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【規制強化はここにも】強力な電力規制がもたらすモノ不足、冬季オリンピックを意識し始める中国

 

 東京オリンピックが終わったばかりというのに、来年には北京冬季オリンピックが開催される。2022年2月4日から始まり、2月20日までの17日間だそうだ。

 中国では、そのオリンピックに向け、早くも青空を確保するための活動に取り組んでいるという。その直接的な影響なのか、それとも他の要素が加わってのことなのかは定かではないが、モノが不足し、電力も不足しているそうだ。

 中国政府が石炭電力の過剰消費を抑制するためにマグネシウムの主産地である陝西省で、マグネシウムの生産停止命令を発令している。

 鉄鋼新聞によれば、北京オリンピックまで生産停止になる可能性もあり、マグネシウムを使用するマグネシウムメーカーやアルミ圧延メーカーの生産に影響が出る可能性があるという。

マグネシウムの世界生産量は年間100万トン。このうち中国が80万トンを生産し、中でも陝西省は中国内でのシェアが8~9割に上る一大生産地だ。

この陝西省マグネシウム生産用の電力供給がストップしたため、「仮に冬季オリンピックまでの5カ月間生産停止となれば、年30万トンの供給がなくなることになる」 (出所:鉄鋼新聞)

 電力制限は雲南省でも実施され、アルミやシリコンも減産を余儀なくされているそうだ。なかでも、黄リンや工業用シリコンを製造する企業に対しては、9~12月の月間平均生産量を8月の90%減とする厳しい通知も出されているという。

 

 

 ブルームバーグによれば、中国政府による電力消費の取り締まりは、電力需要の高騰や石炭・天然ガス価格の高騰、温暖化ガス排出抑制に向けた厳しい政府目標が背景にあるという。

恒大問題で揺れる中国経済、電力不足が次の危機に発展も-生産抑制で - Bloomberg

その影響はまず同国の巨大製造業界に及んでおり、アルミニウム精錬所から大豆加工施設まで広範な工場が稼働水準の抑制や停止に追い込まれた。

23省のうちの半分近くは中央政府が求める厳しいエネルギー強度目標を達成できず、電力消費量の抑制を迫られている。特に状況が厳しいのは、製造業が盛んな江蘇、浙江、広東の3省だ。 (出所:ブルームバーグ

 JETROによれば、エネルギー消費量とエネルギー強度が前年同期に比べ、増加した場合は第1級警告として「赤信号」、減少したが削減量が十分でない場合は第2級警告の「黄色信号」、削減目標を達成した場合は第3級警告の「青信号」で、対応状況を示しているそうだ。

江蘇省はじめ中国各地で電力制限、生産活動への影響も(中国) | ビジネス短信 - ジェトロ

2021年第1四半期(1~3月)のそれぞれの達成状況と比べ、江蘇省をはじめ、広東省福建省雲南省広西チワン族自治区青海省寧夏回族自治区の7つの省・自治区では両目標がともに「赤信号」で、今回、電力制限の対象となった地域が全て含まれているという。

 極端な施策と見えるが、気候変動対策を最優先とすれば、これが正しい選択なのかもしれない。

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「中国のエネルギー危機は自らが招いた側面もある」とブルームバーグは指摘し、「来年2月の北京冬季五輪に向け青空を確保すべく取り組んでいる」という。

 

 

 一方、恒大集団の債務危機は、どう収束されることになるのだろうか。様々な憶測が飛び交い、情報が錯綜する。

中国恒大危機 救済される人、されない人: 日本経済新聞

 中国が、これまでの行き過ぎた経済を是正しようとしているのではないか、そう思えることもある。

 その理由は、最近掲げ始めた「共同富裕」という概念があってのことなのだろうか。それとも気候変動対策が考慮されてのことなのだろうか。

中国リスクに冷静な日系機械企業、動揺する市場と「肌感覚」に差 | ロイター

 ただ中国がこれまでの中国に戻ることはないということは確かではなかろうか。この騒乱が落ち着いたとき、世界にどんな変化があるのかが気になっている。まずは来年のオリンピックというところなのだろうか。