Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

技術力の低下か、国産大型ロケットH3打ち上がらず、揺らぐ安全保障

 

 次世代国産大型ロケット「H3」初号機の打ち上げ時刻に、白煙はあがったがロケットは打ちあがることはなかった。この打ち上げ失敗との報道を受け、JAXA宇宙航空研究開発機構と共同で開発を進めていた三菱重工の株価は一時前日比マイナスに沈む場面があったそうです。

新型ロケット「H3」打ち上げ失敗、三菱重株は一時マイナス圏 - Bloomberg

 H3ロケットは、2001年から運用する現行のH2Aロケットの後継機で、衛星の打ち上げ市場で日本の今後を占う試金石となるはずだったといいます。

 安直なことはいってはならないのでしょうが、またしても三菱重工かと感じないわけでもありません。

 

 

安全保障の根幹を担う国産ロケット

 メインエンジンには着火したが、補助ロケットに点火しなかったようで、JAXAは失敗ではなく、中断と判断しているようです。

日本は安全保障に関わる政府衛星などを自力で打ち上げる能力を保持するための基幹ロケットとしてH3の開発を進めてきた。(出所:ブルームバーグ

 記事によると、産業基盤の維持のためには、毎年6機程度の打ち上げを必要があるそうです。そのために、政府衛星だけでなく、民間需要の取り込みが不可欠になるといいます。ただ、打ち上げ市場では米スペースXが先行し、この他にも新興企業も台頭しており、受注は容易ではないといいます。

 商業衛星の打ち上げ獲得に向け、H3ロケットでは高い信頼性を示す必要があるそうです。

 隣国中国は有人をロケット打ち上げ、独自の宇宙ステーションを建設し、月の裏側にまで触手しています。技術力の差が大きく開くばかりのような気がします。

中国

「世界の貿易に占める割合とその支配的立場を示す数値だけを見れば、中国は貿易戦争に勝利しつつある」

と、あるヘッジファンドの創業者が語ったといいます。

レイ・ダリオ氏、中国は米国との貿易戦争に勝利しつつある - Bloomberg

米国と中国は人権や貿易、競争、テクノロジーなどの諸問題で衝突し、「危険なほど戦争に近づいている」といいます。

 また、この創業者、米国にとってより大きな問題は国内にあると指摘し、米国衰退の象徴としてインフラと教育、リーダーシップの劣化、政治闘争の悪化、貧富の格差拡大を挙げているそうすです。

「第一の脅威は内にある」と述べ、「基本的に、強く健康であれば国内でも海外でも大丈夫だ」と付け加えた。(出所:ブルームバーグ

 現実的な意見のような気がします。

 同氏は、国際貿易における中国人民元の利用は増えていると指摘し、「真の勝者は米国と中国の両方と関係を持てる人だ」との見方を示しているといいます。

 

  

 中国に対し対抗心を燃やすことが無意味のようにも感じてしまいます。日本もまた劣化する米国と同様な問題を抱えているのではないでしょうか。

「健全化」、これがこれからの日本のテーマなのかもしれません。

 

 

国産化に成功した中国のジェット機、敗れた三菱、半導体の国産化はどうなる

 

 中国が短・中距離向けジェット機を開発し、インドネシアに輸出をはじめているといいます。

 一方、三菱重工業が長きにわたって開発してきた初の国産ジェット旅客機「スペースジェット(旧MRJ)の開発はその途上で断念となり、商用化が実現することはありませんでした。

逃した釣果、あまりに大きく 国産ジェット旅客機開発中止の波紋:時事ドットコム

残念なニュースです。また中国との距離が少し開いたような気もします。

航空機は高い技術レベルが必要な産業であり、競業国が少ない上に、部品点数が約100万点(高級乗用車は約3万点)と桁違いに多いこともあって他産業への波及効果は大きく、モノづくりを得意とする日本の次世代産業に相応しい業種だ。(出所:JIJI.com)

 この事業の断念は、日本の未来産業実現への夢も砕いてしまったと、記事は指摘します。

 

 

