植物肉などの代替肉や代替乳の市場規模が世界で30年に10兆円を超えるといいます。大きな成長市場に育ってきたということでしょうか。
環境意識の高まりや食の多様化、食糧安全保障などがその背景にあるようです。
三菱ケミカルグループが、代替肉の素材ビジネスに参入するそうです。食品向けの乳化剤「シュガーエステル」や新素材を、植物肉や乳の味や品質を高める食品添加剤として供給するといいます。
三菱ケミカルG、植物肉向け素材に参入、味・品質向上配合剤を販売 - 化学工業日報
素材系が整えば、参入障壁が低くなるのかもしれません。この市場が成長路線に入ることの現れなのでしょうか。
代替肉の素材ももっと多様化すればよいのではないでしょうか。原料を大豆ばかりに頼れば、やはり供給面が心配になり、様々な悪影響が危惧されます。
リアルテックファンドが、南国フルーツのひとつであるジャックフルーツを素材にした植物性代替肉を開発したシンガポールの企業Bali Grove Pte Ltdの出資したといいます。
リアルテックファンドは、地球や人類の課題解決に資する革新的テクノロジーを有するスタートアップに投資するVCです。
リアルテックファンド、ジャックフルーツ代替肉を開発するシンガポール発ベンチャー、KARANAへ出資を実施|リアルテックホールディングス株式会社のプレスリリース
この代替肉は「KARANA」という商標名で、既にアメリカやシンガポールで販売が始まっているそうです。
リアルテックホールディングスによると、ジャックフルーツは世界中で約100万トン生産されているといいますが、加工技術が進展しておらずその約6割が廃棄されているそうです。有効活用できるようになれば、植樹によるCO2削減や廃棄物の削減、農家の収入増加などのインパクトを生み出すこともできるといいます。
牛肉に近い細胞形状を持つジャックフルーツは、大規模な農園が不要でどこでも生える力を持ち、熱帯地域を中心に栽培され、日常的に食べられている果実です。食物繊維を多く含み、低脂質、コレステロールゼロと健康面でも優れており、さらには干ばつや害虫に強く、除草剤や農薬を必要としないという強靭さも兼ね揃えています。(出所:リアルテックホールディングス)
代替肉は通常、「肉っぽさ」を再現するため、過度な添加物が使用され、また、全て植物による作られることが課題になっているそうです。
この「KARANA」は、添加物を極限まで減らし、またジャックフルーツの特徴を活かして栄養バランスの良さを持っているうえ、低コストを実現できるといいます。
世界の食肉市場の規模は200兆円あまりといいます。この先、どの程度が代替肉に置き換わり、温室効果ガス削減にどの程度貢献していくことになるのでしょうか。
植物肉ばかりでなく、培養肉の工業化も急速の拡大していく可能性があるようです。
培養肉は、環境負荷削減に加えて量や味を自在に制御できる可能性を秘める。まず、家畜を生かしたまま細胞を採取し、培養できる。家畜を増やさずに済むため、結果的に必要とされる水や土地、げっぷなどによるメタンガスなどが減らせる。さらに、感染症やサプライチェーン分断などの外部環境リスクに左右されにくいため、食肉の安定供給が可能になる。(出所:日経クロステック)
ただ工業化に向けてはコストが課題になるそうです。培養肉の無菌培養のためには、クリーンルームが必要となり、また、バイオリアクターや3Dプリンターなどの製造技術も欠かせないといいます。
既にイスラエルの企業は、10m×10mぐらいの大規模3Dプリンターで培養肉を製造しているといいますが、もっと大規模な生産が可能となれば、さらにコストを抑えられる可能性があるといいます。
培養肉は「工業製品」、製造業のノウハウで先行者利益狙え | 日経クロステック(xTECH)
培養肉は、細胞を部品とみなして組み合わせる、「細胞を使ったものづくり」から生まれる食品と、国内の第一人者である東大の竹内昌治教授はいいます。培養肉は「ものづくり」での新しい産業「ウエットウエア」になる可能性があるといいます。
ただそのためには「技術の発展」、「文化の醸成」、「規制の構築」などの課題を解決していかなければならないようです。
この先、目が離せないことになるのかもしれません。
「参考文書」
「ミートレス」の破壊力 200兆円食肉市場を脅かす: 日本経済新聞