルの達成を国が発表すると、企業が一斉に脱炭素技術を競うにようになる。極めて単純な構図だが、それで気候変動の緩和に役立ち、そこから新たな産業が生まれれば、それはそれでいいことなのだろう。

 

 

 デンソーが、工場から排出される二酸化炭素(CO2)回収して循環利用する実証施設「CO2循環プラント」を安城製作の電動開発センター内に建設し、実証実験を開始していると発表した。

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(写真:デンソー

 意外に早く実用化されたことに驚くと同時に、今後の展開と課題が気になる。

 デンソーによれば、「CO2循環プラント」は主に工場で発生するCO2を回収し、エネルギー源や他の材料に循環利用することを想定した設備だという。

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(画像:デンソー

 今回の設備は、ガスを使用する機器の排気から回収したCO2と、再生可能エネルギー電力を用いて生成した水素から、メタンを合成してエネルギー源として再利用するプロセスを実証しているという。

CO2回収・循環技術の開発は、すでに世の中で、実証レベルで行われています。ただ、対象となっているのは火力発電所や製鉄所などの、CO2濃度の高い排ガスを排出している大規模なプラントばかりです。

なぜなら、現状の技術ではCO2回収効率が悪いため、CO2濃度の高い排ガスを対象にせざるを得ないのです。一般的な製造業の生産設備から排出される、比較的CO2濃度の低い排ガスから、効率よくCO2を回収できるコンパクトなサイズのソリューションは、まだ世の中に存在していません。 (出所:デンソー) 

www.denso.com

 そんな背景がある中、今回のプラントは構想スタートからわずか約20カ月という短期間で完成したという。

 しかし、製造業の現場で「CO2循環プラント」を実用化させていくには、大きな課題が2つあるとデンソーはいう。

 ひとつは『プラントの小型化』、そして、もうひとつは『エネルギー効率をいかによくするか』という点だという。

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(写真:デンソー

実用化を目指すならば、『現状の生産設備に後付けで導入可能なサイズになるまで、プラントを小さくすること』が重要なのです。(中略)

いかに少ないエネルギーでCO2を回収し、メタンガスを合成するか

エネルギー効率はコストにもダイレクトに影響してくるので、CO2循環のシステムを広く普及させるためには、『エネルギー効率を上げて運用コストを下げ、採算が取れるようにすること』が何よりも重要な課題です。 (出所:デンソー

 写真を見る限り、小型化できているかと思えば、さらに小さなサイズにすることを目指しているという。

 プラントがさらに小型化でき、追加の限界コストをミニマイズでき、今使用している化石燃料と同程度までにコストが低減できれば、CO2もまた天然資源と同様に無償「タダ」の資源となるということであろうか。

 こうしてできる小型化された「CO2循環プラント」が各工場に設置されれば、新たな分散型のエネルギー源にもなって、大規模なプラントを広大な土地に建設し、スケールメリットを活かしそうとする従来の方法が陳腐なものになっていくのかもしれない。

 発想の転換が求められているのだろう。

 

 

 温室効果ガスの排出削減の取り組みで遅れてきた海運業界の中で、商船三井が2050年に温室効果ガス排出量を実質ゼロとする目標を打ち出したという。

www.bloomberg.co.jp

 ブルームバーグによれば、商船三井の橋本社長は、海運業界における実質ゼロの達成は「極めてハードルが高い」といい、長距離の海上輸送を担う大型船をCO2を排出しない水素などの燃料だけで運行するのは「技術的にも経済的にも現時点では相当難しい」という見方を示し、「メタネーション」技術が「現実的な回答」ではないかと期待を示しているという。ただ、実用化の課題にコスト低減を挙げる。

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 デンソーは、2035年カーボンニュートラル達成を目標に技術開発を進める。もう少し早く実用化されるような気もする。

 こうした技術が確立され、分散化社会になれば、もしかしたら経済しくみにも変化が起きるのかもしれない。