7月末、45市町村が、「2050年までに二酸化炭素(CO2)排出量を「実質ゼロ」にする」と共同宣言した。
この共同宣言をまとめた茨城県北茨城市の豊田稔市長が小泉環境大臣と面談したと共同通信が伝える。
小泉氏は「政府目標を上回るものを自治体が掲げている」と高く評価し、政府内でも「(目標を)上げていく働き掛けを開始したい」と述べたと共同通信が伝える。
CO2を含む温室効果ガスを国全体で50年までに80%削減する政府目標の引き上げに、小泉大臣が意欲を示したという。
「実質ゼロ」を宣言する自治体が増えれば、IPCC1.5℃目標に貢献できることになるのであろうか。
(資料出所:環境省公式サイト「地方公共団体における2050年二酸化炭素排出実質ゼロ表明の状況」)
全国の19政令指定都市などでつくる指定都市自然エネルギー協議会が、再生可能エネルギー比率を2030年までに45%以上とする目標を、次期エネルギー基本計画に盛り込むことを政府に求める政策提言をまとめ、小泉進次郎環境相に手渡したという。
小泉環境相は「(自治体の掲げる高い目標に合わせて)政府の目標もより野心的にできるよう努力する」と話したと共同通信が伝える。
小泉環境相のまわりがにわかに活気づいているように見える。
来年に延期されたCOP26(第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議)に向けての準備であろうか。
COPの延期が決まった5月末、小泉環境相が「関係省庁、政府全体あげてしっかりとした戦略を描くべきで、その時間が与えられたと前向きに評価したい」と述べたと朝日新聞が伝えていた。
COP26は当初、今年11月に予定されていた。
会議に向け、国連のグテーレス事務総長は各国に、地球温暖化防止のための国際ルール「パリ協定」に基づく温室効果ガス排出の削減目標を引き上げるよう呼びかけていたが、日本は今年3月末に据え置いたまま提出した。
その代わりに、COP26までに温暖化対策を追加で提出し、新たな削減目標は来年以降に改定される国のエネルギー基本計画や電源構成などと調整した上で見直すとしていた。 (出所:朝日新聞)
7月初旬、小泉進次郎環境相は、石炭火力発電の輸出政策見直しを経済産業省とともに発表した。
7月29日、小泉環境相は、BSフジ「プライムニュース」で、「今回の石炭政策見直しの内容を昨年言えるのがベストだったが、調整できなかった」と国際的に批判が強まる石炭発電について答えた。
小泉環境相は 昨年のCOP25で国内外から批判を受けていた。
しかし与えられた3分間を使う上でイノベーションの話などに逃げるのではなく、国際社会の関心事である石炭の話に率直に触れた。
今後国際的に仲間を募る意味でもプラスと考えた。結果はかなり批判されたが。 (出所:FNNプライムオンライン)
経済界もそんな小泉環境相を後押ししているのだろうか。
経済同友会が、2030年の国内電源構成で、再生可能エネルギーの比率を40%にすべきだとする提言をまとめたという。
2030 年再生可能エネルギーの電源構成比率を 40%へ -その達成への道筋と課題の克服- (経済同友会)
現状は17%にとどまり、政府のエネルギー基本計画でも30年で22~24%としている。
同友会はほぼ倍となる目標を掲げることで、政府の支援、民間投資に弾みをつける必要があるとした。 (出所:日本経済新聞)
同友会ばかりでなく、企業からも小泉環境相に再エネ関連に関しての要望が増えているようだ。
リコーの山下社長は「日本での再生エネの調達は難しい」と小泉環境相に対策を求めたという。イオンの三宅香執行役も小泉環境相に対し「国のリーダーシップ、後押しがほしい」と訴えたとニュースイッチが伝える。
ニュースイッチによれば、ESG投資を支持する機関投資家が増えており、再生エネの活用が企業の評価基準となり、大企業が安くて大量の再生エネを求めているという。
小泉環境相は「再生エネの需要を拡大し、コストを下げることにつなげていきたい」と語り、自治体や国民に再生エネの活用を呼びかけていく考えを示している。 (出所:ニュースイッチ)
WMO 世界気象機関が発表した新しい気候予測によると、今後5年間(2020〜2024年)の年平均世界気温は、産業革命以前のレベル(1850〜1900年)から、少なくとも1℃上回る可能性が高く、20%の確率で1.5°Cを超える可能性があるという。
地球の平均気温は、工業化以前の期間よりもすでに1.0℃高くなり、過去5年間は、過去最高の5年間だったという。
WMOは、「気候変動に関するパリ協定の目標を達成する上で、今世紀の世界の気温上昇を産業革命前の水準よりも2℃低く保ち、制限する努力を続けるという大きな課題を示す結果だ」と指摘する。
WMOによれば、新型コロナによる産業と経済の減速は、持続的かつ協調的な気候変動対策の代用にはならないという。
「大気中のCO2の寿命が非常に長いため、今年の排出量の減少の影響が、地球の気温上昇を引き起こすCO2大気中濃度の減少につながるとは予想されていません」
という。
可及的速やかなアクションが求められているのかもしれない。
小泉環境相と環境省が、COPでの汚名挽回を旗印に勝負を仕掛けているのであろうか。「パリ協定遵守」への道は開けるのか。
小泉新次郎環境相の手腕に期待したい。