国が掲げる「2050年までのカーボンニュートラル」について、目標達成困難とみる企業が7割弱あるという結果が、ロイターが実施した企業調査で明らかになったという。
それによると、企業にとって環境対応コストに対する不安が大きく、化石燃料の代替電源として原子力発電の現状以上の利用にも慎重なことが背景にあるという。
今後10年間で自社の二酸化炭素(CO2)排出量で削減可能な範囲は10%以下との回答が半数を占め、取り組みは遅々として進みそうにないとロイターは指摘する。
カーボンニュートラルは他人事か 戸惑う企業
ロイターの調査結果に少々戸惑う。これが企業の本音なのだろうか。
ロイターによれば、排出ゼロへの対策には「結局、企業の持ち出しは避けられない」(小売)など、コストを意識する声が目立つという。
事業への影響について、こうしたコストを踏まえて短期的にはマイナス効果となるとの回答が29%と、プラス効果(15%)の2倍を占めた。
ただ、中長期的にはプラス効果が出るとの見方が43%に増え、マイナス効果の倍になり見方は逆転している。 (出所:ロイター)
「短期的には設備投資過多の時期がありマイナスとなろうが、中長期でみると設備投資資金がない競合他社より有利になる」など、投資効果が顕現化することで事業にもプラスとなるとの見方があると伝える。
再生可能エネルギーの普及の現在地 その実例
NHKは、「2050年の“脱炭素” 再生可能エネルギー普及の現在地は」というビジネス特集で、個人や企業の再生可能エネルギーの取り組みを紹介する。
横浜市にある印刷会社は、自社の電力のすべてを再生可能エネルギーに切り替えたという。NHKによれば、屋上一面に太陽光パネルを取り付け、会社で使う電力の2割を発電する。残りの8割も小売事業者を通じて風力発電でまかなっているそうだ。
この会社の社長は、こう述べているという。
「『脱炭素』は新しい価値を創造するものの1つだと認識しています。今後、金融機関から資金調達をする上でもプラスになるのではないか」 (出所:NHK)
しかし、まだ再生可能エネルギー普及には課題もあるという。九州電力による再エネ事業者に対する「出力制限」の事例を紹介し、熊本県や佐賀県など九州の43か所で太陽光や風力発電を運営する事業者は、今年とし36日の出力制御の要請を受けたと伝える。
「想定より多くの太陽光が入ってしまえば出力制御が増えてしまう。そういう可能性があっては投資できない」と発電事業者はいっているそうだ。
九州電力もまた発電事業を行ない、送電事業も行なう。どの電源を優先するのか、国の規制が求められているのかもしれない。
その一方で、福岡市に暮らす家族が再生可能エネルギー由来の電力に切り替えた事例を紹介する。それによると、契約を切り替えた理由は、温暖化への不安だという。夏の猛暑などを肌で感じ、家庭でも二酸化炭素を減らせないか考えるようになったという。
「子どもたちの将来のことを考えるとやはり一人でも多くの人が、再生可能エネルギーに対して関心を持っていかないといけないと思っています」 (出所:NHK)
抵抗勢力なのか
経団連の中西宏明会長は、2050年までの政府のカーボンニュートラル目標について、経済界は抵抗勢力と心配されるが逆だと述べたと、共同通信が伝える。
共同通信によれば、中西氏は「経済界も政府も力を合わせて一つの方向をつくることが大事だ」と訴え、環境分野の技術革新に積極的に取り組む意向を示したという。
企業の本気度が問われる。躊躇している余裕はないはずだ。もう動き出した企業もたくさんある。そして、何より忘れてならないのは、国際協調だ。温室効果ガスには国境がない。自分だけがよければという考えはもう通用しなくなるのだろう。