頓挫、なぜ計画通りに進まない

 開発が計画通りに進まなかったり、頓挫するのにはそれなりに理由もあるのでしょう。

スペースジェット最後の会見、三菱重工社長は質問にどう答えたか | 日経クロステック(xTECH)

航空機事業は、機体の開発と販売やアフターサービスの環境整備に多額の資金が必要になる上に、代金の回収に時間が掛かることから、長期的な事業体制が求められ、新規参入が難しい分野でもある。(出所:JIJI.com)

 開発を断念せざるを得ないというのは、どんな事情があれ、実力不足、または実力を過信したのかもしれません。変わりゆくビジネス環境に適合する力を日々養っていなかったことともいえそうです。

国産半導体は復活するのか

「最先端の半導体チップができないと思うこと自体が諦め過ぎているのではないか」

と、国産半導体新会社「ラピダス」の東会長が述べています。

ラピダスの東哲郎会長「日本は諦めすぎ、こんなものじゃない」:日経ビジネス電子版

「かつて日本の半導体は世界に羽ばたいたが、弱体化してしまった」。なんとか再興できないかと考え続けたいたそうです。

 

 

 過去の半導体の失敗は、世界の潮流から外れてしまったことにあると東会長は指摘し、「全部垂直統合で自分の傘下に持っていくという自前主義や、マーケットもどちらかというと国内マーケットで、世界のマーケットの中で自分たちがどこを狙うかということに対する戦略が欠落していた」といいます。

新しい産業やアプリケーションを日本が独自に生み出して世界に貢献するということでマーケットを作っていけば、それなりのことができたと思っています。(出所: TBS NEWS DIG )

半導体新会社ラピダス 日本の半導体復活への勝機と課題は?~東哲郎会長に聞く~【Bizスクエア】 | TBS NEWS DIG (1ページ)

 ラピダスは日本の会社だが、そのロケーションにはこだわらわず、設計なら得意なアメリカにも拠点を持つというような柔軟な考えで、世界の優秀な人材が集まるような仕組みを作っていくことが非常に重要だと思っているといいます。

「経済安全保障も考慮しつつ、日本の産業の競争力を強くして、世界で貢献できるという形になるのがベストではないか」。

 

 

IBM

 ラピダスがパートナーを組むIBMに伝わる言葉です。

完璧さのための持続的な努力に加えて、不可能に見える仕事を進んで引き受ける会社だけが抜きん出る(略)。他人が無理がということに取り組み人間こそ、発見をし、発明を生み出し、世の中を進歩させる者である。(引用:「IBMを世界的な企業にしたワトソンJrの言葉」)

 IBMは常に動き続け、変わり続け、よりよいもののために努力を続けた結果、新しい製品や新しいサービスが生まれ続けたといいます。それがまたIBMの気風、文化であったそうです。

 日本の半導体の復活はあるのでしょうか。そうあって欲しいものです。

 

「参考文書」

日中の国産旅客機、明暗くっきり、「三菱SJ」開発中止、「ARJ21」は海外初進出

 

【産業の栄枯盛衰】EVシフトで危機を迎える自動車産業、復活したソニーは早くも社長交代へ

 

 日本の基幹産業のひとつの自動車メーカが、窮地なのでしょうか。

 トヨタでは社長が交代し、日産はルノーとの資本関係を見直しました。ホンダは、ソニーグループと提携し、新たなEVを共同開発するようになりました。

 脱炭素やソフトウエア重視の流れが強まり、100年に一度の変革期というように自動車はまさに激動期のさなかにあるようです。

 

 

EVシフト

 EVシフトが今後の競争力を左右するといいます。

 テスラ筆頭に新興勢力が力をつけ、中国BYDが日本で販売を始めるのもその現れなのでしょう。

「EV時代」の今こそ問われるホンダの存立意義 | 最新の週刊東洋経済 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

EVシフトは国家が覇権を競い合うパワーゲームの側面も強い。(出所:東洋経済オンライン)

 環境規制は国や地域によって異なり、中国や欧州などでは販売が伸びているといいます。一方で、電池などに使用される重要鉱物資源の争奪戦となりかねず、そこには国益も絡んでくるといいます。

