Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

円安、カントリーリスクを再評価すれば、サプライチェーンを抜本的に見直すとき

 

 iPhoneなどのアップル製品の生産を九州に誘致するのはどうかと、日本経済新聞が低減する。台湾の半導体受託製造会社TSMC台湾積体電路製造の工場が熊本県で建設が始まり、足下の円安が理由という。

日本製iPhoneいかが 円安をハイテク誘致の好機に: 日本経済新聞

 日本は中国より米国に近く、しかも2021年のiPhoneの出荷台数(約2億4000万台)では、全体の3割以上を日米向けが占めると記事は指摘する。アップルにとって、委託先の工場が増えるが、供給網の短縮につながる利点はあるという。

TSMCの誘致が閣議決定された21年12月6日の為替レートは1ドル=113円だった。足元は1ドル=127円として、14円の円安はドルベースの投資額が抑えられ、悪い話ではないだろう。(出所:日本経済新聞

 円安が定着、このまま推移すれば、日本の物価は安く映り、その中には人件費も含まれる。

 

 

 まんざら悪くないのかもしれない。アップルの生産を担う台湾のODM 鴻海(ホンハイ)精密工業の代役が存在するのかという課題があるのだろう。また、希薄化した部品や素材産業の集積なども課題になりそうだ。ただ、現にアップルと取引を有する国内企業はそれなりに多数あるのだから、これら企業の連合体で対応できればいいのかもしれない。

 アップル製品の中で大物部品となる筐体や基板実装ができるようになれば、夢物語ではないのだろう。

 先進国でリセッション景気後退の可能性が指摘されている。外需だけに依存するだけでも厳しいそうだ。結局、コスト圧縮に努めざるを得ない。

 サプライチェーン見直しの機運が高まっているのだろうか。QCDなど様々な要素の検討が必要なのかもしれないが、将来にわたりどの国で何を生産するのが最も効率的か、カントリーリスクを含めて検証することが求められていそうだ。

 

 

 太陽インキ製造は、アップル向けの製品を手がけ、アップルからの要求に従い、その製造を100%再生可能エネルギーで賄っているという。太陽インキ製造の関連会社が太陽グリーンエナジーが国内で14ヵ所目となる水上太陽光発電所を開所したという。

ため池で1000世帯分を発電、Apple向け製造の太陽HDが14カ所目の水上太陽光:太陽光 - スマートジャパン

 スマートジャパンによれば、これにより、太陽グリーンエナジーによる年間想定発電量は約25GWhとなり、太陽ホールディングスのエレクトロニクス事業における電力消費量を上回る規模だという。

(写真:太陽ホールディングス)

 アップルと取引することは様々な要求事項があり、容易ではないが、それが誘因となって、設備投資を加速され、効率化が進み、またそればかりでなく、脱炭素にもいち早く貢献できるようになるのかもしれない。

 ハードルは高いかもしれないが、日本経済新聞の提言に従ってみれば、思わぬ副次効果もあるのだろう。

 

「参考文書」

【太陽グリーンエナジー】兵庫県に1ヵ所、新たな水上太陽光発電所を開所|太陽ホールディングス株式会社

 

品薄となる家電、調達難で業績悪化するバルミューダ、逆風をものともせず成長するテスラ

 

 中国のゼロコロナ政策によって、サプライチェーンがさらに混乱しているといいます。半導体不足も未だに解決されず、色々な商品の品薄が深刻のようです。

「販売できない…」家電・家具など一部品薄に“上海ロックダウン”の影響深刻 日本の損失「月1000億」試算も | TBS NEWS DIG

 TBSによれば、無印良品では、棚やテーブル・ソファなど、約40品目が販売停止になっているといいます。また、家電においても、調理家電に、エアコン、洗濯機などが品薄になっているそうです。

 中国頼りが鮮明になっているということでしょうか。企業業績や日本経済が中国によって左右され続けるのは如何なものでしょうか。少々疑問に感じます。ここ最近では、経済の安全保障が説かれるようになっています。その意味がよくわかります。

 

 

