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【コロナショック】サプライチェーンの国内回帰は必要なのか

 

 新型コロナウィルスが世界各地のサプライチェーンに甚大な影響を及ぼしている。震源地中国のサプライチェーンが真っ先に寸断された。人の移動が制限されたことで生産工場があちこちで停止に追い込まれた。

 

 稼働停止した工場も、ここにきてようやく再稼働を始め、徐々に稼働率が上がってきているようだ。ブルームバーグは60~70%程度まで稼働率が回復してきたと報じる。

 

dsupplying.hatenablog.com

 

 

中国でのサプライチェーンの寸断は、国内産業にも影響を及ぼしている。

3月5日に開催された未来投資会議では、「新型コロナウイルスの感染拡大による経済への影響」が議題になったという。

 

「一国への依存度が高い製品で付加価値が高いものについてはわが国への生産拠点の回帰を図る」

と首相が会議の席上で述べたそうだ。

 日本は、他の主要先進国に比べ、部材・部品など「中間財」の中国依存が高いといわれる。中国のサプライチェーンの変化は、そのまま日本に影響する。

 

「中国依存度が高い製品は東南アジアなど他国からの調達を拡大し、一部の自動車部品など高い収益性が見込める品目については国内生産拠点に移す方向で検討。対象企業への補助金などが課題となりそうだ」と時事ドットコムニュースが報じる。

 

www.jiji.com

 

チャイナ・プラスワン

人件費高騰など中国で何か変化生じるたびに取り沙汰されてきた言葉だ。世界の工場と化した中国、世界最大の消費地である中国、それが難しい選択となる。 

 米中貿易摩擦の影響で、再びチャイナ・プラスワンに注目が集まった。中国と米国に立地し、輸出入する企業には貿易摩擦は深刻な影響だった。中国に進出した日系企業はうまくこの問題を回避できているようだと聞く。

 

 

 

中国、ASEAN、東南アジアに進出する日系企業の貿易状況をJETROが「地域・分析レポート」で報告する。

このレポートによれば、うまくサプライチェーンが分散化されているようにも見えるが、やはり金額ベースでは中国に偏りがあるのであろうか。

 

 ASEAN全体では、輸出先は日本(45.7%)が最大で、以下、ASEAN(29.6%)、中国(3.8%)、米国(3.5%)の順に続く。

 出所:JETROジェトロ「2019年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」)

www.jetro.go.jp

 

 今、「新型コロナウィルス」の影響は多方面に及んでいる。

マスク不足は深刻な問題だ。WHOは必ずしもマスクは必要としないといいながらも、みなが必要としている。

そのマスクは、国内生産が2割で、8割を輸入に頼り、主要な輸入先は中国になっている。

中国が自国で生産されるマスクの確保に走れば、当然他国へ影響する。そんなことが事態を悪化させたのだろうか。

 

 今回のことを教訓として、サプライチェーンの見直しがあってもいいのかもしれない。

製造メーカであれば、「供給責任」から逃れることはできない。「必要な時に、必要なものを届ける」、この責務を果たすことを常に求められている。

国内の人手不足問題ばかりでなく、気候変動リスクの高まりへの適応、よりエシカルで倫理的な調達、トレーサビリティに見える化、資源循環型のサーキュラー・エコノミーなど、考慮すべき事項も増えている。改めて最適地生産、物流、システムを考えて見直してみる必要がありそうだ。

 企業は、これから従来にない価値観で、同業他社と競争することになるのかもしれない。ESG、SDGsで差別化していかなければならないのかもしれない。

そのためには、あらゆるステークスホルダーと対話し、従来の「隠す美徳」から、みなにわかりやすくサプライチェーンをみせ、伝えることも求められるのではなかろうか。

今、そうした消費者が増えつつある。

  

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