Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

アマゾンの強さか、拡充するハードウエア、メモができるようになった「キンドル」

 

 米アマゾン・ドット・コムが9月28日、オンラインで新製品発表会を開き、スマートスピーカーなど10種類を超えるハードウエア新製品を発表したそうです。

「この仕事の醍醐味は未来を生きられることだ」と、この発表会に登壇したデバイス・サービス担当のデイブ・リンプ上級副社長がそう語ったといいます。

 ことなる分野のビジネスをこうも容易く拡大できるアマゾンの力にはただ驚くばかりです。

Amazon、スマートホームで攻勢 積極投資に寡占懸念も: 日本経済新聞

 音声人工知能(AI)技術「Alexa(アレクサ)」を軸にスマートホーム製品を展開し、それに、家の中を走り回って警備する小型ロボット「Astro(アストロ)」や健康管理端末「Halo(ヘイロー)」シリーズなどが加わり、今年も改良型が中心とはいうものの、10種類を超える新製品を発表したといいます。アマゾンのハードウエア事業の着実な進化を印象づけていると記事は指摘します。

 

 

 スマートホームでのアマゾンの強さは寡占の懸念もあるといいます。一方で、この分野で、アップルやグーグルと共通規格を策定し、ライバルと足並みをそろえる姿勢を示し、競争と協調のバランスも探っているといいます。

 こうした勢いのあるビジネスが国内企業が参入できなくってしまったことが残念でなりません。家電メーカでなくても、アマゾンのように他業界からの参入があってもいいのかもしれません。家電量販店でもいいのでしょうし、国内IT大手の楽天やZホールディングスでいいのではないでしょうか。

 楽天のネット通販事業に、ソフトバンクが挑戦するのではないかと、真意は定かではないですが、マネーポストがそう報じます。

孫正義氏「韓国版アマゾン」手中に収め、狙うは日本のEC事業か 楽天・三木谷氏との最終戦争へ | マネーポストWEB

 ソフトバンクが出資する韓国の通販大手クーパンの物流ノウハウを導入してグループ内のECを全て統合し、新たな総合ECサイトを立ち上げることは十分に考えられると記事は指摘します。

ソフトバンク傘下のZホールディングスはヤフーとLINEの経営を統合し、ファッション通販の『ZOZO』や日用品通販の『LOHACO』を持っている。大型ECを展開する下地は着実に整ってきています。(出所:マネーポストWEB)

 Zホールディングスがスマートフォン決済のPayPayを子会社化したといいます。この強みを活かして、クーパンの物流を含めたビジネスモデルが構築されたら、楽天にとって大変な脅威になるといいます。

 適正な競争で、利便性が向上していけばよいのですが、つまらぬことで過当に競争していては意味がなくなるのではないでしょうか。

 

 

 米アマゾン・ドット・コムが、物流施設などで働く従業員らの平均初任給を10月から約6%引き上げて時給19ドル(約2740円)超にすると発表したといいます。

米アマゾン、初任給6%賃上げ: 日本経済新聞

 インフレが高進し、また労働市場の需給逼迫が続いていることが背景で、賃上げで人材採用を優位に進める狙いがあるといいます。

 また、新商品発表会では、電子書籍端末「Kindleキンドル)」に、メモを書き込めるようにした新製品を発表したといいます。 年末商戦に合わせて販売を始めるそうです。

Amazon、メモが書けるKindle Scribe 年末商戦へ新製品: 日本経済新聞

 日本経済新聞によれば、専用ペンを使って読書中に印象に残った内容を「付箋」に記録したり、パソコンから取り込んだPDFファイルに手書きの記述を加えたりできたりするそうです。紙の本にメモを書きいれるような感覚で使えるのでしょうか。

 こういうところがアマゾンの良さなのかもしれません。こんなビジネス感覚を日本企業にももってもらいたい、そう感じます。

 

「参考文書」

ヤフーとLINEのZHD、PayPay子会社化への冷めた視線: 日本経済新聞

 

なぜ東芝は行き詰ったのか、改革は経営危機になってから行うものなのか

 