 バルミューダフォンを展開するユニークな家電メーカのバルミューダは、円安で業績が悪化したといいます。売上高は前年より10.5%増加しましたが、営業利益は62.0%も減少したそうです。

バルミューダ、原価率上昇、部品調達難で大幅減益--「ピンチをチャンスに変える取り組みを」 - CNET Japan

 バルミューダの寺尾社長はこの状況を以下のように説明したといいます。

「原因はシンプルで明確」と前置きし、「円安やサプライチェーンの混乱により、製品原価率が上昇。各部品の調達難が発生し、良くない状況が続いている。設計変更などにより、商品出荷を止めずにきており、設計変更はコストダウンにつながることもある」などと説明。ピンチをチャンスに変える取り組みを進めていることを強調した。(出所:c/net Japan)

「原価の高止まりし、輸送費高騰の影響も受けている。さまざまな形で、継続的に、原価低減活動をしていかなくてはならない」。

 寺尾社長は、「対策の1つに、商品そのものの再設計がある」と説明したといいます。入手難で高価になった部品をより廉価部品に置き換えると同時に、部品の集約化、パッケージ化してのコスト低減を進めるというところでしょうか。

「円安はバルミューダにとっては悪化方向に進む」とも述べたそうです。

 ファブレスで生産工場を海外におき、外貨取引で輸入しているのであれば、円安は身に応えるのでしょう。円安の上昇率をコストダウンでカバーすることは相当な努力を要するはずです。

 

 

 バルミューダとテスラを比較することは酷なことかもしれませんが、EV電気自動車の米テスラの22年1-3月(第1四半期)の決算は、利益と売上高が市場予想を上回ったといいます。イーロン・マスクCEOは、サプライチェーンの問題が続いても生産が年内に加速すると見通しを示したといいます。

テスラ、1-3月期は市場予想上回る過去最高益-株価上昇 - Bloomberg

 ブルームバーグによれば、利益率の高い車種の販売増加や経費削減が寄与し、テスラの自動車事業の粗利益率は32.9%に改善したといいます。

 

 

 また、テスラは、「サプライチェーンを重視し、材料が入手困難になる状況からできるだけ距離を置く意思と戦略」を業績発表の資料で示したといいます。

テスラの奇策、既に半数がニッケルを使わない電池の搭載車 | 日経クロステック(xTECH)

 そして、ニッケルやコバルトを含まないLFP リン酸鉄リチウムバッテリーをテスラ車の半数に搭載するに至ったといったそうです。

 ニッケルやコバルトを使わない LFPバッテリーは、現下の国際情勢からすれば、調達面で有利ですが、性能面では充電1回当たりの航続距離を長く取れないといわれ、難があるというのが常識だったといいます。その障壁を難なく乗り越え、競争力ある供給網を作り上げていることに驚くばかりです。テスラの強みはソフトとか色々言われますが、こうしたことこそ真の強みなのかもしれません。

 バルミューダも国内メーカとして、テスラをベストプラクティスとし、それに近づいていって欲しい、そう願わずにはいられません。

 

「参考文書」

トヨタやソニーなど世界の180社余りに影響-中国「ゼロコロナ」政策 - Bloomberg

寺尾社長「BALMUDA Phoneはネバーギブアップで継続改善」 バルミューダ決算 - ITmedia Mobile

 

躓くEV新興のリヴィアン、重く圧し掛かる半導体不足、ヤマトのEVシフトは順調に進むのか

 

 自動車産業の生産遅延はもはや慢性化し、新常態と言っても過言でもなさそうだ。ロイターによると、ホンダは、部品調達や物流の遅延で5月の国内工場稼働率が約8割になる見通しだと発表したという。

 米国では、第二のテスラと目されていた「リヴィアン」が半導体不足などに苦しみ、2022年1~3月期のEV生産台数が2553台にとどまっているという。

米新興EVリヴィアン、しぼむ「第2のテスラ」への期待: 日本経済新聞

リヴィアンは供給面の制約を理由に、前回の決算を発表した3月に22年の年間生産計画を2万5000台に半減している。

今回は生産効率が改善していることなどを理由に年間生産計画を維持したが、半導体をはじめとするサプライチェーン(供給網)の制約は続いている。4分の1が経過した3月末時点の生産計画の進捗率は10%にとどまった。(出所:日本経済新聞