「このままだと本当に日本の自動車産業は沈没する」、ホンダ幹部がそう危機感を滲ませているといいます。

半導体の失敗

 かつて世界一を誇った半導体が米国の策略で衰退していったように自動車産業も凋落してしまうのでしょうか。

米国視点で見る「日本半導体敗戦」、痛手だったサムスンへの政治的支援 | 日経クロステック(xTECH)

日本の半導体メーカーによる最大の失策は、パソコンの流行を逃したことだった。(出所:日経クロステック)

 日本企業によってDRAM事業から撤退すること余儀なくされた米インテルは、パソコン向けマイクロプロセッサー事業に注力するようになり、PCメーカーとの結びつきを通じてパソコン製造のエコシステムを形成することになったといいます。

 同じ轍を踏まぬよう、その失敗から教訓を得るべきなのかもしれません。

 

 

復活を確かにしたソニー

 電機業界では、ソニーグループの社長が、吉田氏から十時氏に交代になりました。業績好調時の交代に意外との印象を持ちます。

経営環境が大きく変化しようとする中、ソニーグループの企業価値を最大化するために、明確な「成長」軌道に乗せるための攻めの経営を行うためだ。(出所:Forbes)

ソニーが絶好調でも経営体制を見直すワケ | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

 平井氏がCEOを務めたときに、中核のエレキ事業が立て直され、テレビ事業が黒字転換しました。また、ビジョンとミッションが定義されました。平井氏が6年余りで退任し、その後を継いだ吉田氏は、パーパス経営を掲げ、ソフトばかりに傾注することなく、ソニーの強みを改めて明確にしたのではないでしょうか。戦略、「ナラティブ」が明確になったといってもいいのかもしれません。

(写真:ソニーグループ)

 吉田氏の在任は5年余り、その後を継ぐ十時氏は、この物語を具現化し、カタチに変えて、成長軌道を歩むことになるのでしょうか。

「事業ポートフォリオは動的なもの。経営環境の変化に応じて常に変化するものだ。そして事業が多様になれば、それぞれに異なるハーベストサイクル(投資から回収までの期間)が生まれる。各事業を個別に理解・俯瞰して、投資と資金回収の経営を行わねばならず、またその判断のスピードも上げていかなければならない(十時氏)」(出所:Forbes)

 

 

 記事によれば、吉田氏は十時氏の財務能力を「コンテンツの知財買収戦略について事業を深く理解した上で自ら動き、イメージセンサー事業では需要動向、競争環境の変化など事業部側と情報交換を密にしながら投資計画を詰めてくれた。2兆円の戦略投資枠を実現してくれたことも大きい。この予算があるからこそ自社株にも戦略投資もを実施し、5000億円の自己株式取得を財務面からサポートしてくれた」と評価したといいます。際立つ財務センスと実行力がこれから求められる能力になっていくのでしょうか。

 いずれにせよ、ソニーの復活の物語をベストプラクティスにすべきなのでしょう。

 ただ成長軌道を歩むことは、あらたな衰退の始まりのような気がします。不断な改革なくして、企業が持続的に成長していくことはないのでしょう。そのために、ソニーのようにCEOの在任期間をあまり長くせずに新風を注ぎ続けることも求められるのかもしれません。

 

「参考文書」

社説:日産の脱「ルノー支配」 生き残り戦略の出発点に | 毎日新聞

ソニー社長交代で見えた「再建→再成長」戦略 | 経営 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

 

【これが今の日本か】新しいサービスも生まれず、期待外れといわれる「ヤフーとLINEの経営統合」

 

 Zホールディングスの傘下でヤフーとLINEが経営統合し2年経過しましたが、「新しいサービスが生まれず期待と違った」と、ソフトバンクの宮川社長が明らかにしたそうです。

【速報】ソフトバンク宮川社長「期待感と違った」2021年のZホールディングス傘下でのヤフーとLINEの経営統合について | TBS NEWS DIG (1ページ)

