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【サスティナビリティ】使い捨てのマスクや紙おむつ 石油由来の化学繊維はなくならないのか

 

 世界初となる100%植物由来のポリエステル繊維を2020年代前半に東レが量産すると日本経済新聞が報じた。

東レは、ポリエステルを構成するエチレングリコールを植物由来にした30%植物由来のポリエステルを販売していたが、もうひとつの原料であるテレフタル酸を植物由来に変えることができず、100%植物由来のポリエステルの商品化されていなかった。

協業パートナーである米バイレント(VIRENT)社で、植物由来のテレフタル酸の試作品ができたことで商品化にめどがたったようだ。 

東レは完全植物由来のポリエステル繊維の試作に成功した。バイオ燃料の米スタートアップ企業、バイレント(ウィスコンシン州)との共同開発だ。スポーツウエアや婦人服、自動車の内装材などの用途を見込む。

(出所:日本経済新聞

 

www.nikkei.com

 

 

植物由来

植物由来のポリエステルの原料にはサトウキビが用いられる。砂糖にならない廃糖蜜が原料になる。非食物の廃糖蜜は今まで肥料などに用いられてきた。

「石油由来のものに比べて高くなる」と、東レの寺井秀徳・繊維GR・LI事業推進室長兼地球環境事業戦略推進室主幹はWWD Japanのインタビューに答えた。

まずは、自動車用途、スポーツ衣料、官公庁や学校のユニホームなど、環境意識が高い分野をターゲットにして販売することになるという。その後コストが下がれば、一般衣料やカジュアル衣料にも普及させていきたいともインタビューに答える。

 

合成繊維の原料は今まで石油であった。石油と植物由来では、ポリエステルになるまでの製造工程に違いはあるかもしれないが、採掘する石油に対して、植物は育て収穫しなければならない。そうしたところからコスト差が生まれてしまうのだろうか。

 

ペットボトル リサイクル

WWD Japanは、寺井氏に、ペットボトルから再生されるポリエステルについても質問をする。

 

 「リサイクル素材を作る方が石油を多く使うという説もあるが」

「新たにバージンポリエステルを作るよりも環境負荷は低いのではないか」

と寺井氏は答える。

 

資源採取―原料生産―製品生産―流通・消費―廃棄・リサイクルという製品のライフサイクル全体、またはその特定段階における環境負荷定量的に評価する手法としてLife Cycle Assessment(LCA)がある。

この手法を用いて評価すれば、破棄される予定だったペットボトルは、温室効果ガスがゼロの原料となる。ペットボトルを製造するときに排出される温室効果ガスより、リサイクルする時は温室効果ガスの排出が少なく済むという。輸送や洗浄、その他の工程でも環境に負荷をかけるが、それでもバージン素材を作るよりは環境負荷が小さくなるという。

 

 

「価格はリサイクルポリエステルの方が高くなる?」

「理屈でいうと高い」

と寺井氏は答える。

 

 日本では1年間にペットボトルが65万トン廃棄されているという。ペットボトルをリサイクルし、再生繊維にするためには、廃ペットボトルをペレット化する必要がある。それを担う処理業者は、家庭ごみや事業系ごみから入手する。

この廃ペットボトルの中でも、異物が混じらない質の良いものは値段が高く、質の悪いものには値段がつかないという。中国の輸入規制の影響があるらしい。

昨今のリサイクルブームで、良質のペットボトルは引く手あまたで価格も高くなっている。

ちなみに19年2月末に入札された廃ペットボトルの価格は、キレイなものは54.7円/kg、汚いものは-118円/kg。つまり汚いものはお金を払って引き取ってもらっていることになる。(出所:WWD Japan)

繊維にリサイクルするには、質の高いペットボトルが必要になるという。その後の処理業者のコストを考えると、バージン素材のほうがやはり安いということなのであろうか。

 

www.wwdjapan.com

 

不織布と合成繊維

 現在、ポリエステルなど多くの合成繊維が様々な用途に利用されている。

 使い捨てのマスクや衛生用品などの不織布もまた合成繊維が原料になっている。930千トンあまりの需要があって、衣料品と生活資材で7割を占める。

 

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(資料出所:経済産業省「繊維産業の課題と経済産業省の取組」

 

 この先、どれだけのものを、リサイクルや植物由来の素材に変えていくことができるのであろうか。 

そこには、まだコストという大きな問題が存在する。その解決には多くの課題がある。

需要があれば設備投資し、コストが低減していくかもしれない。その一方で、衰退する産業を生み出すが、新たな成長の機会とみなすこともできよう。

 

 

環境にやさしい。それは今ラグジュアリーなことなのかも

消費を喚起する必要がある。環境にやさしい商品が手軽に使えるようになるまでは、もう少し時間がかかってしまうのかもしれない。

それまでは、「環境にやさしい」ということはラグジュアリーなこと、贅沢なことということなのかもしれない。

 

何でも使い捨ててきた文化を変えていく必要があると思うが、使い捨てが定着して、昔のように使いまわすことが難しくなっているものも増えている。

 

マスクや紙おむつなど使い捨てを止めることはできるのだろうか。

昔のように布製に戻せるのだろうか。

こうしたものは今しばらく石油由来のものを使っていくことになるのかもしれない。

 

「環境にやさしい」とは実に難しいテーマだ。

 

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「参考文書」

www.toray.co.jp