  そればかりではない。25年に米南部ジョージア州に新工場を立ち上げ、増産を計画しているというが、金利上昇が今後の成長戦略の妨げにはならないかと危惧があるという。

 状況が悪化している中で、船出しなければならないのは後発メーカの産みの苦しみなのかもしれない。

 

 

 EV市場を牽引するテスラもかつてはたびたび資金難に陥ったが、「モデル3」の量産化を何とか軌道に乗せて、何とかそれを乗り切った。コロナ渦の初期、みながコンサバになった時期にも、生産計画を引き下げなかったことが功を奏し、半導体などの調達で優位な立場を築くことに成功したと日本経済新聞は指摘する。

 日本国内では、ヤマトホールディングスが、2050年の温室効果ガス排出実質ゼロに向け、2030年の削減目標と計画案を公表した。それによれば、EV車両を20,000台導入するなどして、GHG排出量を2020年度比で48%削減するという。

ヤマトHD、脱炭素へEV2万台 810拠点に太陽光設備も: 日本経済新聞

配送車のEV化に加えて、30年までに事業所や物流センターの建屋など810カ所に太陽光発電設備を導入する。EVを使った配送などで使う電力全体の7割を再生可能エネルギーでまかなう。保冷輸送などに使うドライアイスの使用もゼロにする。(出所:日本経済新聞

 ヤマトは昨年21年11月、日野自動車のEVトラック2台を配達に使用する実証実験を始めた。実証に使用される「日野デュトロ Z EV」は、超低床構造で、これまでの車両と同様にウォークスルー構造で、運転席から荷室への移動がしやすく、作業性向上に役立つとされる。

(写真:ヤマトホールディングス

 ヤマトのEV化計画は順調に進むのだろうか。トラックなどを手がける商用車メーカも乗用車同様に半導体不足に苦しみ販売台数を落としているという。「半導体をはじめとする部品不足で、生産を増やせない状況は各社に共通している」と日本経済新聞は指摘する。これにエンジンの不正問題が日野自動車には重く圧し掛かっている。

 ヤマトのEV化計画は、実証実験から言えば、日野自動車がEV化の有力候補に見えるが、そのまま進むことはあるのだろうか。それとも老舗同士が協力し合って、脱炭素の時流に乗って、EVシフトを完遂してしまうのだろうか。

 

「参考文書」

ホンダの国内工場、5月稼働率は約8割 部品調達や物流遅延 | ロイター

2050年温室効果ガス排出実質ゼロに向け2030年の削減目標を具体化 | ヤマトホールディングス株式会社

ヤマト運輸と日野、超低床・ウォークスルーの小型BEVトラックの実証実験を開始 | ヤマトホールディングス株式会社

大型トラック国内販売、4月2割減 日野自は4割減: 日本経済新聞

 

九州はシリコンアイランドとして復活するか、世界トップの半導体受託生産TSMCの工場建設が始まる

 

 半導体受託生産で世界最大手のTSMC 台湾積体電路製造が九州熊本に進出を決め、工場建設が始まったという。TSMCの日本の子会社JASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)が熊本県菊陽町と立地協定を締結、2024年12月からの出荷を目指すそうだ。半導体ウェーハを月間5万5000枚製造する予定という。

TSMC熊本工場が建設着手~24年12月の本格稼働目指す(台湾新聞)

 協定締結式にJASMの堀田社長が出席し、 「九州そして熊本が、将来世界における一大半導体生産地域となる大きな可能性があると期待しています」と話したという。

雇用は約1700人を計画し、このうち7割の人員を新規雇用もしくはアウトソーシングする見込み。技術者約320人はTSMCから出向する見通し。すでに台湾から技術者10人とその家族が熊本入りしている。また、ソニーグループからも約200人が出向し、残りの約1200人を新規採用や派遣で確保する。技術系新卒の募集の開始も明らかにした。(出所:台湾新聞)