 東芝がどういう形で再建していくのか気になります。

何とか危機は乗り越えたものの、上場維持のためになりふり構わず採用した増資と事業売却といった手段が、後に「迷走」の遠因となる。

今では、東芝原発事業などは事実上の国有化し、残りの事業は売り払うといった「東芝解体論」までもささやかれている状況だ。(出所:Newspicks)

 東芝といえば、世界に先駆けてノートパソコンを世に広めるなど、世界のイノベーションをリードしてきた名門中の名門とNewspicksはいいます。

 

 

 経営の混乱の続く中、島田太郎氏が3月から社長を務めています。

【島田太郎】「東芝」がなくなることは、日本の損失だ

 その島田氏は、「コア(中核)事業と呼ばれていても、事業そのものはあくまでも「結果」、本当に大切にすべきなのは、特定の事業ではなく、「世の中にないものをなんでも作る」というコアのバリュー(価値観)」といいます。

「いろいろなものを生み出せる環境が、東芝のコアバリューの源泉ではないでしょうか」と語っています。

「この事業だけをやる会社です」となるなら、東芝の看板を下ろした方がいい。東芝東芝でなくなることは、日本全体にとっても巨大な損失だと思いますね。(出所:Newspicks)

  世界に先駆けて、ノートパソコンの販売を始め、世の中にないリチウムイオン電池SCiB」を発明したりと、それがこれまでの東芝でした。

 一方、東芝が近年、売却した事業がことごと「好調に推移」したり、または「見事に復活」しているといいます。

東芝に売られた事業が軒並み好調な事情:ぐんぐん成長(1/3 ページ) - ITmedia ビジネスオンライン

「医療機器事業」「白物家電」「パソコン」「テレビ」などがその例に挙げられるといいます。

東芝社内に抱え込まれていた間は、「事業の特性や勘所を理解できない」親会社のトップ経営陣の「口は出すけど金は出さない」態度のせいで成長の芽を摘み取られていたのが、東芝の「くびき」を逃れたことで大きく飛躍できるようになったことが分かる。(出所:ITmedia ビジネスオンライン)

 

 

 これまでに会った東芝のエンジニアは様々な分野に挑戦し、結果を出し続けていることに感心されました。それが東芝の競争力の源泉なのだろうと感じたものです。しかし、その多数いるであろう有能なエンジニアを、これまでの経営陣がうまく活用できていないとも言えそうです。

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 エンジニアによって次々と新たな事業が生み出され、巨大コングロマリットかのようになったのはいいけれど、経営側にそれを運営する能力がないというだけのことだったのかもしれません。途方もない成長を追わず、無理して実現できないことを追わなければ経営危機に陥ることもないのでしょう。

 経営危機になって慌てふためき、急いで構造改革するくらいなら、日頃から事業ポートフォリオを見直して、本体から分離することで伸びる事業があれば、積極的に売却するのも手なのかもしれません。その方が、「世の中にないものをなんでも作る」という東芝のコアバリューが活きるのかもしれません。

 右肩上がりの成長戦略を描くことだけが経営ということではないのでしょう。持続的な成長を達成できるよう、毎年毎年小さな改革を実行していく。そのために、これまでとは違った経営指標での判断も必要になるのではないでしょうか。

 

 

 再編策を外部から募集するなど異例の手続きを進めていた東芝が、複数の投資ファンドからその提案を受け取ったと発表しました。

東芝 複数の投資ファンドから再編策の提案 具体的な協議へ | NHK

 パートナー候補との折衝を今後数カ月かけて起こっていくそうです。今度こそ、東芝の復活を期待したいですね。

 

「参考文書」

東芝、経営再建で複数提案を受領 今後「パートナー候補と折衝」 | ロイター

 

Web3はGAFAに代わって、新たな社会インフラになるのだろうか

 

