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【中国のオンライン規制と下落する銘柄】なぜオンライン教育とオンラインゲームが標的になるのか 

 

 中国の規制強化の報道が絶えない。今度は人民日報が、「発展を促進しながら規制監督を堅持する」という論評を1面に掲載したという。一連の規制強化が外国人投資家にとってマイナスになるとの懸念を緩和しようとする狙いといわれる。

「対外開放は中国の基本的な国家政策であり、どんなときであれ揺らぐことはない」

習指導部の規制強化、開放政策を逸脱させず-人民日報が1面に論評 - Bloomberg

さらに「非公有の経済セクターの発展を奨励・支援・指導するという原則と方針は変わっていない!」とし、政府は外国人投資家の権利を保護すると説明した。(出所:ブルームバーグ

 規制措置の目的は「公正な競争と消費者の権利をよりよく保護する市場環境の形成促進」であり、「質の高い発展を促す」道を切り開くことだという説明しているそうだ。

 

 

規制強まるオンライン教育

 その一方で、過熱していたオンライン教育「学習塾」への規制が強まっている。

 ブルームバーグによれば、こうした企業は年内に、非営利の組織としての登録を完了することが義務付けられ、正式登録するまで新たな学生の受け入れや料金の徴収をしてはならないと命じられたという。

中国、学習塾の料金徴収を凍結-年内の非営利登録を義務化 - Bloomberg

学習支援会社が義務教育の教科を教えることで利益を出すことを中国政府が禁じた7月以降、オンライン学習塾への規制強化が続いている。今月6日には地方政府がこうした学習塾の料金を定めるべきだとの方針が示された。 (出所:ブルームバーグ

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「答えが分からなくて行き詰まったとき、すぐに解答が見つかるから効率的に学べる」.....(日本経済新聞

 昨年後半にかけて、教育とデジタル技術を組み合わせた「オンライン教育」関連のスタートアップが急成長、相次ぐ新規参入で競争が過熱していた。

 その背景にあったのは、コロナ禍での「利便性」だったという。

 36krJapanによれば、中国政府教育部は、学校が児童生徒に夜遅くまで課題を与える現在のやり方をよく思っておらず、小中高の勉強負担を減らし、質の高い教育に転換する「減負(負担減少)」を目指していたという。

36kr.jp

例えば今年5月に教育部は、必要以上のことを教えない、週末に課題を与えすぎないといったことを通知しているほか、11月には小中高までは負担を減らし大学生は負担を増加するという意見が出ている。 (出所:36krJapan)

 当局から発せられた警告を自分たちの都合の良いように解釈した結果、規制の連鎖を呼び込んだともいえるのではなかろうか。

 

 

アリババ(阿里巴巴)やテンセント(騰訊)はこれまで企業に投資したり、新たに事業部を作って人気の業界に参入している。

テンセントは自身で教育サービスを展開するほか、「猿補導」をはじめとした企業に投資を行い、対するアリババも教育系起業数社に投資を行っている。VIPKIDはアリババとテンセントの両方から投資を受けている。

今後もアリババ、テンセント、バイトダンスといった中国のインターネット業界を動かすプレーヤーが注目の教育系企業に投資をしていくのではないだろうか。(出所:36krJapan)

 規制される前、36krJapanはこう指摘をしていた。

「これまで蓄積した生徒の学習記録のビッグデータやAIから各生徒に合わせた最適な問題集やコンテンツを提供できるかどうかというのが値段以外の競争要素で、加えて「新東方」はオンラインサービスに加え、オフラインでも利用できる中国全土に展開されるリアル教室の豊富さと教師の質の高さが強みとなる」と、オンライン教育の有用性と強みを解説したが、結局は当局の思惑とは乖離していたのだろう。

 

 

 この業界に熱心だったテンセントのゲーム業界にも指導が始まったようだ。

ゲーム業界の監督強化

 中国当局はテンセントなどのゲーム会社を呼び出し、今後の監督強化について伝えたという。

 ブルームバーグによれば、当局が監督強化と違法行為の検査を開始する計画をゲーム会社側に説明したそうだ。また、若者のゲーム依存に歯止めをかけるため、当局による新たなオンラインゲームの承認を抑制するとの報道もある。

中国、ゲーム業界の監督強化へ-テンセントなどを呼び出し伝える - Bloomberg

当局はゲーム会社に新規定を実施し、未成年者が過度にゲームに熱中することを防ぐため利益偏重をやめるよう命じたほか、「わいせつおよび暴力的なコンテンツ」を削除し、「拝金主義や優柔不断といった不健全な傾向」を回避するよう求めたという。

新華社は「ゲーム会社およびプラットフォームに対し当局はゲームコンテンツの検証を強化するよう命じた」とも報道。「プラットフォームは過度の市場集中、さらには業界内の独占を阻止するため、不当競争に抵抗しなければならない」とも伝えた。(出所:ブルームバーグ

 こうした当局の行動が報じられれば、株式市場は即座に反応する。8日の米株式市場では、テンセントなど多くの中国株が売られたという。

 株式市場が当局の思惑通りにコトが進むことはないのだろうが、今はまだテックの行き過ぎた行為を規制強化することに重点がおかれるのだろうか。

 中国以外の国々で、こうしたテック企業の行き過ぎた行為はないのだろうか。順調と思えるときほど、慎重さが求められているのかもしれない。独占行為はどの国でも禁止されているのだから。