 ものづくりの工場ができれば、雇用が増える。また工場に関わる産業の発展の機会ともなる。久々の明るいニュースのような気がする。

 

 

 そうはいえども、今すぐに半導体不足の解決には貢献できない。半導体不足は未だ尾を引き、解消されていないという。これに中国上海のロックダウンの影響を受け、自動車産業は減産を強いられ、新車販売も低迷する。

【メーカー別一覧】半導体不足で低迷続く新車販売、5月以降の見通しは?|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社

 ニュースイッチによれば、軽自動車の台数は11か月連続で減少しているという。ここ数年で見られない落ち込みになっているそうだ。5月も大手メーカーにおいて半導体不足などによる工場停止の発表がされるなど、依然として不透明な状況が続くという。

 一方、米アップルの業績は相変わらず好調のようだ。2022年度第2四半期(2022年1月〜3月)の業績を発表し、Macシリーズの好調により、同四半期としては過去最高の売上高を記録したという。

Appleの2022年度1月〜3月期売上高、Mac好調で四半期売上高の記録を更新 - iPhone Mania

 同じように半導体を使用するはずだが、アップルはその影響を軽微に抑えているということなのだろうか。

 

 

 アップルは以前よりチップに内製化を進めてきた。そのチップは、ハードの性能を向上させ、消費者に使いやすさという利便性を提供し、他方、今の半導体不足にも有利に働いているという。ただ内製と言えども、このチップも半導体の受託生産であるファウンドリー、TSMCで生産されている。

  そのTSMCは1987年に、半導体製造のみに特化する企業として操業を始め、今やファウンドリー業界での世界シェアの約半分を占めるまでに成長した。その顧客には、米Appleを筆頭に、台湾の半導体メーカMediaTek(メディアテック)、米AMD、米クアルコムQualcomm)、米エヌビディア(NVIDIA)といったそうそうたるグローバハイテク企業が名を連ねている。Appleだけで、TSMCの収益の4分の1以上を占めているそうだ。

Appleも依存する独走TSMC、台湾アナリストが語る地政学的リスク | 日経クロステック(xTECH)

 日経XTECHによれば、TSMCは、台湾のGDP 国内総生産の7.35%(21年時点)を占め、先端技術分野の人材や労働力に対しての強い需要を生んでいるという。

台湾に完成された半導体産業クラスターを築き上げています。半導体の原材料・設備・部品・システムベンダーといった現地の供給元を援助したり、人材を育成したりして積極的に発展につなげているのです。(出所:日経XTECH)

 日本で衰退したといわれる半導体産業が、ファウンドリーという形態をもっていて台湾の地で大きく成長した。

 

 

 九州はかつて「シリコンアイランド」と言われ、半導体産業が栄えていたという。その地にまたTSMCが工場を作り、地元でも期待を寄せているという。

シリコンアイランド復活へ 九州に投資1兆円超見通し今後数年で : ウィークリーけいざい : 企画・連載 : 九州発 : 地域 : 読売新聞オンライン

これを契機にして、単にファウンドリーを利用することにとどまるのではなく、積極的にバリューチェーンを見直して、日本の半導体産業、加えて他の産業の活性化につなげていくべきなのだろう。ハイテク関連の雇用が増えれば、やはり国内経済は活気づくはずだ。

 

脱ロシアで原子力は必要なのか、活用すべき再エネの成功事例

 

 岸田首相が英ロンドンのシティーで、エネルギーのロシア依存度を低減するためにと、再生可能エネルギーに加え、原子力の活用に言及したという。

 一方で、太陽光発電でつくった電気が余る事態が各地で頻発していると日本経済新聞が報じた。再生可能エネルギーを無駄にしないためにも送電網の整備が急務と指摘する。

 また、日本各地で小水力発電の設置が進むようになってきた。兵庫県宍粟市の黒土川にも小水力発電事業のための工事が進んでいるという。神戸新聞NEXTによれば、発電された電力は電力会社に売り、収益の一部は地域活性化や森林保全に活用するという。