 インターネットが登場して30年余り、気づけば「GAFA」がプラットフォーマとしての地位を確立し、だいぶ寡占化が進みました。

 市場を独占するようになれば、当然ながら批判も増え、規制しようとの動きが強まります。

 欧州がその最先方のようですが、今度は、ドイツテレコムなど欧州通信事業者が、「GAFA」に通信網運営コストの一部負担を求める声明を発表したといいます。

欧州通信事業者、GAFAにインフラコストの一部負担を要求 | ロイター

欧州連合(EU)欧州委員会は、域内の5G展開やファイバーケーブル網整備にかかる費用を一部GAFAに負担させるかについて、双方から意見を聞く準備をしている。

欧州通信事業者の団体は5月、アルファベット傘下のグーグル、メタ傘下フェイスブック、ネットフリックス、アップル、アマゾン、マイクロソフトの米巨大テック6社が世界の通信トラフィックの半分以上に関係しているとの報告をまとめている。(出所:ロイター)

 

 

 かつてIBMメインフレーム市場で大きなシェアを握り、その弊害が指摘されるようになり、反発が起こりました。それがアップルのような企業が誕生するきっかけになりました。

 SNSが今、曲がり角を迎えているといわれます。デジタルネイティブの世代が増えるにしたがって、使われ方も次第に変わり始め、フェイスブックやツィーター、LINEまでもが古めかしいものとみられるようになったといわれているようです。

 こうした背景もあってのことか、暗号資産やブロックチェーン技術を活用したインターネットの新しい概念「Web3」に注目が集まっているようです。ここから次の「GAFA」が生まれるのでしょうか。

博報堂、ウェブ3で日本発のブロックチェーン企業と合弁設立-関係者 - Bloomberg

 総合広告サービス大手の博報堂が、「Web3」の普及に向け、日本人起業家が率いるシンガポール企業と合弁会社を年内にも立ち上げるといいます。

 異なるブロックチェーン間をつなげ、Web3のサービスを利用しやすくするシステム パブリックブロックチェーンアスターネットワーク」を開発するステイクテクノロジーズと博報堂が手を組み、この技術を使ってWeb3への企業参入を支援していくそうです。

 

 

 インターネットの登場で、それまでのメインフレームは古めかしい長物になってしまいました。インターネットに注目が集まると参入者が増え、バブルが起きます。膨らんだ泡はやがてはじけ、多くのIT企業が淘汰されていきました。その中から今日のGAFAが生き残り、そして、クラウドの時代へ移行としました。この間、IBMもまたビジネスを転換させ、ソリューションビジネスで新たな牙城を築きました。

 インターネットが誕生して30年、もうそろそろ革新が起きてもいい頃なのかもしれません。新興勢力の台頭で、GAFAもまたIBMのようビジネス形態を変化させることになるのでしょうか。

「メタバース」という言葉は、米アップルの拒絶で歴史の片隅へ:日経クロストレンド

 それとも違った形態でWeb3が拡がり、新たな社会インフラの一角を担うようになるのでしょうか。

 

「参考文書」

ザッカーバーグが米国の富豪トップ10から脱落、11兆円の資産減 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

 

【経済安全保障】進み始めた中国離れ、国内回帰、フレンドショアリングへ

 

「デカップリング」、中国との経済的つながりを断つ可能性は低いものの、サプライチェーンはこれまでと比べ統合されたものとはならない、とウォールストリートジャーナルが指摘しています。

「中国抜き」サプライチェーンの現実味 - WSJ

 地政学リスクの高まりが、サプライチェーン供給網を混乱させているといいます。米国をはじめ、国内回帰が活発化し、「世界の工場」中国から移転させる動きが加速しているといいます。

 欧州企業においても「中国離れ」が広がっているとの見方を、EU欧州連合の中国進出企業でつくる「中国EU商会」の会長が示したといいます。厳格なゼロコロナ政策が理由になっているようで、別の新興国に拠点をうつす動きも出始めているそうです。

 

 

 朝日新聞によると、「EU域内から2020年以降、中国に新規参入した企業は一つも無かった」と、中国EU商会の会長は説明したそうです。

欧州企業、中国で新規参入ゼロ チャイナリスクで第3国へ関心高まる:朝日新聞デジタル

「昨年末以降、企業はアジア各国、インド、トルコなど他国に対して強い関心を向けている」。(出所:朝日新聞

 中国への依存度を減らす動きは日本の製造業でも広がってきているといいます。

 ダイキン工業は中国製部品が無くてもエアコンを生産できるサプライチェーン 供給網を2023年度中に構築するそうです。省エネルギーなど中核機能にかかわる部品を日本国内で内製化するほか、取引先に中国外での生産を要請するといいます。

