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【産業技術ビジョン2020】 NECとNTTが再び手を組む 次世代通信などデジタルインフラ領域で提携

 

 5月、経済産業省が「産業技術ビジョン2020」を公表した。

 足元にある災害・感染症対策、サーキュラーエコノミーへの移行、SDGs達成などの社会課題を解決しつつ、産業の競争力を強化、一層のイノベーションの創出していくことが、「産業技術ビジョン2020」策定の背景にあると経済産業省はいう。

 また、このコロナで、政府が進める「Society5.0」への移行が進んでいないことが露呈、イノベーションを巡る状況も芳しくないと指摘する。

 そうした現状を分析しつつ、産業技術について、中長期的な視点で解決すべき課題を特定し、イノベーションの創出に取り組む必要があるという。

 少しばかりイノベーションということばに固執し過ぎとの印象があるが、重点的に取り組む産業と研究分野と受け止めればいいのかもしれない。

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(資料出所:経済産業省公式サイト「産業技術ビジョン2020」)  

 

 一見、トレンドをとらえたようなにみえた「Society5.0」や「DX推進」の政策であったが、偏り過ぎで、世界的な大きなうねりから乖離して、国際的競争力を失うことにもなったように見えてしまう。結局、世界的に認知されるビジネスに成長しなければ、誰もイノベーションとして認知することはできない。

 こうした偏った政策で、本来基幹となる産業が弱体化し、イノベーションの芽を摘むようなことにもなっているといえそうな気がする。

 

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 (資料出所:経済産業省公式サイト「産業技術ビジョン2020」)  

 

 「産業技術ビジョン2020」では、デジタル一辺倒ではなく、バイオテクノロジー、あらゆる分野の基盤であるマテリアルテクノロジー、経済の負の側面を解決するエネルギー・環境テクノロジーなどが重要分野に上がる。

 また、デジタルにおいても、基盤となる通信技術やコンピューティングが重要視されている。

 

www.meti.go.jp

 

 

 

  NECとNTTが次世代の通信インフラの共同開発で提携すると発表したと日本経済新聞が伝える。

 日本経済新聞によれば、NTTが第三者割当増資を引き受け、NECに645億円出資し、長期の協業を目指すという。5Gだけでなく、その次の6Gの超高速無線、海底ケーブル、宇宙空間など、最先端の通信基盤を共同開発するという。

 

「国内の機器メーカーを世界で戦えるようにするのが主眼だった」。経済産業省幹部は提携の狙いをこう話す。

政府も5G整備を巡り、情報漏洩への安全性などの要件を満たす通信機器を税制で優遇し国産活用を促す。

菅義偉官房長官は25日の記者会見で「日本の産業競争力の強化や、次世代通信インフラの安全性が、この日本連合によって確保されることを期待している」と述べた。 (出所:日本経済新聞

 

www.nikkei.com

 

 日経XTECHが、中国のファーウェイへの規制強化で、NECらに好機との記事を投稿、NECからヒアリングした内容を含め伝える。

 日経XTECHによれば、世界の通信機器市場で高いシェアを持つファーウェイの置き換えを狙った競争が激しくなってきているという。足元ではスウェーデンの通信機器大手エリクソン(Ericsson)が漁夫の利を得ているが、NECなどに参入の好機がやってくるかもしれないという。

 NECは、国内でドコモや楽天の5Gネットワークに採用され、高いシェアをもつが、海外では屋内向けや小型基地局など一部を出荷するのみで、19年の世界市場における売上高シェアは0.7%にとどまるという。

 

 通信業界では、ここ最近、通信機器大手の囲い込みを避けて、基地局製品をマルチベンダーで構成できる「Open RAN」への期待が高まっていると日経XTECHはいう。

 

そのOpen RANを契機に大手が寡占する市場へと切り込もうとしているのがNECだ。

「世界の通信事業者から30社近く引き合いをもらっている」。

NECサービスプロバイダソリューション事業部事業推進グループシニアマネージャーの白石純也氏はこう打ち明ける。

NECはOpen RANに商機を見いだし、再び海外市場へ打って出る考えだ。

NECが持つグローバルな営業体制やSI能力を新興ベンダーとの連携に生かし、大手が寡占する市場を切り崩したい」と白石氏は意気込む。

 基地局にも仮想化技術をフル活用した楽天のネットワークの成否は世界で注目を集めている。 (出所:日経XTECH)

 

xtech.nikkei.com

 

 

 

 日本経済新聞は、ファーウェイは他の大手製品より2~3割安いという。日本勢が世界で普及させていくにはコスト競争力が課題だという。NTTグループが旗振り役となり100社超で取り組む基地局の「オープン化」がそのカギを握ると指摘する。

 

1社がまとめて機器を納入する垂直統合型が主流だが、複数メーカーでネットワークを作り、コストを抑える。この仕組みで市場を開拓し「2030年に世界シェア20%を目指す」(NECの新野隆社長)という。(出所:日本経済新聞

 

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(資料出所:NECニュースリリース 「革新的光・無線技術を活用したICT製品の共同研究開発およびグローバル展開で提携」

 

 多くの日本企業が海外進出していることを考えれば、国内市場もまた外国資本に対してオープンであるべきなのであろう。しかし、昨今の国際情勢や地政学リスクなどを考えると、基幹インフラなどを外国勢に頼ることは少しリスクが高いのかもしれない。

 そうした現実を考えれば、経済産業省が示した「産業技術ビジョン2020」は的を得ているところもあろう。闇雲にイノベーションを追うのではなく、積み重なった技術開発とその事業成立があって初めてイノベーションも成立するのだろう。イノベーションは狙って起こるものではない。

 

 今回のNECとNTTの提携で、経済産業省の働きかけがあったのかもしれないが、これを機に着実に技術開発を続け、事業化を果たしてほしい。可能であれば、この技術開発に国内の多くの企業が参加できるようして、他の企業の技術の底上げにも繋がっていけばいいのかもしれない。

 

 先日、スパコン富岳が世界最速に返り咲いたという。こういしたハードウェア系のニュースも増えて欲しいものだ。

 

 

「参考資料」

jpn.nec.com

 

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