小水力発電へ合同会社、地元住民10人が設立 黒土川、収益の一部は地域活性化に 事業資金募る|西播|神戸新聞NEXT

 黒土川では大正12年から約20年間、水力発電が利用され、家庭の電灯用として供給されていたという。今回は約50世帯の年間使用量ほどの電力が発電できるという。規模は小さいが、塵も積もれば山となる。こうした積み重ねで化石燃料への依存を減じて行ってもいいのではなかろうか。

 

 

愛媛県内子町バイオマス発電所の建設始まる

 愛媛県内子町は2007年にバイオマスタウン構想を掲げ、町内各所でバイオマスの利活用が進んでいるという。そうした中、地域内における新たなエネルギーと経済の循環を構築するため、バイオマス発電所の建設が始まったという。

愛媛県内子町において地域連携型の「内子龍王バイオマス発電所」の建設に着手|プレスリリース2022|情報一覧|竹中工務店

 この発電所では、内子町森林組合に出材された原木約3,600t/年の間伐未利用材から製造されるペレットを燃料に用いるという。発電した電力は固定価格買取制度(FIT制度)を利用して四国電力送配電へ全量売電し、発電時に発生する熱は隣接する内子町龍王公園内の施設へ供給し、エネルギー効率をアップさせるという。

(画像:竹中工務店

岡山県真庭市バイオマス発電は全市を賄う

 岡山県真庭市では「真庭バイオマス発電所」が2015年4月に運転を開始した。真庭市の8割を森林が占め、木材加工がさかんという。製材後に出る端材や、森林で大量に発生する間伐材の有効利用を目指してこの発電所が始まったという。木材の調達能力を地域ぐるみで整備したそうだ。

バイオマス発電を支える地域の木材と運転ノウハウ (岡山県・真庭市) | シリーズ No.2 | 自然エネルギー財団

 自然エネルギー財団によれば、この発電所では1年間に7920万kWh(キロワット時)の電力を供給できるという。一般的な家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると2万2000世帯分にのぼり、真庭市の総世帯数(約1万8000世帯)を上るそうだ。バイオマス発電だけで電力の自給率が100%を超える状態を実現したという。

 

 

 脱ロシアを材料に原発の有効活用に言及すれば、説得力があるのかもしれない。国際的な協調の意味合いでそう述べているのであれば、理解できないことではない。ただ、その言葉がひとり歩きすることはないだろうか。

 先駆的な良き再生可能エネルギー導入の成功事例は数多くあるようだ。手間がかかるかもしれないが、こうした事例を水平展開した方が、原発を再稼働させるために費やす時間より遥かに短いのかもしれない。

 現実を直視し、そこにある課題の解決を図りつつ、わかり易い説明がリーダーには求められるのではないだろうか。

 

「参考文書」

サステナビリティを体感できる、真庭市の「バイオマスツアー」とは | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

太陽光で広がる「電気余り」 東北電など出力抑制: 日本経済新聞

ロシア依存低減へ原子力活用、エネルギーに10年で150兆円投資=岸田首相 | ロイター

 

量子コンピュータに、次世代太陽電池、新しいハードウェアで世界を再びリードできるのか

 

 脱炭素社会に、循環型社会、そうしたものを標榜し続ければ、やがてそれに近づいていく。コンピュータはいずれに量子コンピュータにとって変わっていくのだろう。今ある社会インフラは徐々に新しいものへと刷新されていく。今、こうしたことが足元で起き始めている。

 その基幹テクノロジーは誰が開発し、誰が製造し、普及させていくのだろうか。何から何まで外国の技術に頼るようになったら、先進国の地位も危ういのかもしれない。世界に先駆けて移行しようにも、技術がなくて、外国技術の導入の順番待ちでも陥ったいったら、目も当てられない。

 今からでも遅くない、必要な要素技術の産業集積を進め、新たな産業構造を作らないとこの先立ち行かなくなってしまうのかもしれない。

 

 

量子コンピュータ

 量子コンピュータでは、まだ勝機があると、日経XTECHはいう。

日本勢にも勝機 独創ハード次々登場 | 日経クロステック(xTECH)

 量子コンピューターの開発競争はまだ決着していない、ハードウエアの方式も優劣が決したわけではないという。量子コンピューター開発競争はまだ混沌とし、日本で開発を進めているハードウエアにもチャンスがあるという。