 ダイキンの他にもこうした動きが日本企業にも出てきているようです。さらに加速していくことになるのでしょうか。

 新型コロナの感染拡大、ウクライナ危機を経て、グローバリゼーションがピークアウトしたようだといわれます。

グローバリズム衰退と世界の危機 岩田一政氏: 日本経済新聞

世界の供給網は生産拠点を国外に移す「オフショアリング」から、国内回帰の「リショアリング」、友好国や近隣国での立地を重視する「フレンドショアリング」「ニアショアリング」の時代に入った。(出所:日本経済新聞

 ただ「フレンドショアリング」は、どの国がフレンドか明確ではないことが問題といいます。そのためなのでしょうか、米国はEU 欧州連合とは「貿易技術評議会(TTC)」、アジア太平洋諸国とは「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を通じて、ロシア、中国に対抗する強靱な供給網の構築を目指しているといいます。

 

 

 経済の観点からすれば、自由な交易確保が最善の選択であり、自由な経済秩序と世界平和の維持は、民主主義国共通の課題としながらも、「専制主義国による武力行使は、世界の脅威」と日本経済新聞は指摘します。

世界は今、心の内なる道徳律を貫き、世界の平和と核兵器の恒久廃絶を実現する「毎日カント主義者」を必要としている。(出所:日本経済新聞

 現実にプーチンのロシアがウクライナに侵攻し、リスクといわれたものが現実化してしまいました。こうした世界にあって、リスクの高いからそろりそろりと抜け出ることは賢明な選択であることは間違いではないのでしょう。分断化を促進するような行為は慎むべきなのでしょうが、経済安全保障の観点からすれば、やはりリスク回避は早めにしておくことが肝要ということなのでしょうか。

 

「参考文書」

ダイキン、中国部品無しでもエアコン生産 有事に備え: 日本経済新聞

ダイキン 半導体を自社開発へ 効率化、安定供給に - 産経ニュース

 

【資本主義と人権】犠牲を強いる風習、価値観、規範のアップデートが求められる理由

 

 米アマゾンが配送ドライバーの処遇改善のために今後1年間で、米国で4億5000万ドル(約650億円)を投じると発表したそうです。提携先の運輸会社で働くドライバーを対象に大学の学位などを取得できる教育プログラムを導入し、年金制度も提供するといいます。

Amazon、配送ドライバーの処遇改善に650億円投資: 日本経済新聞

 アマゾンは既に物流拠点で働く自社の時給制の社員には、教育プログラムを提供しており、対象を提携先にも広げる形になるそうです。

 米国政府の施策や補助金があっての行動なのでしょうか。

 

 

 日本にはパワハラやセクハラに対する法律も一応あります。それなのになぜ奴隷的な労働や、パワハラ・セクハラがなくならないかというと、それを職場で実際にやめさせるような人権の規範や力がないからです。その結果、少なからぬ被害者が泣き寝入りをしている。その意味で言うと、法律をつくることよりも、規範をしっかりつくり、マジョリティーの側の価値観をアップデートしていく必要があると思う。(出所:日経ビジネス

 人新世の「資本論」の著者斎藤幸平氏がそう述べています。

 一方、国は、企業が人権対応を進めるための指針「責任あるサプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン(案)」を作成、公表したといいます。

経産省、企業に人権の指針 | 日経ESG

 日経ESGによると、中小企業を含む全ての企業に人権配慮を促すもので、実用的なのものといいます。人権対応の進め方や手順を分かりやすく解説し、企業事例を数多く盛り込んでいるそうです。

国際規範をコンパクトに解説している点や、新疆ウイグル問題やミャンマー、ロシアなどを想定した紛争地域での事業・調達におけるデューデリの在り方や責任ある撤退に関して、重点的な記載がある点は評価できる。(出所:日経ESG)

 一方、「外国人労働者」や「国際調達」についてなどの記述内容に乏しさがあるといいます。

 こうしたガイドラインがないよりは意識づけとの意味からしてもあったほうがよいのでしょうが、まずは規範を身につけ、ルールを守るという姿勢を醸成しなかれば、絵にかいた餅にならないでしょうか。