経営における意思決定のプロセスが複雑になりすぎて、スピードが上がってないのではないか。(出所:TBS NEWS DIG)

 ありがちなこと、これが今の日本の企業なのかと感じたりもします。

 

 

なるべく楽をして成果を上げる

 自身で経営していたソフトウエア会社が伸び悩み、稲盛和夫さんの盛和塾シリコンバレーに入門した経営者は、その塾であることに気づいたといいます。

 稲盛和夫氏の教えは、自身が知っているシリコンバレーの常識とは真逆だったそうです。

これだけは絶対にやってはいけない…稲盛和夫氏が断言した「成功しない人」に共通するたった1つのこと シリコンバレーの起業家が「盛和塾」で学んだこと | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

 その人は会社員時代、「なるべく楽をして成果を上げたい、上司が見ていないところでは手を抜いて、見ているところでは努力をアピールする」という損得勘定丸出しの生き方をしていたといいます。

 その人の目には、シリコンバレーは自由さの反面、経営者も社員も私利私欲で動いている人が多いと映ったそうです。

 しかし、盛和塾では逆に「絶対に損得勘定で判断するな」と教えられ、「敬天愛人」で判断することで企業を長期的に安定して成長させることができると説かれたといいます。

天を敬い、人を愛する

敬天愛人」、稲盛和夫氏の座右の銘であり、京セラの社是でもある。

「人には愛情を注ぐ。けれども判断をする時は、天がOKを出してくれる、天が喜んでくれる判断をせよ」という意味だ。(出所:プレジデントオンライン)

「誰も見ていなくてもお天道様が見ている」、「リーダーたるもの周囲に安易に迎合するのではなく、お天道様が喜ぶ判断をせよ。そうすることで長期的に会社は発展していく」という稲盛さんの経営哲学を学んだといいます。

 

 

「儲けたい」の一心で立ち上げた会社が2、3年で消滅。大企業でさえ、社員や幹部の不正により一瞬の内に潰れてしまう。実際にそんな例を何度も見た。そして、私自身の会社が伸び悩んでいるのも、私が損得勘定で物事を判断していたからだと分かった。(出所:プレジデントオンライン)

 その気づきを得た経営者は、その教えに従うと、効果はすぐに表れ始めたといいます。まず従業員との関係が変わり、自身の自己肯定感にも大きな影響を与えていったそうです。

道は天地自然の物にして、人はこれを行うものなれば、天を敬するを目的とす。天は我も同一に愛し給ふゆえ、我を愛する心を以て人を愛する也(敬天愛人

「天」、森羅万象、世の中すべての事象ということでしょうか。当然、それには他者も含まれるのでしょうか。

「天が考える成功は、なるべく多くの人に恩恵をもたらすことだ。目先の利益に心を奪われることなく、天が喜ぶ成功を意識すると、視座が高くなり、結果としてより良い判断ができる。これを理解して実践するようになってからは損得ベースでの成功失敗に一喜一憂することはなくなり、本当の意味での成功を手に入れることが容易になった」とこの人は語っています。

 

 

 Zホールディングスもこうした視座を取り入れてみるのがいいのかもしれません。

 損得勘定で思考すれば、「新しいサービス」は誕生しそうにありません。そもそも全く新しいサービスがいきなり成功を収めることはほぼほぼなく、極めて稀なことなのでしょう。極端で、突飛になればなるほど、より多くの人を賛同を得るのは難しそうです。

 こうしたことは、ソフトバンクばかりでなく、伸び悩む日本企業にいえることではないでしょうか。

「天」をいかに味方にするか、それを考えたほうが良さそうです。

「参考文書」

イーロン・マスク、ベゾス、ゲイツ 天才が世界を救いたがるのはなぜ?:日経ビジネス電子版

【世界へ】日本発ドローンのスタートアップの飛躍はあるのか

 

「空から、世界を進化させる」と謳う日本のスタートアップ「テラドローン」が、世界時価総額2位のサウジアラビアのアラムコ社のベンチャーキャピタル「Wa‘ed」より、18.5億円の資金調達したそうです。

