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「脱炭素化」宣言するワケ 企業存続の分かれ道

 

 国の脱炭素化政策がにわかに動き出す。10月下期に入って、動きがさらに活発化してきたのだろうか。

 10月9日、TCFDサミット2020の場において、梶山経済産業大臣が「ゼロエミ・チャレンジ企業」を公表したという。上場・非上場企業あわせて320社が「ゼロエミ・チャレンジ企業」の企業リストに名を連ねている。

 

ゼロエミ・チャレンジ企業とは

 経済産業省によれば、「脱炭素化社会の実現」に向けて、イノベーションの取組に果敢に挑戦する企業を「ゼロエミ・チャレンジ企業」と位置づける。

 「革新的環境イノベーション戦略」に紐付く経済産業省の事業や、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDO)が実施している28のプロジェクトを対象にした「ゼロエミ・チャレンジ」の趣旨に賛同した企業320社をリストアップしたという。

 

 

 

 金融機関・情報活用機関が、この情報を活用し個別の投融資判断や、指数等の金融商品の開発等に展開することを期待しているそうだ。この先、ゼロエミ・チャレンジ企業と投資家等との対話の場を設けるなど、ゼロエミ・チャレンジ企業の取組を経済産業省が後押ししていくという。

 

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(出所:経済産業省

 

 企業はどう反応するのだろうか

 気候変動対策は待ったなしの課題と、経済産業省は臆面もなくそういう。

 今年1月、世界全体でのGHG温室効果ガスの排出削減に貢献できるイノベーション分野を「革新的環境イノベーション戦略」で特定、この戦略を実現していくための枠組みとして、「グリーンイノベーション戦略推進会議」を設置したという。

 この会議では、脱炭素社会の実現を切り拓く企業を応援するためのプロジェクトである「ゼロエミ・チャレンジ」を始め、経団連NEDO(国立研究開法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)と連携して今回の企業リストを作成した。

 

 

 

 投資たちもESG投資に注目する。また、国もESG投資などの資金を脱炭素を目指す企業に呼び込み、その動きを加速させたい。こうした動になれば、必然、企業は「脱炭素」から逃れることはできないということなのであろうか。

 日本経済新聞によれば、梶山弘志経産相は9日、気候変動が企業業績に及ぼす影響の開示を求める国際的な枠組み「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」のサミットで、「革新技術の開発に資金を供給することで社会実装を加速させ、環境と成長の好循環を実現したい」と話したという。

 また、菅義偉首相はビデオメッセージで「日本の強みを生かしてCO2を減少に転じさせるイノベーションを生み出し、世界の脱炭素化に貢献していく」と強調したそうだ。

 

www.nikkei.com

 

 

 

脱炭素化宣言する企業が急増

 ここ最近、今まだ脱炭素に後ろ向きと思われた企業たちが挙って「脱炭素化」宣言を行うようになった。 

 東京電力中部電力が出資するJERAが、2050年に二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロにする目標を発表したという。

火力発電所の燃料を水素(やアンモニア)などに転換するほか、非効率な石炭火力を廃止する。国内最大の発電事業者である同社が目標を打ち出したことで、他の大手電力でも脱炭素に向けた動きが広がりそうだ。(出所:日本経済新聞

 

www.nikkei.com

 

 YKK㈱は、気候変動、材料資源、水資源、化学物質管理、人権に取り組む持続可能性目標「YKKサステナビリティビジョン2050」を公表、2050年までに「気候中立」(climate neutral、実質排出ゼロ)を実現すると発表した。

 

www.ykk.co.jp

 

出遅れる鉄鋼業界

 石炭を多量に使う鉄鋼は、CO2排出量が多く、気候変動リスクも大きい業界だが、なかなか「脱炭素」といえる時期が明示できないようだ。

 JFEは、「2050年以降のできるだけ早い時期にJFEグループとしてカーボンニュートラルを実現すべく、それに必要な新たな技術開発への取り組みを加速させる」という。「技術をしっかりと準備し、社会全体の脱炭素技術インフラが整備されれば速やかに目標を達成できるようにしたい」という表現にとどめる。

 

business.nikkei.com

 

 足元では、2030年度のCO2排出量を2013年度比で20%以上削減することを目指すことに注力することになるのだろうか。統合報告書では、「鉄鋼事業以外では、温暖化防止への貢献を事業の機会として活かす取り組みを様々な形で進めている」という。

エンジニアリング事業においては、環境負荷軽減に貢献する廃棄物やバイオマスによる発電、太陽光・地熱発電などの再生可能エネルギー事業により年間約400万トンのCO2削減に貢献しており、さらにはペットボトルのリサイクルなどの資源循環関連事業の展開も加速させている。 (出所:JFEグループ統合報告書

 

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 YKKの企業精神は「善の巡環」だという。「他人の利益を図らずして自らの繁栄はない」ということを表しているという。この考えは「サステナビリティ」に通ずる考え方であるとYKKはいう。

 「善」の捉え方が時代時代で変化するのだろうか。気がつけば、いつの間にか「気候変動」が深刻化し、異常気象が頻発するようになった。

 「脱炭素化」が新たな「善」の定義になったのかもしれない。

 

  

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