 

 

人権対応をやらないと海外の企業から取引を打ち切られる、機関投資家から投資を打ち切られるリスクがある――そうしたことも、人権対応の動機の1つにはなるかもしれません。けれども、自分たちの社会をもっと豊かで、人々が傷つかないものにしていくのは、投資家の金が欲しい、とか儲(もう)かるからやるという次元の話ではない。そんな問題とは関係なしに、必ず守らなければいけない最低限のルールなはずです。(出所:日経ビジネス

斎藤幸平氏「資本主義のいい話は犠牲の上に成立している」:日経ビジネス電子版

 自社ばかりでなく供給網 サプライチェーン全体を通して人権が守られるべきなのでしょう。そのためには、米アマゾンのようにまずは自社内から点検し、人権侵害がないか点検すべきなのかもしれません。それは国にも同じことが言えるのでしょう。

 国が範を示すべきなのでしょうが、どうにも偏った価値観を押し付けているきらいがありそうです。

 折角ガイドラインを作成したのだから、これを機に、国も企業も今一度自社から点検、見直しし、より良くするための改善を始めるべきなのでしょう。そうした活動を通して、規範意識が育つのではないでしょう。ガイドラインを継続的にアップデートしていくことは当然のこととして。

 

 

【デジタル化の弊害か】従業員の過負荷に陥った米スタバ、創業者が復帰して進める改革で2桁成長を目指す

 

 創業者ハワードシュルツ氏がCEOに復帰した米スターバックスが、労働環境の改善を求める従業員の声に応え、フラペチーノなど冷たい飲み物などを、これまでより大幅に短縮して作れる設備を北米の店舗に導入するといいます。

 株価が低迷していたスタバがまたシュルツ氏のもと、勢いを取り戻することになるのでしょうか。

米スタバ、北米店舗に650億円投資 効率向上へ新設備: 日本経済新聞

 日本経済新聞によると、このための投資額は4億5000万ドル(約650億円)になるといいます。また、今後3年間で米国で約2000店舗の新規出店を計画し、デリバリー専用の店舗も増やすといいます。こうした対応で、オンライン注文が急増したことで高まった負荷を軽くするそうです。

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに増えたオンライン注文は全注の4分の1近くを占め、注文の6割が冷たいコーヒー飲料だ。

新たなシステムではドリンクに使う氷の自動供給などで作業を簡略にして、モカ・フラペチーノを作る時間を86秒から35秒に短縮できるという。すでに一部店舗では実験的に導入している。(出所:日本経済新聞

 こうした戦略の実行で、売上高と1株当たり利益の2ケタ成長を見込むそうです。また、シュルツCEOの後継となるラクスマン・ナラシムハン氏は「実店舗とデジタルをつなぐ体験を提供し、消費者の期待を超えていく」と述べたといいます。

 ナラシムハン氏は2023年4月に、シュルツ氏に替わりCEOに就くそうです。

(写真:スターバックスコーヒージャパン

 コロナ禍においてデジタル化を進めた結果、顧客の利便性は向上したのかもしれませんが、それによって従業員の負担を増やしたということなら、デジタル化の悪い事例ということだったのでしょう。

 

 

 創業者が復帰して改革が実行され、そこから新たな戦略が始まり、それによってまた次の成長を目指すことになるのでしょうか。

 単なるデジタル化でなく、改革が伴ったものであれば、シュルツ氏がわざわざ復帰することもなかったのでしょう。

 慣れ親しんだ古い習慣が改革を拒むのかもしれません。部分最適では誰かが犠牲にならなければなりません。全体最適を目指すのであれば、それに見合う投資も厭わないとの信念が求められるのかもしれません。

 改革とはそういうものではないでしょうか。また、その改革が実ると、あたかも「三方よし」となり、顧客、従業員、社会にとっての便益となっていくのでしょう。 そして、それがやがて変革へと誘っていくのではないでしょうか。

 継続的な改革が求められているのでしょう。

 DX、デジタル改革が進まない日本の企業も、もしかしたらシュルツ氏が復帰する前のスタバと同じ状況なのかもしれません。古い習慣から抜け出るには新しい力が求められているのではないでしょうか。時にそれは世代交代なのでしょう。