 新しいテクノロジーはやがて実用化され、社会に役立つことになる。しかし、必要な要素がそろえられなければ、それを他国に頼らざるを得えなくなる。先進的で、より戦略的なものであれば、誰も手を貸してくれることはないのかもしれない。

次世代太陽電池

 小池都知事が、東京都調布市電気通信大学訪問し、開発中の新型太陽電池を視察したという。

小池知事が“コロナ”より心配なコト 超多忙でも、わざわざ視察した「太陽電池」の実力

「都会型の円筒型太陽電池。都会に設置しやすくて、東京から世界に発信したいような太陽電池

「円筒形にすることでどの角度から光が当たっても発電できる、つまり一日中発電できるので、一日の総発電量が平板型の1.5倍になります」と開発した早瀬特任教授は力説したという。その他に、平板型の2分の1から3分の1の重さ 、壁面に設置できるなどの利点があるとそうだ。

 FNNオンラインによれば、現在一般家庭4キロワット分で、100万円かかる太陽電池の設置費用(本体のみ)が、設置台も含めての5割から7割ですむという。軽くて蛍光灯のような形であるため、「量販店で購入・廃棄のリサイクルが可能で、家庭に設置して一部壊れても顧客が自分で交換修理ができる」ともいう。 

 発電シートは開発が進むペロブスカイト太陽電池の技術が応用されているようだ。

「原料は国産ですか」 実物を見た小池知事は、原料が輸入に頼らないですむか確認したという。 「重要な部分は国産です」 という返事を聞いて、小池知事は納得した表情でうなずいたそうだ。 (出所:FNNプライムオンライン)

 輸入燃料に頼らずに、自然エネルギーで発電できるのに、必要なデバイスを輸入に頼ることもあるまい。新たな技術を実用化しようとすれば、それに必要な要素技術とともに製造技術も開発が進む、産業構造が分厚くなり、それだけ必要なエンジニアは増え、雇用も増加していく。

 

 

ニンテンドースイッチも生産減

 任天堂の「ニンテンドースイッチ」の2022年度の販売台数が21年度比1割減の2000万台前後にとどまる見通しと日本経済新聞が報じている。

任天堂Switch販売1割減 22年度、人気持続でも部材不足: 日本経済新聞

 最盛期の20年度(2883万台)と比べると3割減るそうだ。需要は底堅いというが、半導体不足や物流網の混乱の影響で部材の調達が遅れており、十分に生産できないためという。

 国際分業、グローバルサプライチェーンは効率的で、製造コストの低減に役立たってきた。しかし今、ものの流れは途絶えがちだ。カントリーリスクが増しているといっていいのだろう。モノの流れが止まれば、効率化どころの話でなくなる。

 

 

 かつてセイコーは世界で初めてクォーツ時計を実用化し、キャノンはコピーでゼロックスの牙城が打ち崩した。こうしたことが日本の発展を支えていた。時代は移ろい、ハードウェア不要論となり、ソフトが台頭し、今ではデジタル化が叫ばれるようになった。新しいハードウェアが生まれないのであれば、それは当然の帰結のような気がする。ただ今このときに、その流れの延長のままでいいのだろうか。

 これからは社会基盤の再整備とともに価値観も変化していくのかもしれないし、変えていかなければならないのだろう。ハードウェア開発に力を注ぐようになれば、産業集積が進み、海外に流出した仕事が再び戻り、雇用機会も増える。そうだから言って、ソフトが不要ということではない。あらゆるものをより効率的にするのはデジタルの力は欠かせない。ハードとデジタル、両輪を揃えないと太刀打ちできなくなるということではなかうか。

 デジタルを語れば夢があるのかもしれないが、夢を語るばかりで、新しいことの実用化を怠れば、世界から取り残されるだけだ。

 

「参考文書」

中国、軍事転用可能品の輸出規制強化 恣意的運用恐れも: 日本経済新聞

半導体製造のもとは世界に分散 確保に向けた自国誘致活動に疑問 | 日経クロステック(xTECH)

