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【脱炭素】 再エネ普及に直流給電 日立とABBが合弁会社設立

 

 日立製作所が、スイスの重電大手ABBから電力システム事業を買収、完了したと発表した。7500億円、「日立の買収としては過去最大」と日本経済新聞が伝える。

 狙いは、再生可能エネルギーなどで拡大が見込める送配電分野のようだ。そこに、ABBの電力システムが不可欠ということなのであろう。 

 ABBは、高圧直流送電(HVDC)システムなどでも世界首位のシェアを持つ。

こうした強い事業基盤と日立のIT(情報技術)を組み合わせ、より効率的な運用が可能な送配電網を構築。世界市場での競争力をさらに高めていく考えだ。 (出所:日本経済新聞

www.nikkei.com

 

 

 

  日立は、この「高圧直流送電(HVDC)」のメリットを日立評論で解説する。

 日本国内では「交流」の選択が第一であり、HVDCは周波数変換や海底ケーブル送電などの特定の条件下で選択される手段だったという。

 これに対し、欧州をはじめ世界各地でHVDCの導入が進み、さらに加速する傾向にあるという。この背景には、再生可能エネルギーの導入拡大などがあるという。

 

www.hitachihyoron.com

 

直流給電

  NTTも、直流送電を使ったエネルギービジネスを強化するようだ。 

「電話局を中心とするマイクログリッドが生まれる」

NTTは、全国約7300の電話局の大半に太陽光パネルと蓄電池を設置、「ミニ発電所」としても使うようだ

大手電力メーカとは別に自営線網(配電網)を整備し、全国の電話局から近隣の工場やオフィスビルに電力を供給する。この自営線では「直流」での送電を行うことで高効率を目指すという。 

 

dsupplying.hatenablog.com

 

 NTTは、 データセンターに導入されつつある直流給電を事例に、現状の電力ロスについて解説する。 

データセンターには、サーバーやネットワーク機器など、ICT機器が大量に集積しています。そこでは膨大な電力が使用されており、世界全体のエネルギー需要に対して約2%がデータセンターだといわれています。しかも、それが年間10%ずつ増大しています。

 膨大な電力を使用しているということは同時に、交流から直流へと変換する際の電力ロスも膨大な量になるということです。

 直流給電HVDCシステムを活用することで、データセンター内での電流変換をシンプルにすることができ、その分電力ロスを低減するころが可能になります。 (出所:NTTファシリティーズ ビジネスコラム)

www.ntt-f.co.jp

 

 

ゼロエミビル

 以前、ゼネコンの人と会話した際、東京オリパラの後は「ゼロエミビル」と話されていた。その中で、ビル内の配電に直流給電を検討したいとの話もあった。

 

 太陽光発電風力発電など再生可能エネルギーが直流で出力され(風力は交流で発電されたのち、一度直流に変換している)、マイクログリッドなどで利用される蓄電池も直流で利用される。そればかりでなく、多くの装置や機器が直流駆動するのであれば、変換ロスからいっても、直流というのが自然な流れなのかもしれない。

 

 日立の発表資料には、こんな行がある。

再生可能エネルギーはその性質上断続的(不安定)なため、複雑な運用が必要になります。多くの国で再生可能エネルギーを推進してきましたが、発電量の事前予測が難しく、より臨機応変にエネルギーシステムを管理する必要があるため、柔軟で安定した運用の確立が求められています。また、電力市場において再生可能エネルギーを普及させるには、さらに多くの系統連系が必要になります。 (出所:日立製作所公式サイト ニュースリリース

 

 再生可能エネルギーをもう一段高いレベルで普及させるためには、直流送電が不可欠になってきたということなのかもしれない。

 そうであれば、日立が7500億円、NTTが1兆円もの投資をする意味が理解できる。 

 

 日立の東原社長は、ABBとの合弁会社設立の発表の際、「再生可能エネルギーの導入をはじめ、脱炭素社会の構築はSDGsのなかでも喫緊の大きな課題です」と語っていた。

 

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