 この資金を投じ現地に子会社を設立し、サウジアラビアの石油貯蔵施設のドローン点検を開始するといいます。

テラドローン、アジア初となる世界時価総額2位アラムコのVC Wa’edより18.5億円の資金調達(累計調達126.6億円)|テラドローン株式会社のプレスリリース

 サウジアラビアは、脱石油依存型経済を目指しているそうです。ドローンを次の経済成長の柱のひとつに据え、そのためのパートナー企業の選定を行っていたといいます。

「テラドローン」は、世界50社の中から選抜され、約1年半に及ぶデューデリジェンス(企業調査)を経ての採用だったそうです。

 

 

世界で通用するために

 今回のドローン企業選定のプロジェクトは、2021年10月に始まり、選ばれた50社がプレゼンを行い、それを通過した3社がDDに進むという流れだったといいます。

サウジ国営石油が18億円出資 テラドローンCEOとの間に生まれた共感 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

しかし、プレゼンの席に座って早々、Wa‘edの投資担当者から浴びせられたのは「最近の日本企業はダメだ。昔は世界で闘える大企業があったが、いまは落ちぶれている」といったダメ出しの言葉だった。(出所:Forbes)

 記事によると、CEOの徳重氏はその言葉にカッとなり、「こっちはソニーやホンダのような企業をもう1回つくってやろうという気概で事業に臨んできたんだ」と言い返したそうです。この姿勢が先方の担当者に気に入られ、その場に副社長を呼んでもらえ、話しが急展開したといいます。

(画像:テラドローン)

新産業をリード出来る存在になる事で、日本発のベンチャー企業が世界で通用することをもう一度証明します。(出所:テラドローン)

 徳重氏の熱意が相手に伝わり、人を動かしたのでしょうか。その後4カ月間、膨大な事業計画書の質疑応答が繰り返されたそうです。その計画が絵にかいた餅ではなく、確実に実行できるものと理解があったのでしょうか。

 

 

 ここ最近、日本でもスタートアップの海外展開がみられるといいます。数々の困難を乗り越えてきたテラドローンの実績は、その好例として参考になるのだろうと記事は指摘します。

スタートアップ育成5か年計画

 政府は昨年11月、「スタートアップ育成5か年計画」を発表し、5年間でスタートアップへの投資額を現在の8000億円から10倍超の10兆円にし、スタートアップ10万社、ユニコーン100社を創出するという数値目標を掲げたといいます。

小林史明衆院議員、スタートアップ育成計画の真意を語る:日経ビジネス電子版

 ただ単にお金をかけ、野心的な目標を掲げれば、その計画が達成できるということはないのでしょう。「テラドローン」のように本気になって実現できる計画を作成しているのでしょうか。

規制改革によって新たなサービスが生まれていきます。既に「アナログなルールを乗り越えられるテクノロジーを持ってきてください」と公募をかけています。(中略)技術を募集して、採用した企業の技術を国の「技術カタログ」に掲載します。すると全国の自治体や公共団体がそのカタログを参考にして実証実験などの手間をかけることなく採用できるようになります。こうした新しい事業の応援と、規制改革を同時に行います。(出所:日経ビジネス

 こういう計画で、日本からユニコーンが100社も誕生することになるのでしょうか。既に絵にかいた餅になりつつあるように思えます。

 

 

 計画の良し悪しで、目標の実現確度が左右されるといいます。緻密に計画されれば、計画段階で目標の80%が達成できたことと同じという意見もあります。

 国の目標もそういうものであって欲しいものです。

 

【経済安全保障】強まる強硬論、なぜアップルは自社製デバイスへの切替を急ぐ

 

 隣の大国と切磋琢磨し経済で競い合うが互いにとっても最良なことではないかと思ったのも、もう過去のこと、雌雄は決してしまい、経済力では大きく溝を開けられてしまいました。

 そうでもあるにもかかわらず、いまだ対抗心や敵がい心のようなもの抱いていないでしょうか。それは政治に限ったことなのかもしれませんが。

 しかし、それが「経済安全保障」という形で、企業活動にも影響しているのが現状なのでしょう。

 