 

 

【サスティナビリティ】持続可能な社会は「脱成長」を受け入れることはできるのだろうか

 

「多くの企業がサステナブルな製品を開発し、新しいラインアップをつくるけれども、従来のラインアップにプラスオンしてつくるので在庫は増える」と、「すべての企業人のためのビジネスと人権入門」の著者 羽生田慶介氏が指摘します。

 そうした企業には、新しい製品ラインを1つ作ったなら、必ず既存のラインを1つ減らすようにアドバイスしているそうです。

 

 

「企業がSDGsに取り組むとき、余計な製品・サービスアイテムを減らすというのは、重要な観点」といいます。

商品アイテム数を減らすと企業の売り上げが下がり、経営にマイナスだと思う人がいるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。

仮に利益が増えなくても、在庫が減るだけでキャッシュが増えるので、企業にとってはハッピーになり得ます。(出所:日経ビジネス

人権問題についても同様で、正面からやろうとすると抵抗が生まれるかもしれないけれど、過剰なところを減らすことが人権問題の解決にもつながるはずとなれば、企業は取り組みやすくなるといいます。

 こうした指摘は「脱成長」と親和性があると、『人新世の「資本論」』の著者の斎藤幸平氏はいいます。

斎藤幸平氏「資本主義のいい話は犠牲の上に成立している」:日経ビジネス電子版

「脱成長」を目標とすることは受け入れがたいものがあります。しかし、結果としての脱成長なら受け入れることはできるのではないでしょうか。

 発想の転換に加え、価値の見直しが必要になっているのかもしれません。

 

 

「言うのは易しで行うは難し」、どこからアプローチすればよいのでしょうか。

 これまでは、従来のプロダクトアウト的な発想からマーケットイン「顧客の欲しいものをつくる」べしとされてきました。

 これに対し、プロダクトアウトとは「企業側の都合で商品を開発する」を指します。企業の自己満足であるとの見方がある一方で、過去の革新的な製品はプロダクトアウトから生まれたといいます。

プロダクトアウトとは? 顧客の潜在的なニーズを取り込む製品づくり:日経ビジネス電子版

 利益第一主義に立脚し、顧客を思えばマーケットイン的な思考に有用性はあったのでしょう。しかし、その結果が、今日というのであれば、こうした発想から脱却すべきといことなのでしょう。

 記事は、プロダクトアウトによって生み出された「定番のヒット商品」や「革新的な製品」を紹介しています。これらは「顧客がまだ気づいていないニーズに応えている」といい、結果的に「顧客を軽視している」わけではないといいます。

 アプローチを変えることで、社会課題の解決に近づき、サスティナブルな商品を生み出し易くなるのかもしれません。

 

 

 大規模な電力貯蔵に好適な「フロー型亜鉛空気電池」を用いた蓄エネルギー技術の開発を開始したとシャープが発表しました。2025年度以降の実用化を目指すそうです。

カーボンニュートラルの実現に向けた「亜鉛による蓄エネルギー技術」の開発を開始|ニュースリリース:シャープ

 再生可能エネルギーの導入が進む一方、その出力変動を平準化させるために、大規模な蓄電システムが求められるようになっています。 

(画像:シャープ)

 シャープが進める方法によれば、原料は安価に調達できるようになり、蓄電容量を増やせば増やすほど、蓄電コストが下がるという既存の蓄電システムにはない著しい特長を備えているといいます。

 

 

 こうした技術が実用化されることで、従来の製品が廃れ淘汰されていく。その流れに抗わず、このサイクルが繰り返されていけば、持続可能な社会に近づいていくのではないでしょう。

 もしかして、この時成長スピードが鈍化してしまうのかもしれません。

 これを受け入れるのか否かでは今後が変わっていくことになりそうです。今は一時的な停滞を受け入れ、課題解決に優先順位を与えるべきということなのでしょう。それは持続可能性の中に「脱成長」を受け入れるということなのかもしれません。

 

「参考文書」

シャープが新型亜鉛空気電池、大型化で蓄電コストがLIBの数分の1に | 日経クロステック(xTECH)