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【サスティナビリティ】持続可能な社会は「脱成長」を受け入れることはできるのだろうか

 

「多くの企業がサステナブルな製品を開発し、新しいラインアップをつくるけれども、従来のラインアップにプラスオンしてつくるので在庫は増える」と、「すべての企業人のためのビジネスと人権入門」の著者 羽生田慶介氏が指摘します。

 そうした企業には、新しい製品ラインを1つ作ったなら、必ず既存のラインを1つ減らすようにアドバイスしているそうです。

 

 

「企業がSDGsに取り組むとき、余計な製品・サービスアイテムを減らすというのは、重要な観点」といいます。

商品アイテム数を減らすと企業の売り上げが下がり、経営にマイナスだと思う人がいるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。

仮に利益が増えなくても、在庫が減るだけでキャッシュが増えるので、企業にとってはハッピーになり得ます。(出所:日経ビジネス

人権問題についても同様で、正面からやろうとすると抵抗が生まれるかもしれないけれど、過剰なところを減らすことが人権問題の解決にもつながるはずとなれば、企業は取り組みやすくなるといいます。

 こうした指摘は「脱成長」と親和性があると、『人新世の「資本論」』の著者の斎藤幸平氏はいいます。

斎藤幸平氏「資本主義のいい話は犠牲の上に成立している」:日経ビジネス電子版

「脱成長」を目標とすることは受け入れがたいものがあります。しかし、結果としての脱成長なら受け入れることはできるのではないでしょうか。

 発想の転換に加え、価値の見直しが必要になっているのかもしれません。

 

 

「言うのは易しで行うは難し」、どこからアプローチすればよいのでしょうか。

 これまでは、従来のプロダクトアウト的な発想からマーケットイン「顧客の欲しいものをつくる」べしとされてきました。

 これに対し、プロダクトアウトとは「企業側の都合で商品を開発する」を指します。企業の自己満足であるとの見方がある一方で、過去の革新的な製品はプロダクトアウトから生まれたといいます。

プロダクトアウトとは? 顧客の潜在的なニーズを取り込む製品づくり:日経ビジネス電子版

 利益第一主義に立脚し、顧客を思えばマーケットイン的な思考に有用性はあったのでしょう。しかし、その結果が、今日というのであれば、こうした発想から脱却すべきといことなのでしょう。

 記事は、プロダクトアウトによって生み出された「定番のヒット商品」や「革新的な製品」を紹介しています。これらは「顧客がまだ気づいていないニーズに応えている」といい、結果的に「顧客を軽視している」わけではないといいます。

 アプローチを変えることで、社会課題の解決に近づき、サスティナブルな商品を生み出し易くなるのかもしれません。

 

 

 大規模な電力貯蔵に好適な「フロー型亜鉛空気電池」を用いた蓄エネルギー技術の開発を開始したとシャープが発表しました。2025年度以降の実用化を目指すそうです。

カーボンニュートラルの実現に向けた「亜鉛による蓄エネルギー技術」の開発を開始|ニュースリリース:シャープ

 再生可能エネルギーの導入が進む一方、その出力変動を平準化させるために、大規模な蓄電システムが求められるようになっています。 

(画像:シャープ)

 シャープが進める方法によれば、原料は安価に調達できるようになり、蓄電容量を増やせば増やすほど、蓄電コストが下がるという既存の蓄電システムにはない著しい特長を備えているといいます。

 

 

 こうした技術が実用化されることで、従来の製品が廃れ淘汰されていく。その流れに抗わず、このサイクルが繰り返されていけば、持続可能な社会に近づいていくのではないでしょう。

 もしかして、この時成長スピードが鈍化してしまうのかもしれません。

 これを受け入れるのか否かでは今後が変わっていくことになりそうです。今は一時的な停滞を受け入れ、課題解決に優先順位を与えるべきということなのでしょう。それは持続可能性の中に「脱成長」を受け入れるということなのかもしれません。

 

「参考文書」

シャープが新型亜鉛空気電池、大型化で蓄電コストがLIBの数分の1に | 日経クロステック(xTECH)