 

変質するサプライチェーン

我々から見た顧客の経済圏が米国系と中国系で分断するかもしれない。その中でも双方に製品を提供できる状態にしたい。そのためには供給網を複線化するしかない。(出所:日本経済新聞

米中分断、供給網複線化でリスクに備え 村田製作所の中島規巨社長: 日本経済新聞

 スマートフォンなどに使用される電子部品で世界首位の村田製作所の供給網 サプライチェーンはこれまで中国に偏りがあったといいます。その対策として、東南アジアで新工場の建設や工場の拡張、日本においても、設備投資を続けているそうです。

中国で生産をやめて他地域にシフトするわけではない。中国での投資も進めている。

村田製作所は地域別売上高の5割ほどを中国が占める。中国市場は消費地として期待している。(出所:日本経済新聞

 村田のサプライチェーンの複線化路線は、スマートフォン世界最大手のアップルの調達方針にも適合するものなのでしょうか。

「Go West」、インド、そして、アフリカ

 米アップルがこれまで中国に集中していた「iPhone」の生産の一部をインドに移しています。これについて、「23年にも人口が中国を抜くとされるインドは市場としても生産地としても有望」と村田製作所の中島社長は指摘します。

「この先、アフリカも台頭してくるかもしれない。それらがどちらの経済圏になるかを踏まえて決めていくことになるのではないか」といいます。

 

 

国際分業からバーチャルな垂直統合

 そのアップルは、キーデバイスの自製化を加速しているようです。半導体に続き、ディスプレイも切り替えるといいます。

アップル、自社製スクリーンを24年に利用開始-サムスンに痛手 - Bloomberg

 記事によれば、まず、来年末までにスマートウオッチ「Apple Watch」の最上位モデルでディスプレーを現行の有機ELからマイクロLEDを用いたディスプレーにアップグレードするタイミングで、自社製に切り替えるそうです。

 その後、このディスプレーをスマートフォンiPhone」など他の製品でも利用する計画といいます。

こうした変更は、部品を自社製に置き換え、製品の設計や機能の制御力を強める幅広い取り組みの一環。同社はパソコン「Mac」でインテル製チップから自社設計チップに移行を進めており、iPhoneでも主要なワイヤレス部品で同様のことを行う計画だ。(出所:ブルームバーグ

 自社製に切り替えれば、あらゆる面でコントロールは容易になり、このリスクの時代にあっては最も適した方式なのかもしれません。ただコストをど返しにする必要があります。しかし、それもまた次の努力で克服は可能とすることもできるのでしょう。

 

 

 自社製デバイスに切り替えるかといっても、それを自社工場で作ることではないのでしょう。事実アップル製半導体は台湾TMSCで生産されているといいます。

 アップルは現在ディスプレイをサムスンやLGの他、ジャパンディスプレイやシャープ、京東方科技集団などから調達しているといいます。こうしたサプライヤーから製造パートナが選べれることになるのでしょうか。気になる選択です。

 いずれにせよ、こうしたアップルの取り組みが新たな潮流になるのでしょうか。

 

「参考文書」

iPhone製造が本格化(インド) | 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報 - ジェトロ

インドからのiPhone輸出が倍増の25億ドル強に-過去最高 - Bloomberg

 

国の古くて新しい社会課題、放置されては企業に託される解決

 

「企業は社会課題の解決で価値創出を」と、経済同友会の代表幹事の桜田氏がそう語っています。

 課題が次から次へと沸き起こるからでしょうか。

 コロナ禍が3年間にも及び未だその禍から抜け出る前に、ロシアがウクライナに侵攻し、世界経済へ大きな影響を及ぼしました。また、これをきっかけにして、政治が「安全保障」と声高に唱え始め、次の課題を作り出しています。

「ジオポリティクス(地政学)、あるいはジオエコノミー(地政経済学)、ジオテクノロジー(技術の地政学)と呼ばれるものの重要性が増した」と桜田代表は指摘し、「企業は、技術や生産などがどこでどう行われるのが良いかを分析し直さなければならなくなった」といいます。

