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【テクノロジーの憂鬱】アリババの巨額罰金にみる強欲と倫理

 

 中国アリババが独占禁止法違反で、当局から182億元(約3050億円)の巨額な罰金を科された。

 今になっての摘発には何か理由があったのだろうか。見過ごすことができない小さな小さな火の粉があったのだろうか。気になることだが、それよりはこの措置による影響の方が気になる。

 TechCrunchによれば、「私たちは誠意をもってこの刑罰を受け入れ、私たちの決意を確実に遵守します。社会に対する責任を果たすために、法に則り誠実に行動し、コンプライアンス体制を強化し、イノベーションによる成長を目指します」と、アリババは声明を出したという。ずいぶん品行方正な言い様である。

jp.techcrunch.com

「政府の健全な規制や尽力がなければ当社の成長はなかった。そして、当社顧客層の全てによる批評と寛容さ、支持は、当社の発展に極めて重要」との公開書簡をアリババが公表し、「感謝と敬意でいっぱいだ」と声明を出したとブルームバーグが伝える。

 

 

 「中国テクノロジー大手の「黄金時代は終焉」-起業家に究極の悪夢か」とブルームバーグは別の記事でそう指摘する。

 こうした措置の意味合いが完全に判明するのにはまだしばらくかかるだろうが、1つ確かなことがある。

中国で生まれた大手テクノロジー企業の輝ける日々は終わったということだ。 (出所:ブルームバーグ

www.bloomberg.co.jp

 ブルームバーグは複数の人に取材し反応を伝える。それによれば、まだ標的になっていない企業でも、事業を制約のある新たな環境に適応させ、拡大戦略をトーンダウンしていくとの意見があり、こうした企業の発展は厳しい政府の管理下に置かれる公算が大きいとの見方もあるという。そして、「近くそうなる」と分析しているという。

「誰もが規制当局の監視下にあり、それは実のところ各社に対応を促す。当局に命じられた事業再編に従わなければならなくなるより、率先して自ら是正に取り組む方がましだ。」 (出所:ブルームバーグ

www.bloomberg.co.jp

 ブルームバーグによれば、アリババの他、テンセント・ホールディングス(騰訊)、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の北京字節跳動科技(バイトダンス)を含む国内のネット関連大手34社が当局に呼び出され、「法律のレッドラインに触れてはならない」と告げられたという。

 

 「テクノロジー企業が互いの間に築いてきた厚い壁も崩れ始めた」とTechCrunchはいう。

 その例として、WeChatの決済手段を上げ、それがAlibabaのオンライン市場には存在しなかったというが、WeChatを搭載したAlibabaのミニアプリが登場するようになれば、長い対立の前例を破ることになることになるかもしれないという。 

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「テック企業の楽な時代は終わった」という昨年年初のTechCrunchの記事を思い出す。

 ソフトバンク騒乱後のシリコンバレー全体のムードが「強欲」から「恐怖の方」へ変わり、投資家は責任ある資金の使い方を見つけるのに少々苦労している可能性はあると指摘していた。とはいえ、まだ楽観論が支配し、「成長を第1に、収益を大差の第2に、キャッシュフローを第3置いて、利益はおそらくさまざまな要因に応じていずれ手に入るものと考えている」という。ただ「テクノロジーの触れたものは直ちに金に変わるという、かつて蔓延していた感覚はほぼ消え去っている」と伝えていた。

 記事は「One Medical」という会社を事例に、カスタムソフトウェアを使っている、そういう会社はテック企業のように装いテックの後光をまとっているが、おそろしく説得力がないという。

jp.techcrunch.com

 中国での出来事も、過熱し過ぎた強欲に当局が水を差したのだろうか。

 国内ではデジタル化花盛りのようだ。何か影響はないのだろうか。