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【進まぬデジタル化の深層】富士通とシーメンスがDXで協業する理由

 

 コロナ渦は様々な弱点をあぶり出している。官庁のデジタル化の遅れが顕在化したことは言うまでもない。Society 5.0で、目指したはずのサイバー空間とリアル空間を限りなく融合し、問題解決していく社会からは大きくかけ離れた現実がそこにある。

 DXデジタルトランスフォーメーション経産省が指摘した「2025年の崖」、「レガシーシステム問題」も何のことはない、官庁のシステムにこそ問題があったということに過ぎないのかもしれない。

 ビックデータ、IoT、人工知能、ロボティクスなどの技術でイノベーションを起こそうとの掛け声も、こうした現状からすればただ虚しく響く。

 

 

 絵空事のような、あまりにも現実からかけ離れた長期ビジョンが国の成長戦略になることほど危ういものはないのかもしれない。[Society5.0]という壮大な構想もその類なのかもしれない。目指す社会の方向性としては間違いではないのかもしれないが、戦略には膨大の分析と実現可能性の十分な吟味が必要だ。その上で戦略が描かれるべきだ。

 民間企業の意識にも問題があるのだろうか。国の成長戦略会議が4月12日に開催され、米国企業がポストコロナでビジネスモデルの大きな変革を予想しているのに対し、国内企業はその意識は低く、働き方の変化を予想していることを指摘する。

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(資料:内閣府「成長戦略会議 基礎資料」

 成長戦略会議は、Society5.0が目指した世界からかけ離れた現実を示す。DXの社会実装をこの先どう進めていくのだろうか。

 

 

 その成長戦略会議の論点に「デジタル化への投資・実装促進」があがり、デジタル庁を中心としたデジタル化の推進として、自治体の情報システムの標準化や準公共分野を含めたデータ整備を進めるべきとの意見があがる。現実路線への回帰なのだろうか。公共機関がレガシーシステムのままでは、枝葉ばかりを先鋭化させても、どこかで非効率に陥るのが関の山だ。戦略の練り直しというところのなのだろう。

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 DX デジタル・トランスフォーメーションへの投資促進が論点にあがり、重点分野に変化があらわれたのだろうか。まずはインフラ基盤の整備に方向性を持たせようとしているのだろうか。

 「5G情報通信インフラの早期・集中的な整備の推進」や「多数同時接続や超低遅延の機能が強化された5G(ポスト5G)等の研究開発支援」などに加え、 「デジタル社会の基盤となる先端半導体やその製造技術の開発支援」、「先端半導体の確実な供給体制を構築」、「今後のデジタル需要・データ通信量の急増に対応する高性能・低消費電力データセンターの分散立地」などを支援すべきとの意見があったようだ。

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(資料:内閣府「成長戦略会議 基礎資料」

 そんな中、富士通が、製造業のDXの強化支援に向け、独シーメンスの日本法人シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアと協業するという。

 製品ライフサイクル管理システムや製造オペレーション管理システムなど様々なシーメンス製品を再販するという。また、設計と製造のものづくり情報をつなぎ、製品の市場投入までの時間短縮と生産性・品質の向上を実現する3D-BOP機能をシーメンス社の技術支援を受けて開発するそうだ。

pr.fujitsu.com

 こうしたニュースを読んでみてみると、国内でDXが進まない理由がわかるような気になる。

 

 

 戦後間もない頃、日本製といえば粗悪品の代表で、海外製、舶来品が重宝されていたと聞く。その後、先人たちが「追いつけ、追い越せ」をスローガンに努力した結果、高品質な日本製という神話が生まれたが、それももう昔のことだ。

 気がつけば、先端のハードウェアは海外製になり、テクノロジーも技術も海外製ばかりで、DXもまた海外の力を借りなければ、前に進まないのかと感じてしまう。

 グローバル化の時代になり、国境を気にする必要性は薄らいだのかもしれないが、先行きに不安を感じたりする。まして地政学リスクが再び高まってきてもいる。

 先人たちを模倣して「追いつけ、追い越せ」で技術開発をキャッチアップしなければならないのかもしれない。成長戦略会議の資料に読んでみて、そんなことを感じた。