Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

世界最速のスパコン富岳で半導体産業は復活するか

 

 アップルのパソコンMacのプロセッサ(CPU)がインテル製からアップル独自に開発されたCPU「アップルシリコン」に切り替わるという。

 アップルシリコンの心臓部は英国の半導体設計会社アームのプロセッサからなる。こうしたアームベースでの開発は既にiPhoneiPadで実績があるという。 

 インテル依存からの脱却は、アップル製品における緊密な統合効果をもたらすと同時に、デヴァイス間のアプリを区別しなくてもいい世界をもたらすことが期待される (出所:wired)

 

 この変更はアップルにとってのメリットは大きいという。

 wiredは、このチップが台湾の半導体ファウンドリーTSMCで生産されることを予測し、アップルにとって長期的なコスト削減につながるだろうという。

 また、「ハードやソフトの一体的な開発ができるようになり、効率の改善や特定用途に特化した性能の向上が可能になる」ともいう。

  

 

 

 

  では、アップルユーザーにとってのメリットとは何なのであろうか。

 

 今回の変更で、アップルユーザーがどの程度のコスト削減効果を享受できるかは未知数とwiredはいう。しかし、この変更で、今後、端末ごとにアプリを購入する必要がなくなるという。

これからの世界では、もはやiPhoneアプリiPadアプリ、Macアプリを個別に購入する必要はなくなる。

どんなデヴァイスをもっていようと、“Appleアプリ”だけを買えばいい世界がやってくるのだ。 (出所:wired)

 

wired.jp

 

富岳 世界最速のスパコン

  世界最速のスパコンの栄誉に輝いた「富岳」にも、この英アームベースで開発されたCPUが使用されているという。

 このCPUを開発したのは富士通だ。「富岳」では、この富士通製CPU「A64FX」が約16万個使われているという。 

 「富岳」の最大の特徴はその汎用性と使い勝手の良さ、性能ということであろうか。

 先代のスパコン「京」の反省を活かしたという。 

先代の「京(けい)」もCPUは富士通製だったが、独自に作り込んだ部分が多く、多くのスパコンで使われるソフトがそのままでは動かなかった。

せっかく速度で世界一になったのに利用は広がらず、そのCPUを使った市販用のスパコンも売れなかった。「京は商用化で失敗した」と言われた。 (出所:朝日新聞

  

digital.asahi.com

 

英アーム アップルが選んだ理由はシンプルで低消費電力

 英アームは、1990年アップルなど3社から出資を受け、英国のコンピュータメーカ 英エイコーン・コンピューターから独立した。アップルが注目したのが、「シンプルで消費電力が少ないプロセッサ開発」というアームの特徴だったと言われる。

 アップルは2010年からアームベースで開発されたチップをiPhoneiPadで使い始めた。それから10年あまり、ようやくMacにもアームベースのチップが搭載される。 

「独自開発のSoC(System-on-a-chip、ひとつの半導体にシステムを動かすために必要な機能を多く載せたチップ)をMacに搭載すれば、最終的により優れた製品を生み出せることはわかっています」 (出所:wired)

 

business.nikkei.com

 

 

 

 今では当たり前になったアームベースのSoC化の流れにのって、「富岳」のCPUも開発されたということであろうか。

 

  PC Watch理化学研究所 計算科学研究センターの松岡センター長の言葉を紹介する。

「京のCPUは、富士通が開発し、製造も富士通のファブで行なった。それに対して、富岳は、CPUやメモリなどの生産は、海外の半導体会社との協業によって行なっている。

 だがこれは、Armをはじめとする多くの半導体メーカーが、開発と製造を水平分業しているのと同じ仕組みであり、A64FXの設計は日本で行ない、そこには富士通の長年のCPUの設計技術が活きている。

設計技術と、半導体製造会社の最新技術の組み合わせによって、世界一の性能を達成できた」 (出所:PC Watch

 

pc.watch.impress.co.jp

 

富岳 日本半導体産業復活の狼煙なのか

 PC Watchは、「CPU開発で後塵を拝してきた日本の半導体産業の復興」と語った松岡センター長の言葉を紹介する。

 

 「日本は、マイクロプロセッサの時代に入ってから、海外勢がびっくりするような、すごいものをつくることができていなかった。A64FXは、汎用CPUで、米国の巨大企業などにも勝つことができたCPUである。Crayがはじめて日本の高性能汎用CPUを採用したことからもそれが裏づけられる。日本半導体産業の底力を示し、復活の狼煙をあげることができたことに意義がある」 (出所:PC Watch

 

 少しばかり複雑な思いがする話だ。アームの特徴活かしたCPUを開発、既に定着している半導体の国際分業の枠組みで生産するとしたことで、果たして、「日本の半導体産業の復興」と呼んでいいのだろうか。

 

「速いだけでなく、使いやすさも含めた総合性能を実証した富岳。だが、究極の目標は、心臓部である新開発の中央演算処理装置(CPU)を普及させ、商業的に成功させることにある」と朝日新聞は伝える。

 

 新開発されたCPUの商業的成功、こちらの方が説得力があるかもしれない。

 商業的成功が継続して始めて「日本の半導体産業の復興」に繋がっていくのだろう。

 

いつかは来るアーム繁栄の終焉

 EE Timesは、「Armの独壇場は、もうそろそろ終わりがくるだろう」という。今後5年以内には、Armの現在のビジネスモデルには何らかの変化が訪れると予測している声をあると紹介する。

 

eetimes.jp

 

 さらなる進化が求められているということなのであろう。

 

 

「参考文書」

pr.fujitsu.com

 

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