【報告】小池都知事が本学を視察│電気通信大学

「都会型太陽電池」 小池都知事、開発の電通大を視察: 日本経済新聞

 

高騰する小麦には米粉を、石油元売りENEOSはエネルギー会社に、禍はチャンスの時

 

 コロナ渦が始まった当初は、マスクや消毒用のアルコールなど様々なモノが品薄となり、様々な業界が自分たちの強みを活かしては品不足解消に努めた。飲食業界でも、テイクアウトやフードデリバリー、フードトラックに力を入れたり、早々に居酒屋業種に見切りをつけ、から揚げ専門店に進出する企業もあった。危機が起これば、変化が起き、時として価値観にも変化が生じるのだろう。

 今もまたコロナ渦ならぬロシア禍で、その対応に迫れている業界が多いのではなかろうか。

 

 

見直される米の価値、米粉の活用進む

 小麦の輸入価格が高騰し、国産米粉に注目が集まるようになったという。まだ米粉価格は120~390円と、業務用小麦粉の価格110円より高いが、知恵と工夫で小麦粉代替としての活用もあるようだ。ただ、米粉には小麦粉に含まれるタンパク質のグルテンがなくパン加工が難しいといった特性があるという。逆に「グルテンフリー」をアピールして、ニーズを発掘してもいいのではなかろうか。現実に、米の強みを生かした提案が広がっていると日本農業新聞はいう。

小麦高騰で米粉出番 もちもち食感、健康志向…「代替以上」の価値提案 / 日本農業新聞

米粉の製粉量が国内最大級の波里(栃木県佐野市)によると、これまで小麦粉を使っていた企業が、米粉で商品開発を進める動きが出ている。ケーキなど薄力粉を使う食品は、しっとりした食感が出て米粉に優位性があるとみる。(出所:日本農業新聞

 この他にも、大手製パン企業は食パンに一部米粉を加えているという。別の企業の担当者は「米粉を2割ほど混ぜると小麦パンらしさを失わずに、程よいもっちり感が出せる」と説明するそうだ。米粉需要が増え、価格が低下していけば、さらにメリットが出てくるのかもしれない。



石油元売りの脱石油

 エネルギー業界においても同様なのであろう。脱炭素にウクライナ危機によるエネルギー価格の高騰が加わっている。早急に脱化石燃料を進めていかなければならないのだろう。

 石油元売り最大手のENEOSホールディングスが活発だ。石油元売りが脱石油という脱皮をしているかのようだ。石油にこだわらず、エネルギーに関係する企業と定義すれば、やらなければならないことは山ほどあるのだろう。

ENEOSHD会長 「このままで生きていけるのか」: 日本経済新聞

JSRから自動車タイヤ用の合成ゴムを含むエラストマー事業を、米ゴールドマン・サックスなどから再生可能エネルギー新興のジャパン・リニューアブル・エナジーJRE、東京・港)の買収を決めたほか、グリーン水素やアンモニアの製造・運搬にも着手。石油化学品の高付加価値化や次世代型エネルギーの供給も手掛けている。

天然資源に依存した事業構造は徐々に変わりつつある。(出所:日本経済新聞

 

 

 この他にも三菱商事と共同で、SAF再生航空燃料を生産する検討に入り、また、ホンダやヤマハ発動機など二輪大手4社と、電動バイクの交換式バッテリーを給油所などで交換できるサービスを2022年秋にも始めると発表した。

Honda | 「株式会社Gachaco」の設立について

 これまでの弱点といわれた航続距離の短さが、街中で電池を交換できれば、解消され、充電量が減っても安心して乗り続けられることができる。ホンダは共通規格の電池を農機や除雪機などにも活用するそうだ。

 禍、危機をばねにしていかねばならないのだろう。これをチャンスに変えることができれば、日本の底にあげになっていくのだろう。

 日本経済新聞によれば、ENEOSHD執行役員の矢崎靖典氏は「充電する仕組み自体をビジネスとして育てて海外でも展開したい」と話したそうだ。

 

「参考文書」

給油所で電動バイクの電池交換 ENEOSやホンダなど新会社: 日本経済新聞