 

 

「経営者が経営のことだけを考えていれば良い時代は終わった」、「社会課題を解決していくことに重要な価値がある」ともいいます。

経済同友会・桜田代表幹事 「企業は社会課題の解決で価値創出を」:日経ビジネス電子版

脱炭素社会に向けた取り組みのGX(グリーントランスフォーメーション)や、人権問題、あるいは従業員の満足度や幸福度を高めるEX(従業員体験)なども同じ文脈ですね。企業としてみれば、まず成長と分配ですが、さらに今の時代は「企業の価値」をどう高めていくかが重要になってきたのだと思います。(出所:日経ビジネス

 今さらと感じますが、今からでも遅くないということなのかもしれません。早急に取り組むべきなのでしょう。

 桜田氏は、自身がCEOを務めるSOMPOホールディングスが、介護事業に取り組み、そこで得られる高齢者のデータを生かしたり、ロボットなど新たなテクノロジーの導入を図り、産業の改善にも乗り出していると、その事例を示し、取り組むべき社会課題は数多くあるといいます。

(画像:デジタル庁)

古くて新しい問題

 GX、少子高齢化地政学リスクによる経済安全保障、政府が古くて新しい問題を作っては、企業にその解決をもとめるようになっていないでしょうか。

 硬直した金融政策により結果的には円安が進み、企業物価は高騰し、それが価格転嫁されるようになりました。しかし、日銀の動きは緩慢で、その背景には、低金利で延命されている中小企業や住宅ローン金利への影響などの問題があるといいます。

「日本経済へのカンフル剤と言われた異次元緩和は、今では鎮痛剤を経て麻酔になっている観がある。その結果、今では、日本経済が病気になっていると気が付きにくい。金融政策が問題を見えにくくしている状態になっている」と桜田氏は指摘します。

 失政続き堂々巡りとなって、課題を新たに定義するだけで、一向に前進していないように感じます。

 

 

正解を求めない

「円安はもっとうまく使うべき」と桜田氏はいいます。インバウンドをさらに生かし、日本のGDPの7割を占めるサービス産業を活性化させるべきといいます。

 当座をしのぐという意味ではよいのでしょうが、それで社会課題の解決になるのでしょうか。少子化シュリンクしていく国内市場だけを見ていては、否応なしに限界がありそうです。そこでパイを取り合っていては、成長の余地はありません。

 世の中は必ずしも「正解が生き残る」わけではなく、「生き残ったもの」が正しくなるのだとの意見があります。

データと論理を積み上げて正解を求めるよりも、多様な取り組みを通じて「生き残りに賭ける」ほうがスジが良いということになる。(出所:ダイヤモンドオンライン)

 

 

ペイペイは海外でも使えるようになるのか

 PayPay(ペイペイ)など国内のQRコード決済のサービスを海外でも利用できるようにするため、政府がアジア各国の当局と相互乗り入れに向けた交渉を始めるそうです。

QRコード決済、海外でも まずインドネシアと協議: 日本経済新聞

 記事によれば、まずインドネシアと協議し、シンガポールやタイなどにも拡大していくそうです。日本人旅行者は海外の店舗や屋台などで利用できるようになり、訪日客も現金がなくても日本国内で気軽に買い物などができるようになるそうです。

 ポイント経済圏の競争を醜く感じます。ポイントの乱発で疲弊しないのだろうかと心配になります。国内だけを対象にした経済圏競争ではなく、海外にも広められることはできるのか、それを考えた方が得策なような気がします。

 商品にしろサービスにしろ輸出しなければならないのでしょう。輸出で得た富を国内に還流し、国内を豊かにするとともに不安解消に努めれば、もしかしたら少子化に歯止めをかけることができるかもしれません。

 

「参考文書」

アジアの「介護サービス」を変えるシンガポール企業Homageの挑戦 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

【山口周】が選ぶ「コロナ後の世界をしなやかに生きるために読んでおきたい20冊」 | DIAMOND愛読者クラブ | ダイヤモンド・オンライン